失われないものを求めて
コンビニのお手洗いで用を足したとき、俺は気がついた。
俺に残されている時間は、どうやら少ないことを。
もってあと一年か…あるいは…。
確実に髪の毛が減っている。
いや減っているというものではない!
明確に、「無さ」が!
「無」が!
増えてきている!
「減ったねぇ」じゃなく…
「よりいっそう無くなったね」
という恐ろしいパラダイムシフトが起きてしまった。
もはや阻止限界点は過ぎているらしい。
いつか、そのうち、近いうちに、もうすぐ…覚悟はしていたはずだが、いざ目の前に事実が迫ってくると、人間というのは脆い。
たしかに、俺の父も、母方の祖父も"そう"だったのだから、俺が"そう"ならない理由がない。そういうこともあって、「まぁいずれは絶対に"そう"なるからな」と"それ"のケアをしていなかったというものあるけれど。
いつも傍にいるものを、ある日突然失って始めてわかる大切さ。
全く…
失うことに慣れているはずの俺だけども…
…
……
しかし運命(さだめ)ならそれは仕方がない。
仕方ないものは仕方ないから、仕方ないところ以外の部分で頑張らないといけない。
つまり帽子を!
早急に作らなければならないな!
そういうことにしておく!
可能な限り前向きな姿勢で!
しかし、帽子は実はまだ作れていない。
いや、最初に作ったポットカバーは確かに帽子になるんだけど。あれはさすがに、こう、な?
それでベレー帽を作ろうと実は3回くらい挑戦していたんだけど、いずれも…「何かこれは違うんじゃないか」「柔らかすぎて多分これはひどいことになる」「なにかノらない」という理由で断念していた。
やっぱり、情熱が続かないものというのは、無理に続けると情熱の源泉そのものが枯れてしまう。だから「なんかなー」と思ったときはさっぱりとそこでやめたほうがいいと思う。いや、さすがに仕事とかはそうはいかないけど。趣味や楽しみなら情熱を最重視するべきと思う。という言い訳を。
そういうわけで、ベレー帽は今は無理。今後再挑戦の機運が高まるまで、手を付けないほうがいい気がした。
では、この俺の…問題はどうするのか。
普通のニット帽子は俺、似合わないんだよね。多分。
それでどうするかなぁとごそごそとクローゼットを探してみると、唯一、似合う帽子が出てきた。
サファリハット。
これならいける!今年の夏の間は基本的に被ってたし。
…この帽子が原因な気がしなくもないが…そこには目をつぶる方向で行くとして!
広いツバがある帽子のほうが多分、いい!
ならばそれでいこう!
サファリハット的な、形のものを!
ツバを維持できるくらい硬い毛糸を、ツバを維持できるくらい硬いステッチで!
そうすれば、何かしらの光が見えてくるはずだぜ…!
しかしそんな太くて硬い毛糸はそうそう売っているものではない。
今までいくつか手芸屋さんを見て回ったが、大体はふわっふわの…極めてガーリィな…いやそれはそれで大好きだけど…俺の"それ"にはいかんともしがたいゆるふわ感が前面に押し出されている感じなので…より男っぽい、バリカタ、いやハリガネ級の毛糸を俺は求めた。殆どゆでてないんじゃないかみたいな。そういう毛糸を、ヤーンを、探し求めたわけだよ…!
とはいえ、実は心当たりはあった。
前回、ニットカフェにお邪魔した時にpresseさんのところで男っぽい毛糸を見せてもらったので、要するにあれを使えばいいのだ。ちょうど男っぽい羊の人がラベルに描かれていたし。あれこそはわが光。
これは、やるしかないようだな…。
それで意を決して、11/3という休日を利用して俺は行ってみたんだが…。
…閉まってた!
たしかに!
11月の3日から東京行くって言ってたもんな!
お店は休みだった!
この失態。
俺は何かがはらりと落ちる音を聞いた。
季節外れの桜が。最後の一葉が。
これは危険!
次の機会まで待つという選択肢は、今の俺には、あんまりない!
そういうわけで、悩んだ末に…
以前母に教えてもらった「マリヤ手芸店」に行ってみることにした。時計台の向かいにある、大変素晴らしい手芸店だそうだ。俺の好みを熟知する母がそういうのだから、おそらく大丈夫なはずだ。
それで円山から歩くこと40分、「日本三大がっかり観光地」の一角をなす札幌時計台にやってきた。残りの二つは知らないけれども。
しかしどうなんだろう。時計台に何を求めているのだろうか。
大体のがっかり感は「意外と小さい」ということらしいんだけど、巨大であればそれでいいというわけじゃないだろう。
そもそも時計台はもともとは演武場であり集会場である要するに現代で言えば体育館だ。体育館として見れば、あれほどモダンな体育館もないだろう。時計と鐘がついているので集会場としての機能も万全。
そして特筆すべきは、あの時計台こそが(ほぼ)日本初のツーバイフォー建築だということだ。初じゃないかもしれないけど、最初期のツーバイフォー建築として今に残る貴重すぎる建物。つまり、太い柱を立ててそこから梁を渡していく建築でなく、全体を均一に木材で覆うことによって強度を出している。赤毛のアンの家もツーバイフォー建築だ。
そんなアメリカ中西部の趣を感じさせつつ、百葉箱のような真白い壁がかもしだす異国情緒。北国の清涼感。これはまさに北海道のイメージそのものだし、柱がないツーバイフォー建築でも、北海道の冬を十分に越すことができるという圧倒的な説得力を体現している。しかも北海道は他都府県に比べてツーバイフォー建築の割合が多い。それは時計台あってこそなのかもしれない。
このロマンよ。これは声を大にしていいたいし、おそらく「三大がっかり」の残り二つにも何か圧倒的な魅力があるに違いないのだ。
いいかい、今度から時計台を見るときは、心に赤毛のアンを住まわせてから見るんだぞ!
