ノールビンドニング - 最古のステッチと、毛糸ちぎり機デビューのこと -
俺は一つの野心を胸に、今週という10月の第三週を迎えていた。
それは、「ベレー帽を作りたい!」という野望である。大したことない野望だが!
これからの北海道は日ごとに寒くなり、またそれに呼応するように、俺の…あれだ、その、頭髪が!はらりと儚く秋露に消えてゆくのを感じていたからだ。
…いやまぁ、もう仕方ないんだよ。その日がいつ来るかどうかだけの話で、あとは俺の勇気の問題となるだけさ。現実を、いつかは直視せねばならぬ、その時を座して待つのか、むしろこっちから迎え撃つのか。
そんなきたるべき「その日」に備えるべく、自分に似合う帽子を何かしら探さねばならぬ。そういうわけで、最近は帽子に殊の外興味を抱いているというわけで。
動機は後ろ向きだが!
俺にも…覚悟の刻が近づいているのはわかるからな…!
お風呂の排水溝とかで。物理的に。目に見える形で。
で、ベレー帽を作るにあたり、それはもう当然世界のナイスガイたちがどのようなベレー帽をかぶっているのかを検索したわけで、彼ら最高の男たちの画像を8割くらいダウングレードして自身に当てはめて考えると、わりといけるんじゃないかと仄かな希望を抱いたので、ベレー帽を作ることにした。
幸い、ノールビンドニングのテキストに見事ベレー帽の作り方が載っている。
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
素晴らしいね!
要するに、円形にちょうどいい大きさまで広げて行って、適当なところで減らし目をして、ひたすら減らしていって頭の大きさにする。という非常にヴァイキング的おおらかさを持った作り方なのだが、おそらく古来ベレー帽をかぶってきたバスク人たちも大体そんな感じで作ってきたのだろうから、俺でも十分に作る資格はあるはずだ。
ヴァイキングは俺に勇気を与えてくれる。
しかし、そのまんま作るというのも、何か芸がない気がした。
そういうわけで、ここ数日、いろんなステッチを開拓していたわけなんだけど。
そこにもう一つ、追加しようと思った。
「縦縄編みを組み合わせてみよう!」
縦縄編みはまだ俺はやったことがない。
ノールビンドニング特有のナイスな模様。
ワークショップに参加しそこね、実際にやってみる機会を失ったままだった。
ならば今ここでやってみるしかないんじゃないのか。
一本縦縄模様を入れることで、ベレー帽はなかなかいい感じになるんじゃないか。
しかしいきなり本番でやってみるには怖い。
なので、一度別のもので実験してみることにした。
それがトップの画像の筒状のモノ。易占用の筮竹入れである。
地味に俺は易占をやるのでね!あの、長い棒をジャラジャラするやつ。本当はジャラジャラする意味なんてないんだけど。でもあれを持つとジャラジャラしたくなる気持ちはわかる。パン屋さんでトングを無意味にカチカチやるようなもので。
で、ま、易占は置いておくとして(易は実は占いとはちょっと違ったりする。決して怪しげなものではないぞ!)、その筒の周りを、縦縄模様で覆ってみよう!と考えたわけさ!
ちょうどいいかんじの2色撚りの毛糸も1玉あるし。
そして、今回はノールビンドニング最古のステッチ、「オースレーステッチ」を使うことにした!
以前習得したダラーナステッチの亜種(どっちが亜種なのかわからないけど)なので、比較的簡単に習得できた。
Åsle Stitch, original - Neulakinnas, Nalbinding
はい、いつものお姉さん。
…もうお姉さんには感謝しかない!
お姉さんの作り目の作り方はテキストとは違うけど、要するに、「サムループが一本まきついた状態で糸をそのまま引き抜き、サムループを二本にする」という動きができればオースレーステッチの型になる。あとはワーキングループを適切に拾えばそれでOK。作り目は多少ぐちゃぐちゃになっても大丈夫だから、いろいろやってみるといつの間にかうまくいっているはずだ。
ノールビンドニングは、サムループをどうするか、そしてワーキングループをどう拾うかという話に集約されると思う。この二点きっちりやれば、どんなステッチも怖くない。と思う。今のところは。
わからなくなったらまずサムループ。次にワーキングループの拾い方を確認していくといい。
さて、これで準備OK。
あとは、作り目を作り、実践していくだけ…!
…なのだが…
毛糸が…
ちぎれない…
太くて強度があるので…
すごく手が痛い…
「あー、いてぇ…」
とか、つぶやく俺は…当然…笑っているわけでな!?
そう、ここでついに、奴の…彼の…毛糸ちぎり機の出番が!
ついにこの時が来たか!
毛糸ちぎり機!
頼む!
お前しかいない!
