ノールビンドニング - コードループとコードステッチの両方を拾う縫い方 -

先月のニットカフェで、北村先生にぜひ教えていただきたかった縫い方があった。

それは表題の通り、コードループとコードステッチの両方を縫い合わせ、口を閉じる縫い方。

…文章で書くと何が何だかわからないのだけれども!

つまりはこういう風に縫うやり方のこと。

 

ノールビンドニングの上下の縫い方

 …出来上がりについては察してほしいところ。

いろんな人の作例を見ていくと、結構な割合でこの、「袋の口を閉じる縫い方」が使われているように見受けられた。

そういうわけでこの積年の疑問を、俺は始めてまだ数か月だが…、解決すべく質問をした!

 

先生「こう糸を通して、こっちから縫うんです」

俺「なるほど完全に理解しました」

              この間わずか5分

 

この理解力…!2か月前の俺とは別人…!

己の才覚が怖くなってくるな…!

これはいける!

帰宅後、さっそくやってみようとすると…

全然理解してねぇ!

なんという…ニセモノの理解力…!

たぶんこれは誰にでもある、「その場では理解していたつもりでも、実際はめちゃくちゃ抜けていて全然できてない」というアレだ。これは別に知ったかぶっているわけでなく、その時は本心からそう信じているから厄介なんだよな。

己の錯覚が怖くなってくるな…!

とはいえ、説明を一度聞いて、理解した気分になったことは事実。

とすれば、微妙にボタンの掛け違いが起きているだけで、あと一歩のところまでは来ているはず。

後はいろいろ試して正解を見つけるだけのはずだ。

…と、思っているうちにあっという間に一か月が過ぎたんだけどな!

いやぁはっは!光陰は弾丸のごとしだぜ。これが30代の恐ろしさなのか…!?

時間という大宇宙の畏るべき法則の前に膝を屈しつつ、つい3日前にようやく、(たぶん)正しいやり方に到達したので、ここに書いてみようと思う。

果たしてこれが本当に正しいのかはいまだわからないが!

 

糸が通る順番を理解する

「テキトーでOK」とヴァイキング的にやってきた俺のノールビンドニングにも、ついに理屈を考える時が来たようだ。

「目数を数えましょう」というだけでも相当なハードルを感じていた俺にはかなりの試練。このそびえたつ試練の断崖に俺は挑まねばならない。いやそこまでではないんだけど。 

ノールビンドニングで作り目から数目編んだもの

こちらがおなじみのノールビンドニングの…なんていうんだろう、ええと、ループの塊?がある。これに名前付いてるのかな。

まずはこのループの中で糸がどういう風に進んでいるかを理解してみよう!

ノールビンドニングの糸の流れ

普段何気なく縫っているけれども、縫い終わった後を見て糸がどう進んだか逆算するのは案外ややこしい。

ややこしいけれど、理解してしまえばとっても簡単。

そして一度理解してしまえばノールビンドニングが格段にやさしくなる、と思う。どこかがたわんだり緩くなったりしても、どこを引っ張ればもとに戻るかすぐわかるからね。

それで、今回大事なのは①と②。 

①は普段は意識せずにいきなり②から針を進めているんだけど、今回大事なのは①のところで向こう側の、閉じたい部分のループを拾うこと。

最初にコードステッチ側(親指の上側)のループを拾って、次にいつものようにコードループを拾って、ワーキングループを拾うという順番になる。

言葉で説明するのは難しいな!

 

先に上側を通して、次に下側

というわけで、この緑の糸で作った袋を、白い糸で閉じてみようと思う!

 

ノールビンドニングの作りかけの袋

白い糸で作り目を作ってこの袋の口の上下を縫っていくよ。

ブロディエンステッチで!

上側を通した

まず上側を通す。

この時、下から通すか上から通すかはどっちでもいいと思うんだけど、下側からのほうがいいのかなぁと思う。ここは悩むところだよね。

でもフェルティングすればあんまわかんなくなるからへーきへーき(ヴァイキング的おおらかさ)。

糸を通しきった

上でも書いたように、この上部分が一番大事になるね。

針で糸を完全に通してしまったほうが分かりやすく、またきちんと閉じられるので、糸を通しきってしまおう。

糸を親指にかける

上に通した糸を、写真のように親指にかける。

これをやっておかないと、意外と混乱するので、ゆっくりと正確にやった方がいいな!