…
……時計台への情熱は理解していただいたとして!
その向かいにあるマリヤ手芸店である。
結論から言うと。
店頭においてあった毛糸に一目ぼれした!
俺が求めていたのは…このバリバリ感…!
チクチクする毛糸は苦手だったけど、それを超えるバリガリ感ならオーケーだ!
というか多分、自分で縫ったやつなら何でも大丈夫なんだろうな。
…愛する人からもらったものならなおさらだろう。多分な!
でもこれ、このバリバリの…ガリガリの毛糸は、何か名前がついているのだろうか?
今一つ分からない。毛糸歴2か月の俺に太刀打ちできる物ではないのだろうか。
しかし好みは好み。臆することはないはずだ。
せっかくだから俺はこの黒い毛糸を選ぶぜ!
そうして毛糸を持ち帰ったわけだけれども、いかんせん、「カセ」の状態の毛糸を扱うのは初めてだ。調べたところによると、「カセ」状態の毛糸は、まず玉の状態に巻き直してから使うのが一般的らしい。
玉にまくためには、カセ繰り機と玉巻機を使い、美しく仕上げて行く。
俺たちが普段見ている毛糸の玉は、そうやって作られているのだ。
なるほど。
しかしもうすでに俺は家に戻ってしまった。どうしよう?
カセ繰り機と、玉巻き機か…。
やはり今後のことも考えれば、必要になるものなのかな?
と、若干テンションが落ちかけた俺に、脳内でマリーがささやく。
「どうせ千切って使うんだから、適当にかけておけばそれでいいじゃない」
なるほどそうか!
俺がやるのはノールビンドニング。つまりはそういうことだ。あんま美しくなくても大丈夫。それに何度も千切ってつかうから、絡む心配はそもそもあんまりしなくていいのか。
マリーにあるまじき蛮族提案だったが、ありがたく思いつつとりあえず適当に吊るしておいて、必要な分だけちぎって使うことでこの問題は解決した!
俺はすっかり基本を見失っていたよ…!
これは北欧ヴァイキングの編み物…!
蛮族対応はいよろこんで!
いや、決してヴァイキングは蛮族ではないが!心持として!
そして今回、目数を数えるための目数リングを初めて導入したことによって(ハリガネ曲げただけの蛮族対応)、ヴァイキング的おおらかさの中にひとすじのマリー感がプラスされ、なんとなくシナジーが生まれてきたような気もしている。
これからツバの部分にとりかかるところ。
今週末には完成を見たいと思う!
果たして出来上がった帽子が、うまくできているか、そもそも似合うのかという問題は残されているものの…!
ノールビンドニング - クロトーのようにつないで -
ノールビンドニング、この素晴らしい技法を学んでいくうえで、俺には一つの懸念があった。
それは、「何度も何度も毛糸をちぎってつなぐ作業をする必要がある」ということ。
ノールビンドニングは縫い物に近い編み物なので、通常のニッティングのように毛糸が続く限り無限に編めるというものではない。かっこよく言えば、己の手で有限を選択せねばならない。
毛糸を短く切れば縫いやすいけど、すぐになくなってしまう。
かといって毛糸を長く長く切ると、途中で絡まるという大変なストレスを抱えることになる。
このディレンマ。
もっとも、これがあるからこそ一区切りがつきやすいということもあるけれど。
「このくらいの長さの毛糸なら5分だな…」みたいに感覚でわかってくるので、カップラーメンのタイマーとしても使うことが可能だし。煮込み料理のタイマーとしても使えるかもしれないな…!
しかし、やはり毛糸問題は付きまとう。
それを解決すべく毛糸ちぎり機を作ってみたのだけど、彼は儚くも散ってしまった。
毛糸ちぎり機の悲劇は悲劇として受け止めるとして、問題はまだ、もう一つ存在する。
毛糸をつなぐとき、手が結構、痛いんだよね…!
北村先生の教えの一つ「毛糸をつなぐときは火が出るくらいに」を忠実に守り続けた結果、実は俺は、「手をこすり合わせるとき、右手の薬指が前に出る癖」があることが分かった!
つまり、両手をすりすりとこすりあわせるときに、右手の薬指が左手に強く当たる。
というか、よくよく見ると、俺は右薬指第二関節が、外側に大きく曲がるらしい。だから指を伸ばしきった時に第二関節が前に出て、それでその部分だけ痛くなるようだ。
自分の体の理解が深まったのは喜ばしいが!
いかんせん痛い!
どうでもいいんだけど、親指の第一関節が外側に大きく曲がる人と間がらない人がいて、これは遺伝の影響なので、両親のうちどちらかは同じ曲がり方をするので確かめてみるといい!俺と父は曲がるタイプで、母と兄は曲がないタイプ。
で、これがあるばっかりに、「薬指が痛くなってきたら本日のノールビンドニング終了の合図」となっていた。
大体5時間くらいが限界。
これは、だめだ。
このままではなんとなく、ダメな気がする!
そこで、この問題を解決するために…考える葦である俺は…やはり作ることにした!
毛糸つなぎ機を!
ギリシャ神話の運命の女神、クロトー、ラケシス、アトロポスのモイライ三姉妹が糸をつむぎ、編み、ちぎるように、俺も編むことを覚えたならば、つないだりちぎったりすることにも同様の情熱を注がねばならないと思う。いやまぁ、つむぐのとつなぐのではだいぶ違うとは思うけど。そこはほら、ロマン優先で。
それで、ノールビンドニングでは毛糸は一般的(なのか?)に、手のひらでこすり合わせ、摩擦によって毛糸の温度をあげてフェルト化し、しっかりと絡みつかせる。
この理屈を、道具によって再現すればいいわけだ。
なので必要なのは、毛糸をホールドしつつ適度な摩擦を与えられる何か、だ。
人間の手のひらは非常に良くできていて、細かなシワや指紋と汗が絶妙な摩擦を生みだし、あらゆるものをつかむことができるセンサー付きの最強のマニュピレーターだ。この圧倒的性能に迫るには、並大抵の素材ではうまくいかない。
粗い紙、コルク、布、いろいろ検討してみたけれど、なかなかいい素材がない。
何か…何かないか…?