毛糸をきつく巻き付け、ドキドキしながら毛糸ちぎり機を握る!
……もそっ。
毛糸は…ちぎれなかった…。
毛糸ちぎり機は…その力を発揮できなかった…。
もう少し、おおきく作れば、ちぎれたのかなぁ…。
一応半分くらいはちぎれたから、そのあと手でちぎったけど…。
言いようのない喪失感。
しかもそのあと、「手のひらに毛糸を巻き付けてちぎれば痛くないし、簡単にちぎれる」って発見してしまって…なんだか…こう…。
……。
しかし一応!きっちりときつーく毛糸ちぎり機に巻き付ければ、ちぎれるよ!
でも、その手間と、手のひらでちぎる手間だと、どう考えても、後者なんだよ!
すまん…本当に、すまない…!
胸の中を通り抜けて行く風に耐えながら、ぐるぐると縦縄編みをする。
割と行ける。これは表裏をひっくり返しながら縫っていく手法なので、もしかするとオースレーステッチのような表裏の模様が違うステッチは相性が悪いかもしれない。でもそこそこ、うまくいっている。
いっている。
途中でコーヒーをこぼしながら。
で、4時間くらいで編めた!
どうだろう!?
…いや、わかる!
いいたいことはわかる!
なんだろう!?この、絶妙なコレジャナイ感!
しかも途中で縦縄模様をあきらめている!
そしてあきらめた先も、何か、あんまり、しっくりこない感じがする!
…多分、2色撚りの毛糸って、似合うステッチとそうじゃないステッチがあると思うんだよね。で、オースレーにはあわなかった。
そして、2色撚りの毛糸の圧倒的な自己主張に加えて、さらに縦縄模様という自己主張が追加され、そこにオースレーステッチというダメ押しの追加要素が来るという、全部のせ、足し算の暴力のマイケル・ベイ状態になっている!
圧倒的ベイ感!
ベイ感が分からない人は実写トランスフォーマーあたりを見よう!
画面はすごいんだけどすごすぎていったい何が起こっているのかわからないぞ!
結果、心に残るのは「マイケル・ベイを見た」という胸やけ気味のカロリー高めの感想だけだ!
そんなベイ状態が!今!俺の目の前に!
すごい。
ノールビンドニング+易+ベイ
北欧、中華、そしてベイ国のエッセンスが全部合わさった結果、ベイ感だけが生き残ってる。
俺はいったい何をやっているんだ…。
ベレー帽…これ大丈夫か!?
すごく不安になってきたよ…!
ノールビンドニング- まだ見ぬステッチを求めて、ステッチ情報サイトを探す -
先日、ダラーナステッチを曲がりなりにも習得することができたんだけど(ダラーナステッチって名前であってるのかな?)、それでもまだ俺の使えるステッチは5種類なわけで。
今のところ1000種類以上見つかっているといわれるノールビンドニングのステッチの、たった0.5%ということになる。…せめて1%には到達したいところ!小数点以下というのはちょっと心もとないからな…!やはり、武器は幅広く持っておくに限る。スペシャリストになれない俺には、ジェネラリストの道しかないのだ…!
というか単純に、新しいステッチを身に付けるのが楽しくなってきたしね。
しかしPinterestなどで画像から新しいステッチを探すのは非常にツラい。そこで、今のところ知っている5種類のステッチの英名で検索して、ノールビンドニングのステッチをまとめたサイトがないか探してみることにした。
ネットは広大だからな!
必ずどこかに情報をまとめていてくれる人がいるはず。
それにノールビンドニングは古く新しい技術。エジプトで1000年前に作られたミトンが見つかるも、その製法がまとめられたのは1957年、マスターピースたる本が出版されたのが1960年ということなので(この辺はまだ調べ切れてないので、あいまいだけどね)、このロマンあふれる編み物を広めたいと情熱を燃やしている人は必ずいるはずだ。
…そんな大仰な前置きしなくても、割とあっさり見つかったんだけどね…!
http://www.en.neulakintaat.fi/
それがここだ!
webサイトのタイトルが、ないけれど!
英語版も用意してくれているので、サーミやスオミの言葉が分からなくても読むことができる。ありがたいね!
ここの左のメニューにある「Stitch Samples」を見ると、画像でステッチが見られるので、どんなステッチをやってみたいか探すのも簡単だ。やってみたいステッチが見つかったら、同じく左メニューから「Finnish Stich Family」などをクリックすると該当ステッチのリンクへ飛べる。
本当にいい時代だね!
しかも、簡単な説明とともに、動画へのリンクも示してくれている!
素晴らしいな!
この時代に感謝だぜ!
