ノールビンドニング - 最古のステッチと、毛糸ちぎり機デビューのこと -

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俺は一つの野心を胸に、今週という10月の第三週を迎えていた。

それは、「ベレー帽を作りたい!」という野望である。大したことない野望だが!

これからの北海道は日ごとに寒くなり、またそれに呼応するように、俺の…あれだ、その、頭髪が!はらりと儚く秋露に消えてゆくのを感じていたからだ。

…いやまぁ、もう仕方ないんだよ。その日がいつ来るかどうかだけの話で、あとは俺の勇気の問題となるだけさ。現実を、いつかは直視せねばならぬ、その時を座して待つのか、むしろこっちから迎え撃つのか。

そんなきたるべき「その日」に備えるべく、自分に似合う帽子を何かしら探さねばならぬ。そういうわけで、最近は帽子に殊の外興味を抱いているというわけで。

動機は後ろ向きだが!

俺にも…覚悟の刻が近づいているのはわかるからな…!

お風呂の排水溝とかで。物理的に。目に見える形で。

で、ベレー帽を作るにあたり、それはもう当然世界のナイスガイたちがどのようなベレー帽をかぶっているのかを検索したわけで、彼ら最高の男たちの画像を8割くらいダウングレードして自身に当てはめて考えると、わりといけるんじゃないかと仄かな希望を抱いたので、ベレー帽を作ることにした。

幸い、ノールビンドニングのテキストに見事ベレー帽の作り方が載っている。

はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事

素晴らしいね!

要するに、円形にちょうどいい大きさまで広げて行って、適当なところで減らし目をして、ひたすら減らしていって頭の大きさにする。という非常にヴァイキング的おおらかさを持った作り方なのだが、おそらく古来ベレー帽をかぶってきたバスク人たちも大体そんな感じで作ってきたのだろうから、俺でも十分に作る資格はあるはずだ。

ヴァイキングは俺に勇気を与えてくれる。

しかし、そのまんま作るというのも、何か芸がない気がした。

そういうわけで、ここ数日、いろんなステッチを開拓していたわけなんだけど。

そこにもう一つ、追加しようと思った。

「縦縄編みを組み合わせてみよう!」

縦縄編みはまだ俺はやったことがない。

ノールビンドニング特有のナイスな模様。

ワークショップに参加しそこね、実際にやってみる機会を失ったままだった。

ならば今ここでやってみるしかないんじゃないのか。

一本縦縄模様を入れることで、ベレー帽はなかなかいい感じになるんじゃないか。

しかしいきなり本番でやってみるには怖い。

なので、一度別のもので実験してみることにした。

それがトップの画像の筒状のモノ。易占用の筮竹入れである。

地味に俺は易占をやるのでね!あの、長い棒をジャラジャラするやつ。本当はジャラジャラする意味なんてないんだけど。でもあれを持つとジャラジャラしたくなる気持ちはわかる。パン屋さんでトングを無意味にカチカチやるようなもので。

で、ま、易占は置いておくとして(易は実は占いとはちょっと違ったりする。決して怪しげなものではないぞ!)、その筒の周りを、縦縄模様で覆ってみよう!と考えたわけさ!

ちょうどいいかんじの2色撚りの毛糸も1玉あるし。

そして、今回はノールビンドニング最古のステッチ、「オースレーステッチ」を使うことにした!

以前習得したダラーナステッチの亜種(どっちが亜種なのかわからないけど)なので、比較的簡単に習得できた。


Åsle Stitch, original - Neulakinnas, Nalbinding

はい、いつものお姉さん。

…もうお姉さんには感謝しかない!

お姉さんの作り目の作り方はテキストとは違うけど、要するに、「サムループが一本まきついた状態で糸をそのまま引き抜き、サムループを二本にする」という動きができればオースレーステッチの型になる。あとはワーキングループを適切に拾えばそれでOK。作り目は多少ぐちゃぐちゃになっても大丈夫だから、いろいろやってみるといつの間にかうまくいっているはずだ。

ノールビンドニングは、サムループをどうするか、そしてワーキングループをどう拾うかという話に集約されると思う。この二点きっちりやれば、どんなステッチも怖くない。と思う。今のところは。

わからなくなったらまずサムループ。次にワーキングループの拾い方を確認していくといい。

さて、これで準備OK。

あとは、作り目を作り、実践していくだけ…!

…なのだが…

毛糸が…

ちぎれない…

太くて強度があるので…

すごく手が痛い…

「あー、いてぇ…」

とか、つぶやく俺は…当然…笑っているわけでな!?

そう、ここでついに、奴の…彼の…毛糸ちぎり機の出番が!

yajul.hatenablog.com

ついにこの時が来たか!

毛糸ちぎり機!

頼む!

お前しかいない!

毛糸をきつく巻き付け、ドキドキしながら毛糸ちぎり機を握る!

 

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……もそっ。

 

毛糸は…ちぎれなかった…。

毛糸ちぎり機は…その力を発揮できなかった…。

もう少し、おおきく作れば、ちぎれたのかなぁ…。

一応半分くらいはちぎれたから、そのあと手でちぎったけど…。

言いようのない喪失感。

しかもそのあと、「手のひらに毛糸を巻き付けてちぎれば痛くないし、簡単にちぎれる」って発見してしまって…なんだか…こう…。

……。

しかし一応!きっちりときつーく毛糸ちぎり機に巻き付ければ、ちぎれるよ!

でも、その手間と、手のひらでちぎる手間だと、どう考えても、後者なんだよ!

すまん…本当に、すまない…!

 

胸の中を通り抜けて行く風に耐えながら、ぐるぐると縦縄編みをする。

割と行ける。これは表裏をひっくり返しながら縫っていく手法なので、もしかするとオースレーステッチのような表裏の模様が違うステッチは相性が悪いかもしれない。でもそこそこ、うまくいっている。

いっている。

途中でコーヒーをこぼしながら。

で、4時間くらいで編めた!

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どうだろう!?

…いや、わかる!

いいたいことはわかる!

なんだろう!?この、絶妙なコレジャナイ感!

しかも途中で縦縄模様をあきらめている!

そしてあきらめた先も、何か、あんまり、しっくりこない感じがする!

…多分、2色撚りの毛糸って、似合うステッチとそうじゃないステッチがあると思うんだよね。で、オースレーにはあわなかった。

そして、2色撚りの毛糸の圧倒的な自己主張に加えて、さらに縦縄模様という自己主張が追加され、そこにオースレーステッチというダメ押しの追加要素が来るという、全部のせ、足し算の暴力のマイケル・ベイ状態になっている!

圧倒的ベイ感!

ベイ感が分からない人は実写トランスフォーマーあたりを見よう!

画面はすごいんだけどすごすぎていったい何が起こっているのかわからないぞ!

結果、心に残るのは「マイケル・ベイを見た」という胸やけ気味のカロリー高めの感想だけだ!

そんなベイ状態が!今!俺の目の前に!

すごい。

ノールビンドニング+易+ベイ

北欧、中華、そしてベイ国のエッセンスが全部合わさった結果、ベイ感だけが生き残ってる。

俺はいったい何をやっているんだ…。

ベレー帽…これ大丈夫か!?

すごく不安になってきたよ…!