仕事そっちのけで悩んでいたとき、ふと気づいた。
「皮の代わりがないなら皮を使えばいいじゃない」
それだ!
さすがに皮というわけにはいかないから、革を使おう!
革、革はどこかにないか。手ごろな革…本革を…。
手芸店に買いに走るか…?
いや待て!
革はここにある!
まさに今、俺が仕事に常用している、革手袋!
男の店・ワークマンで数百円で売っている、圧倒的コストパフォーマンスを誇る革。これを使えば、いけるんじゃないか?
こんな風に!
そういうわけで、革手袋の手首のあたりを切って、適当な木片にタッカーで留めて、その革つき木片ふたつで毛糸をはさみ、火が出るくらいにこする!
すると!
…もうすでに画像で結果は見えているけど!
できた!
毛糸が、つながったわけだよ!
毛糸ちぎり機の悲劇再びは、なかった…!
でもちょっと、やっぱり手でやるより緩い。
あと、革のくずがちょっとはいる。
さらに、革の匂いが結構移る。
…まぁそのあたりは!
目をつぶる方向で!
それにこれ、試作に使ったのは安い毛糸だから、それである程度つながるということは、きちんとした毛糸ならより繋がってくれると思われるので。
試作の成功を受けて、試作第二号を真剣に作ってみる。
木片を手に取りやすい大きさにカットして。
革は…とりあえず画鋲対応で!
…DIYだからこのくらいの感じで許してほしい!
使っている木材はチーク。チークはヨットのボディにも使われるように、水に対してとっても強い。毛糸つなぎには霧吹きが必要になるから、木材にかかっても平気なように。
革は定期的に取り換えないといけないと思うけどね。
そして、試作第二弾の完成!
ちゃんとつなげた!
…ちょっと緩いけど…!
そこは、慎重に縫うとかして何とか、やっていこうと、思う。
うーん。
まぁ、ずっとこれを使うんじゃなくて、手がちょっと痛くなってきたらこれにバトンタッチする、みたいな運用でいいかなぁと、ね!
すっごい雑な作りだけど(いつものことながら)、やはり完成してみると愛着は出てくるね!
これで、限界を突破して縫い続けることが可能になりそうだぜ…!
ニットカフェに参加してきたこと 毛糸ちぎり機との別れ
先週、ぎっくり腰に倒れた俺は、ベッドから抜け出すまで実に10分間を要して立ちあがり、リハビリを受けるべく地元で評判の整形外科へ向かった。
(どうでもいいけど、タクシーの運転手さんはラーメン屋に詳しいというまことしやかな噂があるけど、実は腰痛の病院にも詳しい。なぜなら、腰痛に倒れた人はタクシーを呼ぶから。もちろん全員が詳しいわけじゃないだろうけど)
評判のいい病院というのはそれに比例して待ち時間もものすごいことになる。腰痛にむしばまれた俺は自宅を出るところから出遅れるわけで、
「yajulさん、申し訳ありませんが1時間半待ちです…」
という宣告を受け、(予約は意味をなさないのか!?)と心の中で疑問に思いつつも着席する。まぁ、腰が痛いのはみんな同じだ。少しばかり治りかけている俺はそこは我慢すべきな気もする。
そして何より…俺は今、時間をつぶす手段を手にしている!
この余裕。これが病院の待合室という過酷な状況に光を与えてくれる。
もうすでにこのブログが染まり切っているように、つまりノールビンドニングを始めたわけだよ。待合室で。
紙袋の中に毛糸を入れて膝の上に載せれば、割と狭いスペースでも作れる。糸をあまり長くすると周りに迷惑になってしまうけれども。あと、糸をつなぐときちょっともぞもぞしてしまうけれども。
以前ならばスマホを見るか本を読むかゲームを持ち込むかトランプの順番を覚えるかといったところだったけど、今は40gの毛糸と20gくらいの針さえあればそれで3時間をつぶすことができるので、長距離移動の際にはとても便利なはず。
自分が1時間でどのくらい編めるかを把握しておくといいかもしれない。俺は1時間程度ではまだ全然編めないけどね!
それで、病院の待ち時間と、家に帰ってからちょっとやって、約3時間でこれが完成した!
ペットボトルカバー!
ダーラナステッチを二本どりすると美しい縫い目が現れると知り、また思い切ってカラフルにしてみるとよいのではと思ってこの配色に。(ダラーナじゃなくてダーラナだった!)
まず底の部分を2色つなぎの円形で初めてペットボトルの底の大きさになったらそこから増し目も減らし目もせずにひたすら縫っていく。これだけで筒状になっていくので、ひたすらに縫う。
首の部分は減らし目をしてからピボットで折り返して、ボタンか紐を通せるように(ちょうど針が通ってるところ)した。あとはボタンを自作するか、何かナイスなものを見つけてくるかすれば、本当の完成を見るはず。
…何か、想像以上にかわいいものができてしまって困惑している!