UUOO/UUOOOとかのハンセン表記はまだ全然わからないしね。
そこで、今回は今までまったく触れていなかった、ワーキングループをねじってから拾う「ターニングステッチ」を一つやってみようと思い、動画を見てみることにした。
Nalbinding, Turning Stitch Var. 2b, 2+tr+2, Joutseno
…貴女でしたか!
やはりというか、前回ダラーナステッチのときも関連動画でこのお姉さんが無双していたのでうっすらと予想していたけれど、まさかあのサイトを、このお姉さんが!
このお姉さんのブログとかを見ると、多分この人は相当な権威なんじゃないかという気がしてくる。俺のような男が気軽に「お姉さん」とか言えない感じのアトモスフィアが漂う。論文へのリンクとかあるし、フィールドワークしてるっぽいし、ノールビンドニングを知っているお年寄りに取材に出かけたりしているし。
…お名前はまだ存じ上げないのだが!
おそらく今後、このお姉さんには幾度となくお世話になるだろう。
ちょっと手慣れすぎてて動きが早いけど、何回も一時停止して確認すれば間違いなくできるようになるはず。実際俺もなったし。今回もな!
こんな感じで!
「フィニッシュステッチ2+tr+2」という、何かオトコノコの心にグッとくる名前がつけられている。いやあるいは「Joutseno」なのかもしれない。…ヨーツェノ?わからん!読めない!
このステッチはサムループを3本かけて、そのうちの1本を外してねじって拾ってワーキングループの3本に通してねじって引き抜くという、慣れればリズムよく行けるけど初見にはやっぱり大変なステッチ。ただ、新しいサムループが親指の根本側にできるから、サムループがすっぽ抜けるということはないし、思い切りきつく縫っていけば縫い目も乱れないから、とても安定したステッチといえるかもしれない。
それにこれ、かなり分厚く出来上がる。並太の毛糸で8mmの厚さ。すごい。
襟や袖口など、強度がほしい部分にこのステッチを使うといいのかもしれない。
とりあえず一周編んでみたところで…やはりむくむくと…新たな針を作りたい欲求が生まれてきた!
これは親指の向こう側から拾って、反時計回りにねじるというステッチなので、まっすぐに長い針だとめちゃめちゃつらい!
…要するに、俺のお気に入りの針が使えない!
そういうわけで、今まで作った中で最も短い針を出して、それをさらに短く持って縫うと…やりやすかった!
やはり、道具は適した物を使わないといけないね。
こういうターニングステッチの時に、曲がった針が輝くんだと思う。
ノールビンドニングの針の画像を検索すると、絶妙に曲がった針を多くみるのは、こう言うことだったんだな。曲がった針なら、複雑にねじって拾っても針から毛糸が逃げて行かない。またひとつ勉強になったよ。
…ちょうど曲がった鹿の角があるし、また作ってみようか!
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
- 作者: 北村系子,マツバラヒロコ
- 出版社/メーカー: グラフィック社
- 発売日: 2017/09/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
ノールビンドニング - 1か月、50時間の成果 -
突如、ノールビンドニングを始めることを決意して約1か月。
手元の手帳によると、50時間くらいはやり続けているらしい。学習だとかそういうことではなく、純粋にハマってしまっている!
ノールビンドニングの効用として、作業中は完全に手がふさがるのでお菓子を食べている暇はないということがある。お茶すらも飲む時間があんまりない。いや、あるんだけど、縫った!毛糸なくなった!毛糸つないだ!はい次!のリズムが止まらなくて、お茶をいれても「飲むためにリズムを止める努力をしなければならない」という巨大なハードルが立ちふさがる。そんなことにかまけている暇はない。俺は縫うぜ…!みたいな感じになっちゃってるので、「編み物はむしろ太るんじゃないのか…?」という当初漠然と感じた危惧は完全に杞憂と化した。
で、時には普通に夕食食べないでやっていたので、体重は3kg落ちているね!…元がアレではあるが!
今までこのブログで書いてきたけど、今回のノールビンドニングは本当にいろいろと噛み合った、見事なシナジーを俺の中に見出したものだった。ちょうど初めて20時間の時にワークショップに参加できて北村先生のお話しを聞き、「適当でOK!」という言葉に多いなる勇気をもらって「それならとにかくやってみればいいわけだな!?」と学習の迷いや停滞が吹き飛んだことがとても大きいと思う。ワークショップに行ってよかった。
世の中の、個人レベルの問題は大体は勇気の問題なので、勇気を出してワークショップにs南下して本当に良かった。。タロットカードの最初のカードも「旅人(愚者」だしな!とりあえず最初は、愚直に一歩踏み出すほかはないのだろうと思う。一歩間違えれば意識高い系になる可能性は秘めているけれども…!