俺は以前、ここをテキトーにやっていたから混乱してしまったんだと思う。

以前、北村先生が言っていた「ゆっくりやるといいですよ」という助言の意味が分かった気がする。ゆっくりやらないとダメなやつだこれ。

 

次に、下側。

下側を拾う

下側から先はいつもと同じだから、あまり迷うことはないと思う。ゆっくりね。

 

ワーキングループを縫う

なかなか縫いづらいけど、ゆっくりやれば大丈夫。曲がった針を使ってるとここが結構楽。曲がり針はいいぞ。

やりにくい場合は、上側と同じく下側も糸を完全に通しきってからやるといいと思う!

…でもこれロシアンステッチとかターニングステッチだと結構苦労するよね。

フィニッシュステッチはそのあたりユーザーフレンドリー。

 

出来上がり

 

無事に糸を通したら、出来上がりを確認する。

…汚いな!

すまない!

後はこのまま縫っていって、最後まで来たら少し多めに縫って、余分な部分を裏側に押し込んだり、あるいはひっくり返して隠したりすればOK。この辺はヴァイキング的に。

 

以上が袋の口を縫い付ける方法の説明でした。

…正直なところ、あんまり自信はないんだけどね!

でも見た目それっぽくなってるから、まずはこれでいいかなと。

 

何かの参考になれば、と!

 

 

 

ノールビンドニングのチュートリアルとして、こんな記事も以前に書きました。

 

yajul.hatenablog.com

 

依って立つモノ

ゼノブレイド2に引き続きハマっている俺ですけれども。

やー、やはり、こう、王道のボーイミーツガールなRPGはいいよね。ちょっとホムラちゃんとヒカリちゃんの格好が心配になってくる感はあるけど。すごい露出。未だに慣れないが!

ゲームとしては非常に、もう最高によくできているんだけどね。

ちょうど今は中盤に入ったところだけど、まさにこのゼノブレイド2は、かつて俺たちが愛したRPGの典型的な道程をなぞっている。

つまり、

  1. 主人公の生活が描かれる
  2. 大変な事件が起こり、主人公は旅立つ動機を得る
  3. 旅の途中で出会う仲間が割と国家の重要人物だったりする
  4. 主人公の旅の目的が世界的な問題の解決につながることが示唆される
  5. 幾たびの挫折を経て、大きく成長する主人公
  6. このあたりで熱い男が雄々しく戦死する
  7. 己の精神との戦いに勝利した主人公は最終的な問題の解決に乗り出す
  8. 怒涛の如く伏線が回収され、ラストバトルへ挑む
  9. 大団円

こういったフォーマットで進んでいくことの安心感と、王道をやりきらんとするその姿勢に俺は完全にやられてしまっているのだが。

ただ、かつてのごとく無邪気に楽しめるかというと、やはりそうではなくなっている。

なんといっても俺は大人になっているからな!

例えば、今回のゼノブレイド2では難民問題がさらっと描かれる。

二国間で戦争が起こり、敗北した側の国民が難民となって周辺国に流入しているというわけなんだけど、その難民キャンプを見た際のキャラクターの言動に、少しばかりの違和感を覚えた。

話の流れとしては、

  1. 難民が発生している
  2. 難民に対する支援は手厚く、広場をキャンプとして開放し、食料も無償で配給している
  3. しかし難民は仕事をしたりその国に根付いたりはできない
  4. そこで難民の中から、この戦争の遠因となる強力な武器への反対運動が起きる
  5. その様子を見て、あるキャラクターは「生活の保障をしてもらっておいて見当違いの文句を言っている」「ほかにやることはないのか」というようなことをいう

確かにこれはその通りかもしれない。住居と食料と安全を保障してもらっているのに、その上さらに何か要求するのは、弱者の立場に甘え利用しているように映るかもしれない。

「お前はゲームに何をそんなに熱くなっているんだ」と思われるかもしれないが、割とこれは日常そこら中にある問題なので、ふとそこでゲームを止めて考え込んでしまった。

このことでそのキャラクターに対する好感度が変化したりはしないのだが(好きなキャラだしね)、これはなかなか答えを出すのは難しい。

俺は、人間は状況によって大きく変わるものだと思っている。

「弱い人間」「強い人間」がいるわけでなく、「弱い状態」「強い状態」があるだけだと思う。強さは環境に与えられたものだ。多くは。だから今自分が強い状態だからといって、「自分が強い」と思ってしまっては見誤る。

特にこういう難民問題は(ゲームの内外かかわらず)状況の力が凄まじい。

人間は「ここが俺の生きる場所だ」と確信しないとポジティブには動けない。

仕事もそう。「自分はこういう風にお金を稼いでいこう」と心に決めなければ、パフォーマンスは上がらない。これはまさに2500年前に俺たちの孔丘先生が「四十にして惑わず」といったのと同じだ。あの孔丘先生ですら「俺はこの道でいいんだ」と心を決めるのに相当な時間を要している。逆に勇気が出てくるな!