そして、今までそんなに毛糸の色彩に拘ってなかったけど、やはりきちんと色彩は抑えておくべきだなぁと深く実感した。
一応、カラーコーディネーター2級は持ってるんだけど…知識があることと、その知識から適切に引っ張ってこれることはまた別の能力だしね。それに、すでにカラーコーディネーター試験の知識は失われているし。
この辺りの、色彩についての話はまたそのうち書こうと思う。
それでこの日は日曜日、つまり10/29で、この日はpresseさんで編み物カフェが開催されている。俺がノールビンドニングをやることに自信をもてるようになったところ。
ワークショップの時に今回の編み物カフェ(ニットカフェ)に誘われていたので、ペットボトルカバーやほかの作品を鞄に詰めて、家を出たのが12時。
ニットカフェは13時からだから、書店によってお昼を食べてそぞろに行けばなかなかいい時間につくんじゃないかという計算で札幌駅へ。
ちょうどイカ甲子園もやっていたらかちょっと覗いてみたりね…!
本を買い、赤レンガテラスで昼食をとる。
(お一人様感が俺を襲う!)
買った本をめくりながら配膳を待っていると、ふと、あることに気づいた。
…
……
あれ、俺、毛糸ちぎり機持ってきてない!
忘れてる!
前の日の夜に、机から毛糸ちぎり機を落としてしまったときも、
「あぁこれ、明日持っていかないとね」
と思いもしてなかった!
なんという!
そこまで軽い存在になっていたというのか…!
今日の主役なのに!
むしろ俺なんかじゃなくて、彼をみんな待ってるんじゃないのか!?
ちょっといま、少女マンガの意地悪な先輩の気持ちわかったかも…。
いやそれはいい!
時間は、13時10分。
まだ配膳はされてない。
光の速さで食べても多分13時45分くらいになりそう。
そこから駅に戻って14時?
それでは無理だ!
俺は決断し、レジへ向かう。急ぎの用事が入ってしまったので食事をとることができぬのだ…!すまぬ…すまぬ…!
現状を説明し、駅へ急ぐ。心もち光の速さで。
15時くらいに伺います!
— yajul (@yajul) 2017年10月29日
いかにも「ちょっと用事があるから仕方ないね」感を醸し出そうと努力しつつ。
そして、家に帰り、ひっそりと毛糸まみれになっていた毛糸ちぎり機を手に取り、また光の速さの心づもりでpresseさんに向かう。
で、着いたのが、14時45分くらい!
疲れた!
というか、腰が!
リハビリしていなければ即死だった…。
そしてそこで、皆さんに(主に毛糸ちぎり機が)暖かく迎えられ、なんとか、なりました。
相当脱力したので、ニットカフェの写真は撮ってないんだけれども!
そこで再び北村先生にお会いし(↓こちらの本の著者のお一人ですよ)、
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
溜まっていた疑問や質問に答えていただき、また皆さんの素晴らしい作品を拝見し、腰がいてぇとかあんまり思わずに楽しむことができました。コプティックステッチ難しい。
そして何よりも大きな収穫は!
収穫じゃないけど!
毛糸ちぎり機を、北村先生のもとへ送り出すことができた…!
何せ、俺のもとにあってはただ毛糸にまみれその辺に転がっているだけなので、ここはぜひ北村先生のところで、こう、なんというか、ネタにされつつ、記憶に残る人生(?)を送ってほしいからね…!
あらゆる存在は、いつか創造主の手を離れて行かないといけないのだろう。
図らずも俺の手を離れることで、毛糸ちぎり機は忘れえぬ存在になったようにも思う。
…何か、非常に感慨深いね!
彼の、毛糸ちぎり機の今後に幸あらんことを!
俺は、祈っているよ…!
(ニットカフェで北村先生に教わったことは、また今度まとめたいと思う。やー、可能性が広がったよ!)
自分の世界が一気に広がる時の、怖ろしさ
こちらの匿名ブログを読んだ。
内容は…すごく普通だ!いや、決して悪い意味ではなく。
これを読んだとき、いくつもの感想が頭に浮かんだ。
- 金と権力と経験を持ったオッサンが初心者狩りを始めたようだな…!
- 不倫の毒牙にかからぬように気をつけるんだぞ…!
- 男女逆にすると、「仕事ばかりで家庭を顧みない夫」の図式に近い物があるのかなぁ。
- いずれにしても、こういう形で関係性が終わることは普遍的だよね。
- 彼氏はこれを乗り越えていい男になって欲しい。
というようなものだったんだけど。
いやまぁ、これ自体は悲劇でこそあれ、責められたり過剰に卑下することではなく、ただ「フフ…これが若さか…!」と感慨深げなポーズを取ることしか出来ないわけだけど、ちょうどタイミング的に、考える物があったわけだよ。
この話の構造って、
「新しい世界に踏み入れ、そこで認められ承認され受け入れられ始めたとき、自分の寄る辺が不安定となり、思い悩む。あるいは、何か決定的なミスをする」
ということだよね。
幸い、彼女はまだ決定的なミスは犯していないからまだまだ大丈夫だけど。
それでも、何かこの後に大きな落とし穴が待っているかもしれない。
そういう状況。
……
……あ、これ俺のことだわ!
と気づいたわけだよ!
何を偉そうに「フフ…若いな…」とか言ってるんだ俺!
だめじゃねーか!
「今まで全くやったことがないことを始めよう」としていて、「実際にやってみて」、「結構上手くいって」、「新しいつながりも出来て」、「そこそこ承認されてきて」
という!
状況!
まさに!
俺!
笑っていられるものではないな!