初めて一か月目にしてトップの画像にあるスヌードを完成させられたというのは本当にうれしいね!いやー、これ、いいよね。なんかもう、我ながら、こう、いいよね!縫い目もすごく安定しているし。ははは、いやぁ、本当に嬉しくてね!
そんなわけで、一か月目だし、誕生日だし、じゃあ次は何を作ろうかなと、もはや日課となったPinterestなどで「nalbinding」を検索していたところで…Dalarna Stitchというものに出会った。
これ!
縫い目がすごく綺麗で、これはぜひとも体得したい!
しかし、やり方が分からない!
そういう時はyoutubeに限る。何気にノールビンドニングのステッチの動画はたくさんあるのだ。たくさんというか、相当信頼できる感じのお姉さま方が動画を投稿してくれている。いい時代だな!
早速検索してみると、あったよ!動画が!
Dalarna Stitch, Taalainmaa - Neulakinnas, Nalbinding
でかした!
というかこの動画は、多分さっきのブログの人の動画だよね。いや本当にありがたい。
ノールビンドニングを始めた当初の俺には、どのステッチの動画を見てもさっぱりわからなかったのだが…今の俺にはわかる…気がしてくる!
実際この動画を一通り見ると、どんなことをやっているのかは経験者はすぐわかると思う。あー、ここがサムループになるのね、とかワーキングループはそこなのね、とか。
で、このステッチ、は複雑そうに見えるけど、割とワーキングループがわかりやすいという点で、ブロディエンステッチよりもむしろわかりやすいんじゃないか。
これはいけるぜ。
俺にもやれる時が来たというのか。
動画を見て理解し、実行に移せる程度の実力が…備わったと!
慢心ギリギリの自信をみなぎらせ、俺は針をとった。
お姉さんと同じ速度で縫ってくれるぜ…!
…という自信はやはり過信にすぎなかったわけだが!
慢心だった!普通に!ちょ、お姉さんが手慣れすぎてい手やっていることはわかるのに頭に入ってこねぇ!早くない!?
Youtubeにコマ送りモードの実装を心から望みつつ、スマホでなくPCでシフトキー連打で動きを確認する。
50時kなんお経験はやはりバカにならないもので、10分ほどシフトキー連打してようやく理解することができた。相変わらず1段目はよれよれで何がどうなっているのかわからないけど、2段目になるとダラーナステッチの美しさが徐々に顔を出してくる。…何か俺の指が太いのか、お姉さんのようにはいかないのだが…それでもなんとか、小袋を編むことができた!
多分、このダラーナステッチは裏地のほうが綺麗だと思う。
(10/15追記:裏表間違ってて、上記の画像が裏で、下の画像が表でした!どおりで縫いにくいと思った…。)
…もちろん、俺が圧倒的に未熟故というのはあるのだが!
裏はそれっぽいでしょ?(追記:こっちが表です!)
でもなんか、微妙に違う気もする(裏表が間違ってる!)。しかし縫えてはいる。そして小袋とはいえ、完成するとめっちゃうれしい。この小袋には3時間くらいかかった。
慣れないステッチだと本当に苦戦するね!
でも、また新たに新しいことを始められてワクワクしている。
やはり学習は楽しい。
ノールビンドニング - 鹿角クラフト -
鹿角(ろっかく)と聞いてテンションが上がる人はどのくらいいるだろう。
かつてハドソンから出ていた「桃太郎伝説」の主人公・桃太郎の必殺技が「ろっかく」である。
・・・電鉄じゃなくて伝説な!電鉄のほうがスピンオフ作品だぞ!
「だだぢぢ」のほうが強くない?という向きもあろうけれども、SFCの「新桃太郎伝説」では「だだぢぢ」がなくなったので(再序盤は使える)、やはり鹿角といえば桃太郎の必殺技なんである。
いやしかし本当に、「新桃太郎伝説」は名作RPGだと思うんだよ。
ストーリーもシステムも音楽もキャラクターもグラフィックも最高で、そして日本の妖怪たちの圧倒的迫力。夜叉姫がかわいい。…当時の俺はあしゅらを最後まで女性だと思っていてパーティに入れていました。夜叉姫と体重が同じなんだから勘違いするのも仕方ないだろう!あのビジュアルだし!天女の羽衣をまとったセクシー美女と勘違いしても致し方ないところだと思うんだが!
まったく恐ろしい話だぜ。
風神雷神戦の難易度よりも恐るべき事実だった。
ちなみに俺は閻魔、ましら、あしゅらという謎のパーティで進めていました。つらかった。
続編、出ないかなぁ。リメイクでもいいんだけどな…。頼むぜハドソン(もうない)。
それで、鹿角、鹿の角。
端的に言えば、鹿の角でノールビンドニングの針を作ったよということなんだけど。
昨日の8日、マシンガンがイケる友人宅でバーベキューをした際にクラフト談義となり、「角欲しいんだよねー」と言っていたら友人の一人が「鹿の角なら余ってるからあげるよ」といってくれたので、意外なところから鹿の角をゲット。
意外と重い!