難民の場合は「ただ一時的にそこにいるだけ」なので、例えば住環境をもっとよくしようとか、仕事を生み出そうとか、クリエイティブなことをしようといったパワーは削がれ続ける。ここが難民問題の一番難しいところだと思う。

何かを生み出そう、始めよう、今は不便だとしても改善していこうというエネルギーを生み出す場を作るというのは実は相当に難しく、また得られた人はラッキーな状況であるのだと思う。

そういうわけで

ここのところ…俺の内にはパワーが…圧倒的なエネルギーが不足していたのかもしれない。

具体的に言えば…ノールビンドニングの新たなネタが浮かばない!

作りたいものはたくさんあるんだけど…「ではやるか!」という情熱が少しばかり失われていたのかもしれない…!

作り始めても、何かの拍子に「いやこれは違う気がする」と思い始めてしまうという恐ろしい状況。

これは…何か良くないな!

そういう時はあえて無理をせずに、己の中の情熱が元に戻るまで適当にブラブラしておくに限る!というわけで、ここ2週間ほどひたすらブラブラしてたんだけど。ネットの中でね。

そうしたら!

見つけたぜ!

俺の生きる道が…!

いや生きる道とかそういう大げさなものではないんだけど。

今の自分にできることで、なおかつテンションが上がるものが!

それは、Haithabu Bag !

ヘーゼビューバッグ

ハイサブバッグじゃなくて、ヘーゼビューバッグと読む。

デンマークヴァイキングが居住したヘーゼビューに残された、ヴァイキングたちの日用品。装飾的に削られた二枚の木の板に穴を空け、そこに片方から紐を通して自動的に閉まるようになっているバッグ。

…これだ!

木工とノールビンドニングが融合し、俺のテンションも上がるこのバッグ。

これで…財布とノートを入れるミニショルダーバッグを…作ってみようじゃないか…!

どうにも「作るべきもの」に囚われていた最近の俺にとって、この「はやく作りたいもの」の出現はまさに僥倖、渡りに船となった!ヴァイキングだけに。

早速今日、木の板を割って手ごろな大きさにカットし、どういう形のバッグにするか楽しく悩んでいるところ。

 己が依って立つ物が存在することに感謝をしつつ、ゼノブレイド2の合間を縫って、やっていきたいと思う。

…今週末はニットカフェだからな…!

ゼノブレイド2のトラとハナ

俺はロボットが好きだ。

いや現実の、技術的経済的な意味でのロボットではなく、物語としてのロボットが俺は好きだ。それはもう、大変に。

きっと同志は多くいると思う。

古くはギリシャ神話のピグマリオンや、オランピアに恋したホフマン、理想の人間を創造せんとしたフランケンシュタイン博士がいるように、古今を問わず、「創造主としての人間、被造物としてのロボットのストーリー」は俺たちの心をつかんでいる。と俺は思う。

そういうわけで、12月1日に発売されたNintendo Switchゼノブレイド2について語ろう!

…何でそうなるんだよ、と思われるだろうが!

少しばかり、俺の話を聞いていってほしい。 

そもそも、ゼノブレイド2とは何か?

と、そのあたりから順を追って説明していこうと思ったんだけど…そうすると記事の長さが途方もないことになってしまう。俺としては望むところだが!

しかしさすがにそういうわけにもいかないので、

他の全てを圧倒して俺を魅了した要素について書いていきたいと思う!

だからたぶんこの記事ではゼノブレイド2のことはあんまりわからないと思うが!

すまん!

一言でいえば最高のゲームなので、「面白いRPGがやりたいな」と思ったときにはお勧め。すごくいいゲームだよ。王道ストーリーはいいものだな!

しかし俺がここに書きたいのはそういうことではない。今はな!

俺が声を大にして言いたいことは…

トラとハナが最高に愛しいということ

ゼノブレイド2トラとハナ

この二人な!