しかも俺の場合、彼女と違って一つすでにミスを犯している。
ノールビンドニングは何しろまだ国内ではマイナーな編み物なので、自然、情報は北欧などの海外から取り入れるわけなんだけど…。
SNS全盛の現在、そういった情報はホームページという形ではなく、SNSページに書かれていることが多い。素晴らしい作品は、例えばfacebookでしか公開されていなかったりする。
そういうわけで、Pinterestで情報を集めていたんだけど、このあいだ海外の方から「あなたがシェアしたその画像に、作者の名前やサイトの場所など正確なキャプションを入れないとだめだよ」と指摘された。
Pinterestの仕様上、元の作者さんへのリンクも自動で付くからと、特に何も考えずにその画像についての説明を書かなかったのだ。大いなるミスである。Pinterestが軽い気持ちでどんどんシェアしても大丈夫という姿勢だからと言って、何も考えずリスペクトを欠かしてはならなかった。作品には作者さんがいるのだから。
これはいかんなと思い、指摘してくれた人には配慮の足りなさを伝えてとりあえずボードを全部引っ込めた。おそらく他にもやらかしているに違いないから。
自分が新しいことを始めて、いくらか認められ始めたときに陥る落とし穴。
人生で何度も何度も経験しているはずなのに、状況に惑わされて本質を学べていなかったということだった。
ただでさえ、俺の欠点は「浮き足立ちやすい」ということだというのに!
危ないところだった。いや割とアウトだったが。
正直ちょっと今でも動揺している。
これからこのブログやなんかで情報を発信して行くにしても、よりいっそう気をつけて、驕らぬようにしていきたいと思う。
それでもやらかすのが俺という男なのだから!
これは、怖いな!
自分の世界が広がり、今までと全く異なった光景を見たからといって、自分が大きくなったわけでは、ないのだ…!
ノールビンドニングでスリッポンを作る
アイディアというのは、
- 脳の中で十分に情報が整理されていて
- そのことについて特に何も考えていなくて
- ちょっとした散歩などの軽い運動をしているときに
- 全然別のものを考えたり見たときに突如降りてくる
ものだと思っている!
実際、人間の脳というのは何かを頑張ってインプットしたり考えたりしてる時にはひらめきは生まれづらく、インプットした情報を脳に根付かせてから、全然別のつながりを発見した時に圧倒的なパワーを発揮するものらしい。アルキメデス先生もそんな感じだった。
すごくどうでもいいんだけど、この「ハッとした閃き」の最上位バージョンが仏教でいうところの「悟り」で、有名な般若心経はその「究極のアハ体験」に至る最後のひと押しをするための経典だったりする。だから、いわば究極まで情報をインプットした人向けの、超上級者用テキストなので、素人たる俺たちがいきなり「般若心経を写経しましょう」とかやっても正しい結論には到達しないので、注意が必要だ!第一、どんな分野もそうだけど、「短いテキストの中に真理が」系の上級者向けテキストというのは、前提知識が膨大にあるからこそ短いわけで、素人が安易に短いテキストを求めてはいけないのだろう。老荘思想も老子より荘子読んでからのほうがいいし。物理や数学でも、美しく簡潔な公式は決して簡単じゃない。
般若心経は限りなく無に近づき、あと一歩で悟れる…!という人向けに、「ソワカ!(グッドラック!)」とイイ笑顔で修行者の背中を叩いて崖の先に一歩足を踏み入れさせる(インディジョーンズのアレみたいな)という経典。
で、座禅を組んでる修行の最中にいきなり棒でブッ叩かれるアレも、「雑念があるから」叩かれるんじゃなくて、瞑想が深まってもう少しで無の境地に至りそうなとき、突如として背中を叩かれることにより脳がスパークし、生まれたての赤ん坊のごとき真っ白な状態にさせる、というのが目的(それが般若心経で言う「ソワカ!」みたいなもの)だから、あれも上級者向けだ。真に瞑想ができている修行者になら、ドタドタと足音を立てて近づいても別にいいはず。「やべぇ、後ろに来た!」とか思ってる時点でそれはまだ未熟なんである。多分、重い病気やけがによって人生観が一変した、みたいなのもそうだと思う。目からウロコのようなものが剥がれ落ちたとか(新約聖書使徒行伝9章18節)。あれはちょっと違うか。
と、隙あらば面倒な話を仕掛けて行くスタイルでノールビンドニングをやっていくわけなんだけど。
昨日、ちょっとした買い物にホームセンターへいったところ…多いなるひらめきを得たぞ!というだけの話にここまで長々と前書きをしてしまったが!
これ!
冬用のフェルトのインソール。あったかい。89円。やすい。
これを見て、「このインソールの周りをぐるぐる縫っていったら、普通にスリッポンになっていくんじゃないのか…!?」と思ったわけだよ!
20分ほどインソール売り場でいろいろとシミュレートしてみた結果、いけそうだと考え、89円でスリッポンの元を手に入れてきた!
俺の足は28.5cmで、このインソールは28cmまで対応だからちょっと小さいけど。どうせ室内履きだし、毛糸で周りを縫うわけだから多少の大きさの差異はなんとでもなろうということで。
そしてこれを…
目打ち針で穴を開けて行く。大体目分量で。俺のステッチの幅はだいたいこんなもんだったはずという。
レザークラフトと基本的には同じだよね、この辺は。
多少間隔が開いてしまっても針を打ちなおせばいいし、あるいは増し目減らし目で調整すればいいからあんまり神経質にならなくてもOK。
でもこれ、二つまとめて穴開ければよかったなぁ。結構時間かかったよ。地味な作業だし。
開け終わったら、とじ針を使ってこのように縫っていく。
多分一段目が一番大変!
この段階で、インソールから足がはみでそうな部分や余る部分は増し目減らし目をしていくと、最終的な見た目がよくなると思う。土踏まずは減らし目、小指側は増し目、みたいにね。まぁ毛糸だし、スリッポンだからすぐに自分の足の形になるんだけど。
ひたすら縫ったよ。
今回は初心に戻ってブロディエンステッチ。
二段目は特に何も考えずにそのまま縫う。増し目減らし目無し。
だいたい、二段目のあたりで足の指の高さになるから、3段目から減らし目をしていくと、靴らしくなってくるよ。
そして、4段編んだあたりでこんな感じに!