鹿はこんな重いものを二本頭につけて生活しているのか…!
鹿のパワーに感心をしつつ、針づくりに取り掛かったわけだけれども。
美しい鹿の角も、実は中身は海綿状の中空状態になっている。
この海綿状の部分は使えないので、太い部分を4分割して(上の写真をさらに割る)、綺麗な角質を長くとる。針にするにはやはり10cm以上はほしい。
…だが!
ここで一つ大きな問題が持ちあがる。
動物の角は、骨ではない。角質なのである。というか、角を形成する物質だから「角質」と呼ばれている。要するに皮膚の組織がめっちゃ固くなったもの。人間で言えば爪と同じ。
だから…
つまり…
電動のこぎりとか、ディスクグラインダーとかで強く摩擦すると…
表面が焦げるわけで…
髪の毛や爪を燃やしたときの、あの、ヤな臭いが終始そこら中に漂う!
これは…キツい!
俺も木工の徒として…ニレの木なんかで「うへー」とか言ってるけれども、ニレの比ではない。
角質組織を構成するケラチンというタンパク質が燃焼し、硫黄を発生させるためである。
硫黄の強烈な匂いが俺を襲う!
ツラい!
ニオイに耐えて削っていく。
動物の角を加工してる職人さんはすごいなぁと思いつつ。
ただ、木材と違って鹿の角はけば立ったりしないから、とっても作りやすい。強度も重さも十分にあるから手に持った感触がすごくいいし、ギリギリまで穴を広げても折れる気配はない。本当に、ニオイ以外はカンペキなのだが!
今回は初めての角クラフトということで、あまり小奇麗にせずに多少粗を残して仕上げることにした。
そのほうが角っぽいしね。
そしておおよその形をとったところで…
やはり、ここでルーン文字を!
刻みたい!
北欧ヴァイキングの縫い物として!
ルーンはおさえておきたい!
それに実用的な意味として、針の表裏を区別したかったんだよね。二つ穴がある針の場合、糸を通す方向をうまくやらないと糸がこんがらがっちゃうから、「この方向に通す」という区別がほしかった。だから、ルーンのある方を表と決めれば迷うことなく糸を通すことができる。
それで、どのルーンを彫るか。
これはかつての男の子として、非常に重要である。
俺とこの針に、最もふさわしいルーンは何なのか…!?
30分ほど悩んだ末に、俺は「ラド・ルーン」を選択した!
アルファベットのRに似たルーン文字。意味は「旅、移動、成長」である。運送業者さんなんかはこのルーンが一番いいんじゃないかな。
もっとこう、「野生のパワー」とか「勇気」とか「破壊からの再生」とか、男の子っぽいルーンはあったんだけど、もともとこのノールビンドニングを始めるきっかけが「何かを学ぼう、成長しよう」だったことと、ノールビンドニングをやるうえで、今まで全く縁のなかったところに行く機会を得たこと、これからもいろんなところに行くであろうことをかんがえて、この「ラド」のルーンを選択した。それに旅というのは、一歩一歩地道に進んでいくものだから、ひと目ずつゆっくり進んでいくノールビンドニングにはぴったりな気がした。
で、アルファベットのRに見えないように、うまく角度と間隔を調整してミニルーターで彫り、ラド・ルーン入りノールビンドニング針が完成した!
やー、この適度な重さ、ひんやりした感覚は素晴らしいし、お気に入りの針の形を元にして作ったので手に持った感じも最高。
残った部分はボタンにしたり、あと3本くらい針も作れるし、色を塗ったらどうなるのかなどいろいろとやってみたい。
クラフトって楽しいね!
忘れかけていた赤い箸
ノールビンドニングとその針づくりにすっかり夢中になっていて、針と毛糸が増えて行く毎日なんだけど。
今週は、「やはり、針にはルーン文字を入れたいな!?」ということで、白い木の針を作ってた。白いといっても、あくまでも木だから木相応の色になるんだけども。
こんな感じの!
それで今回わかったんだけど、針の厚みは4mmはほしいね!