…もっといいスクリーンショットがあればよかったんだが!

(画質はSwitch側でSNS投稿用にかなり圧縮されるので、実際のゲーム画面はもっと綺麗だぜ)

 手前の…もふもふした耳なのか手なのか羽なのかよくわからないのが生えてるのがトラ。ノポン族というゼノブレイドシリーズのマスコットみたいな種族。

奥にいるロボ娘がハナ。

ゼノブレイド2ハナ起動

もうなにから説明すべきかわからないくらいなんだけれども!

まず、このゼノブレイド2は、

ブレイドに選ばれた存在はドライバーと呼ばれ、ブレイドから武器と力を受け取って尋常ならざる力を発揮する」

 というのが根幹をなしている世界だ。ちなみに前作とは特に繋がりはないので、前作とは設定が異なる(どこかでつながるかもしれないが)。

…これだけじゃ絶対わからないな!

要するに、ジョジョのスタンドと似たようなものということだ。

つまり、ブレイドというスタンドみたいなものと偶然同調できた者がドライバー(スタンド使い)になれる、ということ。

だからこの作品では、ドライバーとブレイドの二人一組が基本となる。敵も味方も。お互いが欠けてはならぬパートナーとして戦っていくわけだな。

なので、ゼノブレイド2はパーティ人数は3人だけど、ブレイドを入れると総勢は6人という大変な大所帯で移動、戦闘することになる。めっちゃ賑やかだぜ。

それでこのトラとハナは

トラがドライバー、ハナがブレイドということなんだけれども…。

トラには生まれもってのドライバー資質がない!

そしてハナは、トラが作った人工ブレイド、つまり単なるロボット!

ドライバーとブレイドっぽく戦ってるけど、実はトラは普通の一般人(?)で、ハナもブレイドの真似をしているだけ!

もうこの時点で、熱くこみ上げてくるものがあると思う。

少なくとも俺には大変にストライクだが!

 

盾ドリル

天性の資質に恵まれない者が、努力と執念で乗り越えて行くというストーリーと、

自分の理想の存在を自らの手で作りだすというピグマリオン的なストーリー。

この二つを併せ持ったこの二人がもう最高でね!

また二人の性格もとてもいい塩梅というか、なんだろう、見てて「あぁ、この二人は信頼しあってるんだなぁ」というのがありありと見えて、涙腺に来るというか…。

ゼノブレイドシリーズは戦闘が非常に賑やかなのが特徴で、戦闘中に味方が何をするのか、どういう状況なのかを声で聴いて判断するというのがある。もちろん画面表示にも出るんだけど、セリフを聞いた方が早く的確に状況を把握できる。それが今回はドライバー3人+ブレイド3人の6人分なので、そこらの雑魚戦(といっても結構歯ごたえある)でもなかなか忙しい。

その乱戦の中でもこの二人は何か、こう、特別に愛らしいというか、トラを守ろうとするハナと、ハナに感謝するトラの声が常に聞こえてくるので、好感度が半端ではないことになっているわけだよ。

説明が難しいが!

トラの役割は基本は盾役なので、敵から一番ダメージを食らう。

つまりその分だけハナが頑張る。

ハナの頑張りにトラが感謝する。

その二人のおかげで勝つことができる。

という最高の流れになっていくわけで。

ハナライズ

また個人的に、ハナの性能をカスタマイズする画面の雰囲気が「ワンダープロジェクトJ」シリーズのようなのがポイント高かった。こういう画面、好きなんだよね。画面というか絵が。

ワンダープロジェクトJ」シリーズ(といっても二作だけだけど…)はまさに「ロボットの成長を見守っていく」ものだったし、もう続編は望めないワンダープロジェクト要素をほんの少しでも垣間見られたのはとても良かった。

 

ハナとトラ

 ハナは自分と一緒に戦うのでなく、自律戦闘したほうがいいんじゃないかと悩んだり、何かあるとハナの体を心配したり、自分の創造物ではあるけれど一個の独立した存在として会話した理心配したり感謝したりするトラがとても魅力的。

普段はノポン族らしくお調子者だけれど。

前作ゼノブレイド1のノポン、リキは序盤と終盤で「リキ(笑)→リキさん」と評価が激変したけれども、今回のトラはもうなんか最初からトラさんというか、いやもうトラさんを超えて一周まわってトラだなみたいなそういう状態だな!