…スリッポンというか、カンフーシューズっぽい!
これは…最近サボりがちな太極拳の練習を思い起こさせる何かが…!
このままでも十分に足にフィットするし、履きやすいからこれで完成!といきたいところだったけど、やはり、もう少し何とかしたいと。このままでは地味すぎるぞと。
そういうことで、写真は撮ってなかったんだけど、上靴のような足の甲を抑える、ええと、なんていうんだ、渡し?みたいなものと、ベロを別に作って、毛糸でとじ合わせた。
そして、最終的な完成を見たというわけさ!
…何か、とても可愛いが!
まさか俺がこのような可愛いモノをつくるとは…!
しかし、可愛くてもこれは28cmあるからね!大きいぞ!写真に騙されてはいけない…!
本当は何かしらボタンがあるとよかったんだけどね。
でもとりあえず、右足分は完成!
しばらく履いてみると予想以上に暖かいというか、まだこの時期では暑いほどだったので、冬本番まで今後作る左足とともに出番待ちかな。
片足分で,35mの毛糸を一個半(ベロ分も含む)使ったから、ざっくり55mあれば足りる感じかな?
28cmだからこんなことになったわけで、通常の場合は1玉でギリギリ行けるかもしれない。
ちなみに、「インソール使うってアイディアはそうそうないんじゃないか…?」と思った直後に「いやそれはないわ。絶対試してる人いるわ。間違いなく」と、先達の存在を確信しつついろいろ検索したら、ばっちりみんな作ってました。
「insole crochet」で画像検索したら、みんな作ってるな!中には外用のサンダルを加工している強者も。麻糸や亜麻糸で作れば、夏用にもなるかもしれないね。
ノールビンドンング - 驕りと慢心 ダラーナステッチを習得できていなかったこと -
ベレー帽をダラーナステッチで作っていて、どうも、ずっとしっくりこない何かを感じていた。
何か、違う気がする。
これで本当にいいのか?
自分はできているのか?
確かに、サムループとワーキングループは正しい。針の動きも正しい。
しかし、いつものお姉さんのサイトのダラーナステッチの例を見ると、何かが決定的に違う。
http://www.en.neulakintaat.fi/75
こちらがお姉さんのダラーナステッチ。
対する俺のはこれ。
…違うだろう!?
何かが!
ずっと「多分俺が未熟だからだろう」とか「俺の指が太いからこうなるのでは?」と自分を納得させてきたのだが、ついに違和感が頂点に達した!
これ、多分、違う!間違ってる!
ノールビンドニングは「多少違ってても全然OKだよ。そのままやっちゃいなよ」というヴァイキング的な懐の深さをもつ技術なだけに、俺はすっかり、間違った覚え方をしていたらしい。
しかし、何が違うのだろう?
針の動きは間違ってないし、サムループもワーキングループもそうそう間違うものではない。
でも、お姉さんのはカチっとしてかっこいい。俺が憧れたダラーナステッチそのものだ。
俺のはなんだか眠たい感じがする。
しばらく悩んでいると、お姉さんのステッチ画像の右下に、「F1」と書いてあるのが見えた。
ずっとスルーしてたけど、もしかして、これに何かしらの意味があるのでは?
お姉さんのところのステッチ一覧のページでも、F1とかF2、M2とかB2というものが見える。
これはどういう意味なんだろう?
俺はお姉さんの(大変ありがたい)サイトを、自分に都合の良い部分だけしか読んでなかったことを恥じて、じっくり読むことにした。
…読めない部分もあるけど!来たれ英語力!
そうすると…さすがはお姉さん、もはや女神!ちゃんと、丁寧に、画像付きで、教えてくれていたのでした。
「二段目を編む」というページに、ちゃんと…
- F1は表からコードループをひとつ拾う。
- F2は表から二つ拾う。一度使ったコードループと、新しいの。
- Bは裏側からコードループを。1と2はF1,2と同じ意味。
- Mはコードループとコードステッチの間のループ、つまり真ん中の。
…本当に申し訳ない…!
俺はずっと、ブロディエンステッチと同じ、「F2」でコードループを拾っていた。
オースレーステッチのときもそう。だから縫い目がなんだか微妙な感じになっていたのだ。
というかそもそも、Dalarna Stitchはダラーナステッチで読みは合っているのか!?もうすべてが疑わしくなってきたぞ!
何か、俺自身への信頼が崩れてきている感がある!
これますいと、あわてて正しいステッチのやり方で縫ってみると…。
まるで別物!
や、ちょっと雑なのはアレだけども!
以前の眠たいステッチじゃなく、はっきりと、糸が二本ずつ寄り添うような編み目ができている。これこそは俺の求めていたダラーナステッチ!(で読みはあっているのか!?)
満足感と脱力感にへなへなになりながらテキストを見返すと、こちらにもきちんとそのことが書いてあった。さすがだぜ!というか読み飛ばすなよ俺。
マメン・コルゲンステッチのところに、「コードループを2目拾うとマメン、1目だとコルゲンになります」って、先生方がちゃんと書いてくれている。
俺は…「もうわかったからへーきへーき」と、基本をおざなりにしていたわけだな…!
なんという慢心。
今まで「縫い目がぱっとしないのは、俺が未熟だからかなー」とか思ってたんだけど、どうやら未熟の方向性が違った!割と根本的なところが未熟だった!技術とかそういうものでなく!
…やー、これは、ショックだよ…。
結構慣れてきて、新しいこともさくさく覚えられるし、と、これは調子に乗っていたということだな…!?
考えてみれば、たかが1か月の男が調子に乗れるわけもなかった!
本当に、反省をしているよ!