3mmだとちょっと頼りなさげな感じがする。
2mmになると多分、あんまりしっくりこないと思う。強度も低下するしね。
そんなこんなでまた作ったので、その一部をメルカリにに出してみた。…何か申し訳ないが!これ、売れるかなぁ。やっぱり1000円は高いのか。しかし材料と手間考えるとなぁ。うーむ。
例えば、工芸作家さんが作る椅子や机って大体10万~20万円するんだけど、割とそのくらいは普通だったりするんだよ。材料代がざっくり机なら3万、椅子なら1万として、職人さんが1日働いて3万円のお金が発生すると、机なら3日、椅子なら4日とかかかるわけで(この辺はもちろん人によるけどね)。「椅子一脚に20万かよ!?」っていう驚きはまことご尤もなんだけども、なんというか、職人さんたちも生きてゆかねばならぬし。きっちりした製品なら本当に一生使えてしまうものなので、そこは、まぁ、なぁ。難しいよね。機能的には安いものでも十分なわけだし。かといって、こう、うーむ。
それはそれとして、針づくりの合間に、ずっと放置してあった赤い花梨の箸を仕上げてみた。
見事な赤さ!
しかも削っている最中の匂いがとてもいい。
ヒノキやヒバの匂いは有名だけど、広葉樹にもちゃんと匂いはある。
例えば、桜は本当に桜餅の匂いがする。桜餅というか、桜の葉の。対して桜とはほんの少し違うチェリーやシウリサクラは桜餅の匂いはしない。あとはオークはウィスキーの匂いがするし、ニレは…まぁ、あんまりいい匂いではない。多分みんなニレは嫌う。だからあんまり人気が…。まぁ、それはいいが!
なんでこの箸を放置してたかというと…俺は「同じ形のものを作る」のが大変苦手だから!特に箸のような、大きさがそろっていなければすぐにわかるのが一番苦手だ!
なので、今まで箸はこれを含めて3膳しか作ってない。
一応、箸づくりのアドバイスをすると。
基本的に、綿を意識してひたすらサンドペーパーで削っていく地味な作業を続けて行くことになるんだけど、その時に、なるべく黒いサンドペーパーは使わないほうがいいかも。上の画像の左のやつ。要するにどこでも売ってるやつ。特に100番以下の目が粗いものは、黒いのは避けたほうがよさそう。
なぜなら、サンドペーパーの細かい黒い粒が木目に入り込んで見た目が悪くなるし、最悪、黒い粒を歯でかんでしまう恐れがあるから…。ジャリっていう感覚は、味わいたくないだろう!?
もちろん、箸以外なら全然大丈夫なんだけどね。
なので、箸やカッティングボードに使うなら、ちょっと高めの(それでも100円とかだけど)、右のような白いサンドペーパーがおすすめ。なおかつ、100番以下は使わないで、大変かもしれないけど180番くらいで削ると粒は入らないと思う。
白いサンドペーパーはプロユースのお店でよく売っている。amazonには見当たらないなー。
そういうわけで、赤い箸が完成した!
…全然目立たないけど!
でも適度な重さと硬さ、置いたときの音なんかが何ともいえない良さがあるね。
もっと早くに仕上げておけばよかった。
と、そんな箸をせっせと作っているときに、木工の師匠が「yajul君にぴったりのヘラを作ってきたぞ!」と持ってきてくれたのがこれ。
曲がりすぎている!どの辺が俺にぴったりなのか!?
しかし直線は通ってるから力を入れても使いやすい…!
これは使ってみないとまったくわからないな、と思っていると、「これでチャーハンを作って感想を聞かせてくれ」というわけのわからない要望を受けた。
なぜチャーハンなのか。
いや、俺はチャーハン好きだけど。
チャーハンは麻薬。
そういうわけで、薬物の誘惑に負けてしまったので、花梨の箸のデビューは明日以降になってしまった。
ノールビンドニング - 縫う上でこんなことに気づきました -
ミテーヌを作り終え、さてそれでは次は何を…と、あらたな題材を探しに「nalbinding」であれこれ検索するこの週末だったんだけど、ふと、あまりに性急にやりすぎている気がして、いつか揺り戻しが来たら怖いなぁ…と、不安になってきたところではあるんだけど。
あれだね、恋愛初期のあの状態だね!
しかし俺は永遠の愛を信じたい男…。
老人になっていい感じに編み物が似合うようになるその時まで愛を貫いていく所存さ。
何を言ってるんだ俺は。
大体そんなことを言う男は信用できないしな!
口先で愛を語りながらコンビニエンスな欲望に流されゆくのが相応のパターンだぜ。
それで、なんやかやと25時間くらい縫っているんだけど、その中でいくつか気づいたことがあったので、二点紹介してみようと思う。
これに気がついてから縫うスピードと正確さが確かに上がったので!
…と、偉そうにいうものの、俺が単に編み物ド素人だから驚いているだけで、既知の人には全く新しくも何ともないかもしれないし、実はあとから考えてみたら全然効率よくなかったってこともあるかもしれないけど。
そ、そこは取捨選択をお願いしたい!
コードループを拾う時の針の向き
見苦しい指が写っているのは見なかったことにしてもらうとして!