何か、わけがわからない話ですまない。

従兄弟作ともいえる「ゼノブレイドクロス」では、キャラクター描写がちょっとなぁ…という感じだったから、今回の丁寧に描写されていくキャラクターたちはとても好ましい。

まぁちょっとホムラちゃん露出しすぎじゃないかとか、ビジュアル的なアレはあったけれども、早くも慣れてきたから問題はなくなってきたな!

というか、服装やビジュアルよりも表情がよく動くのでむしろそっちが魅力的かもしれない。全員、表情がよく出てる。

ハナはロボットだから表情は動かないんだけど、周りがよく動くから「ハナは動かないんだな」とはっきりわかるようになっているという演出も上手いなと。

ハナの表情は動かない

表情が動かない分、ぎこちない歩き方や、全くセンスがないダンスなど動きが面白いので見飽きることがないし。

 

この二人はパーティから外さんぞ…!

 

 

 

ヴァイキングのように角を

金属の針を作っていたちょうどそのタイミングで、友人から

「水牛の角のかんざしをなくしてしまったので、かんざしを作ってほしい!」

と頼まれた。

…角!

ちょうど「かんざしにも使えるかも」と針を作りながら思っていたところだし、何より今、俺の中で角は一大ブームとなっている。

これは…何か運命のささやきが…聞こえてきた感があるな!

しかし鹿羊ではなく、ついに水牛が登場した。

さすがに水牛は日本にはいない。なので、なかなか入手には苦労しそう。これはやりがいがあるな…!またしても、RPGのごとくドロップアイテムを探す日々が来るというのか…!

友人に「水牛の角を入手するまで少しの時間をくれ!」と返信。「いや別に水牛じゃなくても…」というかぼそい声は俺に届かなかったことにして、俺は、俺のために水牛の角を欲したわけだよ。

 

しかし水牛の角はどうすればいいのだろう。

こればっかりは「水牛の角が道端に落ちてたらとっておいてくれ」と頼めるものではない。さしものバイク野郎(鹿の角を拾ってきてくれた男)でも、水牛の角が落ちてるところに遠征にはいかないはずだ。

そういう時はオークションやメルカリを見てみる。きっとだれかが売りに出しているはず。

 

…長い前置きのわりにあっさりと見つかったんだけど、いかんせんお高い。いや、水牛さんを思えば高い安い言えないわけだけども、俺もひとつの生物として、自身の生存を脅かすほどの額は出せないからな…!

まぁ3000円くらいだったんだけどね。

しかしオークション等では取引と発送に時間がかかる。しかも実物を見れないので、どうにもなかなか、しっくりこない。ここがオンラインの痛し痒しな部分だぜ。

どうしようかなーと思いながら、リサイクルショップに立ち寄ると…

ノールビンドニング針やかんざしにつかえそうな水牛角

…あった!

俺の求めるものが…!

あっさりと!

もはや俺に見えるのはオブジェでなく素材。

頼むから研磨しすぎていないでくれと祈りつつ、後ろのちょっと(というかだいぶ)加工の甘い部分から角の中を覗き、ある程度の厚みが残されていることを確認する。

これならいける!

というか、リサイクルショップは素材結構あるな…!

この角の下においてある囲碁板も、削れば木材として使えそうだし。

古い囲碁板は桂の木の一枚板で作られているので、今や普通に貴重な木材だぜ。リサイクルショップでたたき売られてたらとりあえず確保しておきたいくらい。柔らかいから彫り物にも使えるよ。どうしてもちょっと古いイメージはあるけどね。

水牛の角

 何か…1000万パワー的なものを感じる威容だが!

さてこれを加工するためにはいろいろと道具が必要なので、手持ちの、いかにも日曜大工ですー的な道具たちではやや荷が重い。

そこで、今週末あたりにお世話になっている工房を訪ねてアドバイスをもらい…あわよくばちょっと加工させてもらおうかな…などと野心を燃やしつつ…!

 

しかし、角である。

角といえばヴァイキングだよな。ノールビンドニングでおなじみの。やや強引だが、気にしてはいけない!