初心に還るというか、今まさに初心であることを忘れて驕っていたな!
これは相当な、学びとなりましたよ…!
これは毛糸ちぎり機と同じだ。
最初のうちは、「もっとこうすればいいはずだ」だとか、「もっと便利な方法がないか?」とか「俺が新たなやり方を発見してやるぜ…!」みたいなことを思ったりする。で、実際にやってみるんだけど、それは結局先人たちがすでに試して、採用していなかったもので。まぁ毛糸ちぎり機は試したかはわからないけど、現状がこうなっている理由をまず知らないと、逸脱も改善もできないのだ。守破離だな!
今回の俺はそこに慢心が加わったので、なかなか性質が悪いといえる。
これはやられたね。俺自身に!
これはまた改めて、テキストや先生やお姉さんのところに学びに行かねばならないな!
脱力しつつも、ちょっとテンションが上がってきている。
お姉さんのサイトを全部最初から読んでいかないと…!
ちょっと衝撃的な出来事だった!
ノールビンドニングの作り目のための練習
ノールビンドニングで一番難しいのは、編み始め縫い始めの「作り目」。
この最初のステップがとにかくわかりにくいのが大きなハードルになっている。
俺もそうだったし、先生たちもそうだったらしいし、今まさに躓いている人がいるし、きっとこれは全世界的にそうなのだと思う。
でも、この作り目さえ乗り越えればもう脱初心者。
とにかくこのハードルを何とかして越えていこう。
そこで、作り目を作る方法を解説する…その前に!
「ノールビンドニングの理屈」を説明してみようと思う。
きっと、この理屈がわかれば作り目も、縫い方も、よくわかってくると思うから。
もし作り目で苦労していたり、ノールビンドニングは何がどうなっているのかよくわからないという人が居たら、針と糸を用意して一緒にやってみて欲しい。
これをやっておくと作り目がスムーズに理解できると思うので、ちょっとした遊びと思ってやってみてね。
ノールビンドニング用の針がない人は、大きめのとじ針で代用可能。100均の手芸コーナーにも売っているよ。
1.針に糸を通し、親指を通すループを作る
すべてはここから。
まず、毛糸を大体腕の長さくらいに切って(今回は理屈の説明だから無理にちぎらなくても大丈夫)、針に糸を通してみよう。
次に、針と逆の方の毛糸の端を、写真のように緩く結ぶ。
結ぶ時、どっちの糸を上にするかは気にしなくて大丈夫。とにかく、くるっと結んでみる。
写真に妙なフィルターがかかっているのは、俺の指が非常に見苦しいから。
鹿の角を加工するときにドリルで怪我をしてしまってね…!
なのでそのあたりはご容赦を。手袋すればよかった。
2.結んだ毛糸を、親指にはめる
(見苦しい指で失礼…)
さっき作った輪の中に、左手の親指を入れる。
結び目は親指の腹に、糸の先端を向こう側に、針に続く糸を手前側に。
ノールビンドニングの基本形がこれで出来たと言っても過言じゃない。
- 右手に針を持つ
- 左親指にループをはめる
- 左親指から針にかけて手前側に糸が通っている
- 左親指の腹に結び目が出来ている
ノールビンドニングは、常にこの状態を維持して縫っていく。
何か、できそうな気がしてこないかな?
3.何も考えずに、針を輪の中に入れる
右手に針を持って、左手の親指の腹にある結び目の下に糸を通す。
とりあえず今回は、何もせずにただ糸を通すだけ。
人差し指(見苦しい人差し指で失礼…)で結び目を抑えて、ゆっくりと糸を引き抜こう。
左親指の付け根の方向に糸を抜いていくといいよ。ゆっくりと、糸が絡まないように。
4.親指に二本のループを巻き付ける
そのまま糸を引き抜いていくと、親指に
- 最初から巻き付いていたループ
- 糸を通したことで新たにできたループ
の二つのループが生まれたはず。
ここがノールビンドニングで重要なんだけど、針を通し糸を引き抜くと、親指に新しいループができる。
これがとっても大事。
ノールビンドニングというのは、このように常に親指にループを作り続けて行く縫い物(編み物)。
そして大雑把に言えば、「たとえ何がどうなろうと、親指にあたらしいループが生まれていれば、それで成功している」ということ。縫い目がぐちゃぐちゃになったって、別にいい(極論すると)。
だから、今後もしも「なんだかよくわからなくなっちゃった」という事態に陥ったとしても、親指にループが生まれている限り、大丈夫。そのうちちゃんと元に戻る。その部分の縫い目がちょっとおかしくなるだけ。おかしな部分は裏にするとか、見えない部分にしちゃうとか、上に何かアクセントつけてごまかすとか、いくらでもやりようがある。だから失敗じゃない。
親指のループが大事。
5.このままだと親指にまきついていくだけなので
そのまま親指のループ(サムループ)を作り続けて行くと、左親指が肥大してゆくばかりで縫い物にはならない。
だから、今二本まきついている左親指のループのうち、古いほう(一番最初に結んだやつ)を、すっと外してあげる。
外す作業は右手を使って。
左手は結び目を抑えたまま。
上の写真のようになるはず。
ノールビンドニングは、「親指にできて行くループを、一回ごとに外して、新しいループを作っていく」作業。これはすごく重要。
どっちが古いループかわからなかったら、針についてる毛糸をちょっと引っ張るといい。きつく締まる感じがする方が、新しいループ。
どれが外すべきループなのか、残すべきループなのか迷ったら、とりあえず親指にはめて毛糸を引っ張ってみる。これは多分、今後ずっとやるしぐさになるはず。
ちなみにこの状態が、「サムループとワーキングループがそろった状態」ということになる。今あなたは、ノールビンドニングをやっている!