ノールビンドニングは、いわばひたすらに前の段のコードループを拾っていく作業ともいえるんだけど、始めて7,8時間のころの俺はしょっちゅう、コードループを間違って拾ってしまっていた。
うまく二つ拾えなかったり、別のをまきこんだり、毛糸のど真ん中を拾ったり。
そんなときは、上記の写真のように、進行方向に対して垂直に針をいれると、「すっ」と針がはいる場所があるので、針先で「ここかな?どこかな?」とチクチクやらずに済むようになった。
最近はもう、のぞき込むことをしなくても、裏に当てた中指の感覚ですっと針を通せるようになったよ!
コードループとワーキングループに針を入れるときに注視していれば、あとは視線をテレビやPCに移しても9割がたいけるようになった。
進歩か、慢心かはわからないけれども…!
サムループが外れちゃったり、うまく作れないときに
見苦しい指が写っているのは見なかったことにしてもらうとして!
ノールビンドニングは、いわばひたすらに親指にサムループを作っていく作業ともいえるんだけど、始めて7、8時間のころの俺はしょっちゅう、サムループが親指から外れて難儀をしていた。
親指の先のほうにできてしまったり、あるいは間接に近かったり。
サムループの大きさが不安定だから、結果的に縫い目も汚くなってしまっていた。
そこで、ちょうど針を引き抜くときに親指をくいっと前のほうに押し出して、親指の関節のあたりで針と結び目を抑えて引き抜くと、見事にサムループが一定の大きさで爪半月のあたりに作られるようになった!
なかなか言葉で説明するのは難しいけど。
というか、編み物やってる人には当然のことかもしれないけど。
で、この親指をくいっと前に出すときに、左手の中指~小指で制作物をちょっと後ろに送ると、手の中でたわんだりしないできちっと縫い続けることができる。
…伝わるだろうか!?
親指と人差し指と、中指以下でピンと張らせる感じ。
これで一定の縫い目を作っていくことができる!
と、思う!
この二つを意識するとすいすい縫えるようになってきたし、何やらプロっぽい手つきになってきて自己満足感が非常に高まっている。
マフラーになるのか、ひざ掛けになるのか、未だ結果は収束していない。 pic.twitter.com/c8TKTfHFQm
— yajul (@yajul) 2017年10月1日
ほら、結構、綺麗な縫い目になってきているでしょ?
ノールビンドニング - 今までに作った針 -
個人的に、「編み物をやるひとは、指の関節を使って糸を抑える独特の動きをする」とずっと思っていたんだけど(母がそうだった)、ここ数日まさに自分もそののような手の動きをするようになってきて「俺もいっぱしの風を吹かせるようになってきたか…」と感慨深いところだけど。
だいたいこのくらいの、ちょっとこなれて生意気な感じになってきたところで大きな失敗をするものだよね。慢心とか!
気を付けないと!
希望こそがパンドラの最後の厄災、という話もあるしな!
と、そんな感じでノールビンドニングに大変にハマっているんだけど(Twitterでほぼこの話しか最近はしていない!すまない!)、ちょっとここらで今までに自分が作った針をまとめてみようと思う。
雑多に作ってたつもりだけど、案外、いくつかの傾向にわかれていることが分かって興味深かった。自分のたどった道をあとから見直すのにはこういう楽しみがあるよね。職歴なんかでも、フラフラしてると思ってたけど実は一定の傾向があった、とか。まさに俺なんだけども。
現時点で12本針を作っていて、冒頭の画像がそのうちの10本。残りの2本はちょっと別の場所にあるので写真にはないんだけど。
デザインバリエーションごとに見事に長短二本ずつになっていて面白かった。
右からひし形、柳葉型、三角形型、ひし形のカリン、直線型。実質四種類。「○○型」というのは自分が勝手につけた名前なので、実際そういう呼称はないとおもう。
以下、それぞれの解説。と言うほどたいそうなものでもないけれど。
ひし形
これが自分の中での最新型。
後述する柳葉型や三角形型だと、針のお尻が手のひらに当たるときに意外と痛かったので、お尻を丸くしたひし形が生まれた。これで長時間縫っていてもそんなに痛くない。
長い針だとどうしても、針のお尻を手のひらで押し込む動きになるので。
左の短針(といっても10cmある)は特に使いやすくて、糸が長い時は二つの穴でまとめ、短くなってきたら上のほうの穴に通してさらに短い針として使うという使い方ができる。これはお気に入り。
多分今後特に問題がなければ、この型を作っていくことになると思う。
曲がった針なんかも作ってみたいけれどね。
こちらはひし形のカリンバージョン。
奥の長針はカリンらしい、美しい赤い色なんだけど、こう、手前の短針の色が悪すぎる…。
というのも、これは「カリンの白太を組み込んで、白と赤とのコントラストを綺麗に見せよう」という野心を抱いて制作したものの…見事に色の悪い白太にぶち当たって、結果、ちょっと汚いかんじに…。でも実物は写真より綺麗だし、愛着もてるよ!形もいいし!適度な重さが集中力を増してくれるし!
しかしこの短針をメルカリに出品してみたら、全く顧みられなかった。多分今も漂ってる。
…価格設定が強気過ぎたのだろうか。
でもカリンだぜ!?グラムいくらで取引される高級材だぜ!?
…だめか!改定するか!
奥にある長針は、今まで自分が作った中でも最長。18cmもある。
こんなに長いのに全くたわまないというのが高級材たるカリンのパワーなんだけど、いかんせん長すぎた。
針作りをしていて気がついたのは、どんなに長くても「親指と人差し指でL字を作った時の指先の距離」の長さを超えちゃうと、途端に使い勝手が悪くなるということ。昔の言い方で言えば「一咫(ひとあた)」。ちなみに箸の長さは一咫の1.5倍が適正。
自分の場合は一咫は16cmなので、18cmは手に余るということだと思う。17cmでも結構持て余し気味だった。
なのでこれはそのうち短く削る予定。
柳葉型
短針は微妙で、長針は一番使っているお気に入り。
短針は一番最初に作ったものなんだけど、これがすごく使いにくい。先端から急に太くなるので、糸が拾いにくいのなんのって。特に筒状に編んでいくときにストレスが溜まってしまう。
一方で長針は極めて使いやすい。短針の反省から、先端を思い切り尖らせたのが奏功して、もう本当に使いやすい。すいすい縫える。
が、お尻が手のひらに当たってちょっと痛い…!
まぁそれでもずっと使っているから(使いやすいからね!)、そんなに気にするほどのものでもないということかもしれないけど。
短針はそのうちもう少しとがらせる予定。
長針は穴がすっごい雑。
でも使う。使いやすいから!
三角形型
最初期に作ったうちの一つ。
ソノケリンを使うのなら、ソリッドかつアーバンでモダンな装いの中にふと頬に感じるクラシカルなそよ風を備えたこの形にするしかないな…!
とか変なことを考えながら作っていた針。
直線の中に配される円形が、硬質な社会に己を調律しつつもその心の中では古のロマンを希求する私たちを象徴した作品。
ということを今考えました。
ハイソサエティな文言を考えるのって結構難しいね!
短針はこれまで制作した中で最も短い。8cm。糸が短くなってきたときにこれに取り換えると楽に縫える。と思う。長針は俺には今一つ足りない長さだけど、多分女性にはちょうどいい長さなんだと思う。12cm。
注意点としては、あまりきつく縫いすぎると針のお尻を通すときに大変なので、そのフォルムに反してふわっと柔らかく包み込むように縫っていくといいんじゃないでしょうか。
鋭いナイフにも…優しさが必要なのかもしれないぜ…!
はい。
直線型
一番大好きな針。
この赤さ!
美しい!
特に短針。これがもう最高に、本当に大好きな針!
木材を使う時は、削ってみないとどういう木目なのかが分からない。それが醍醐味でもあるんだけど、この短針はもう、本当に綺麗でね!写真でもわかると思うけど、光が当たると乱反射する部分があるの。これがもう好きで好きで。手に持った時の感触も最高。適度な厚さ、強さ、幅、これ以上しっくりくるものはないってくらいにうまくできた。
んだけれども。
細すぎた!そしてもう少し長さがほしかった!
あまりに細くて、穴が直径3mmしかない。だから糸を通すときに辛い。
作品としては良くできていても、道具としては今一つという悲しみ。
見て触っているだけなら申し分ないんだけどね。一応、限界まで穴を広げたんだけど、それでもやっぱり並太の毛糸を通すのがやっとかな。
長身は、この短針の夢をあきらめられなくて作ったロングバージョン。
でも残念ながら、短針にあったような美しい木目は現れてくれなかった。
それでも十二分に美しいし(なんせカリンだからね!)、強度も触ったかんじも十分。穴も4.5mmまであるから何を通しても大丈夫。この長針は実は今日作ったばかりなんだけど、多分これからこの針がメインになっていくと思う。
以上
今までに作った針の紹介をしてみた!
読んでくれた人の何かのヒントになれば幸いです!
Pinterestなんかを見ていると、曲がった針や特殊な材質を使った張り、いっそ清々しいほどに適当なつくりの針なんかがたくさんあって、上記のようなかしこまったかんじの針以外のものも作ってみたいなという欲求がふつふつと。
とりあえず、針にルーン文字は入れたいよね…!