6.出来上がったループはとりあえず無視して
親指の腹にできた新しいループはとりあえずそのままにしておいて、もう一度、何も小細工なしに針を結び目の下をくぐらせてみよう。やることはさっきと全く一緒。
親指の腹と、結び目の間に、針を通す。
親指の付け根の方向に糸を引いて、親指に新しいループを作る。
親指にループが二つできるから、もともとあった方のループを、外す。
7.ループが二つになることを確認する
きちんと古いほうのループを親指から外せたら、この写真のような状態になるはず。
(なってなくても大丈夫。最初は誰でもそう。一度毛糸を切って、またやり直せばいいよ)
この親指にまきついてるループを「サムループ」、サムループを外してできる、親指の腹にできてるループを「ワーキングループ」っていう。
ノールビンドニングは、サムループを外してワーキングループにしていく縫い物。
次ももう一度、同じことをやろう。
8.親指の腹にループが3つできた
3回針を通して、3回親指からループを外したので、親指の腹にできるループは3つ。
ノールビンドニングが全く初めての人は、まずこの一連の流れで遊んでみるといいと思う。
親指の腹にループが3つたまったら、毛糸を切ってもう一度。
一連の流れを手早くこなせるようになったら、もう作り目なんかこわくない。
これが苦もなくできるようになったら、改めてテキストの44ページ、「伝統的な作り目」に挑んでみてほしい。ここでやったこととの違いは、針を通すときに針をねじって入れる、ただそれだけ!
作り目ができれば初心者は終わり!あとは出来上がったものを輪につなぐ方法を覚えたら中級者。リストバンドが作れたら一人前、だと思う!
ここから先は上達はすっごく早くなるから、楽しみにしているといいよ!
9.作り目がぐちゃぐちゃになってしまっても
大丈夫!
サムループと、ワーキングループさえ作れていれば、作り目なんて気にしない!
そのままどんどん縫おう!
拾うワーキングループを間違えても、気にしない!
どんどん縫おう!
縫っていくうちに、「これは違う」「こっちが正解のワーキングループ」とわかるようになってくるから。
そして、作品が完成するとき、どうしても作り目がぐちゃぐちゃになっているのが気になったなら…
「作り目が気にいらないなら、切ってしまえばいいじゃない」
脳内のマリーのささやきに耳を傾け、潔く切っても大丈夫!ノールビンドニングはほつれないので、作り目なんてバッサリ切り捨てて、綺麗な縫い目から残せば大丈夫。あとは適当に切った部分の毛糸を処理すれば、見た目に美しい。
とにかく、ノールビンドニングのコツは、縫っていくこと。
途中で「あれ、これ間違ってるんじゃ…」と思っても、大丈夫!間違ってない!ちょっと見た目が悪くなるだけで!そこを気にするより、縫い続けて体にリズムとステッチを覚えさせる方が上達は早いと思うよ。
まぁ、始めて60時間くらいのお前がいうなという話ではあるけれど。
とにかく、最初は大変だったり迷ったり不安になったりするけど、どんどん続けて行けばそれが解決方法だったりするよ。
頑張ろう!
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
- 作者: 北村系子,マツバラヒロコ
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X.実はもう、作り目はほとんどできている
この記事かいてて発見したんだけど、これ、実はもうほぼ作り目ができてるんだよね。
さっきのこの状態。
何もせずに3回針を通しただけの状態から、実はあと一歩でブロディエンステッチの作り目ができる。
こうやって、3つのループに針を入れて。
針のお尻を向こう側に動かして、きゅっとねじる。3本のループが外れないように。
テキスト44ページの04と05を参照。
そして、結び目の下に針を通す。今までと同じに。
人差し指で結び目を抑えて、ゆっくり引き抜いて、もともとあった親指のループを外す。
新しいループを親指に作るときに、毛糸が外れてしまわないように注意して。
じゃん。
ブロディエンステッチの作り目、完成!
おめでとう!
上に連なってる3つのループが、今糸を通した3つのループ。
その下の横になってる大きなループが、親指から外したループ。
そして新しく親指にループが巻き付いた。
ブロディエンステッチは、この構成がひたすら続く。
もっと言えば、これができたということは、マメンステッチも、オスロステッチも、習得したのと同じ!
でもブロディエンステッチはとても美しいステッチなので、下手にほかのステッチに手を出さなくてもいいと思う。ブロディエンステッチに十分慣れたら、ほかのステッチもすぐに理解できるようになるよ!
作り目を裏からみた写真。
次は、この3本のループを拾う。
親指の腹に4本あるループのうち、新しいほうから3本選び、針を通す。
そうして1目ずつ進んでいくのがノールビンドニング。
そうして、同じく、ねじって通して、ねじって通して…と繰り返すのはテキストにある通り。
拾うワーキングループを間違っても大丈夫。とにかく、どんどん縫っていくといいよ。
そしてこんな感じのものができていく。ブロディエンステッチはもうキミのものだ!
ちなみに今回、この記事でできた作り目は、テキストにある作り目と違ってちょっと脆い。
毛糸の端を引っ張ると縫い目が崩壊するので、あまり見た目はよくならない。
だからこの作り目のやり方に慣れたら、改めてテキストの「伝統的な作り目」に挑戦してみてほしい。きっとすぐにできると思う。違いは最初からねじるかどうかだから。
作り目ができたら、あとは作品を作るだけ!
(もっとも、「脆くたっていいじゃない。切ればいいのだから」というマリー様的ノールビンドニングをやるというなら、この記事の作り目でも問題はないんだけど!)
あ、テキストにある「ハートのモチーフ」は実は結構難しいから、最初はリストバンドから作るといいと思う!
これからの時期実用的だし。
何よりも、実際に作品を仕上げることができた悦びほど、上達を促進するものはないからね!