ヴァイキングのイメージとしては角のついたとんがり兜の荒くれものというイメージだし、俺も大体そのイメージでノールビンドニングをやっている。荒くれものならこのくらい大丈夫だろ!?という精神で行う編み物はギャップが楽しい。

でも実際のところ、ヴァイキング角の着いた兜を被っていたわけではない

ヴァイキングは角のついた兜を被っている」

というのは、

「NINJAは分身したり、カエルに乗ったり、赤いマスクをつけてたり、睨み付けただけで相手を倒せる」

みたいな、後世によるイメージづけの結果だったりする。およそ19世紀の絵画からヴァイキングに角がつけたされ、20世紀初頭でそのイメージが定着し、日本においては「小さなバイキング ビッケ」が果たした役割が大きいらしい。俺は見たことないんだけどね。

それにヴァイキングは実用を重んずる民(だと思っている)ので、彼らがそんな無意味なものを付けるのか?という感じもするし。

ヴァイキングを描いたマンガ「ヴィンランド・サガ」の登場人物も、角兜は被ってなかったように思う。うろ覚えだけど。トルケル様のファンです。

で、実際にヴァイキングたちがどういう装備をしていたのかという話だけど、これはお墓の遺跡の中から見つかった副葬品から明らかになっている。

有名なのはヴェンデル船葬墓群

Vendel - Wikipedia

こちらは英語版のWikipediaだけれども(日本語版にはそもそも項目がない)、兜の写真が載ってるのでイメージはつくと思う。もっとも、この遺跡はヴァイキング時代の2世紀くらい前の「ヴェンデル時代」のものなので、ヴァイキング時代となるともう少し変化はしたかもしれない。

ヴェンデル船葬墓群については、こんな論文があって勉強になった!

NAGOYA Repository: ヴェンデルとヴァルスイェーデ―スウェーデン・ウップランド地方の二大船葬墓群

 

そういうわけで、「角を使うこと」、そして「ヴァイキング的なクラフトをするということ」に仄かな関係性を見出し、またちょっとテンションが上がったというわけさ。

 

 

…で、ね。

調べているうちに、どうも何か…既視感を感じていたのだけれども!

その正体がわかった!

お姉さんだ!

俺の愛する…いや変な意味ではなくな。

ノールビンドニングのお姉さんに、俺はすでに「ヴェンデル」について教わっていたわけだよ!

https://www.youtube.com/watch?v=Z75fzywSNs8


Vendel Stitch - Neulakinnas, Nalbinding

 ヴェンデルステッチという形で!

すごく納得した!

それはそうだ!

だって、「日用品も含めた副葬品がたくさんあった」ということは、当然のこととして!ノールビンドニングで作った服なんかもあったはずなわけだよ!

そしてそこで見つかったステッチには、その場所の名前がつけられる!

だから、ヴェンデルステッチはヴェンデル船葬墓群から見つかったステッチというわけだな!?

毛糸のど真ん中を通すという角を生やしたヴァイキング的イメージそのままのステッチ!

Other / Vendel | Neulakintaat

それでも出来上がった編み目はとても綺麗。

おそらく…ヴァイキングの歴史を勉強していくと、あちこちでノールビンドニングのステッチ名が登場することになるのだと思う。

ノールビンドニングのステッチ名は地名から取られる慣習。ステッチが見つかるということは、そこに文化の残滓があったということだから。

 

楽しくなってくるね!

 

 トルケル様の雄姿について夜を徹して語りあいたい。

ついに金属に手を出してしまった

ノールビンドニングをやっているのか、ノールビンドニング用の針を作っているのかわからないくらい両者を並行してやっている気がする。

そしてこの度、ついに、金属に手を出してしまったよ…!

このままあらゆる材質に手を出してしまいそうな勢いでは、あるな…!

次は石材…鉱石を使って針を作りたいとか思い始めている!

もともと、金属で作るつもりはなかった…というか、木材石材はともかく、金属はさすがに俺の手には余るだろうと完全な及び腰を見せつけていたのだけども、最初のニットカフェで北村先生に針を見せた時に先生が何気なく言った一言

「金属では作らないんですか?」

 という言葉が、俺の心に、抜けない針となって残ったというわけだよ!

呪縛…!

まさに…!

おそるべき制約が…!

しかし呪縛の有無にかかわらず、いつかはここにたどり着くような気はしていた。研磨の魅力に目覚めたその時からな…!

 

そういうわけで、今回は加工しやすい真鍮の丸棒を削り、ノールビンドニングの針に仕立て上げていこうと思う。

どうでもいいけど、真鍮って英語で「brass」っていうんだね。

ブラスバンドはつまり金管楽器のバンドだということだったんだな。

ノールビンドニングの金属針 表面を少し削って平面を出し、穴を空ける

まずは穴を空けるわけだけど、真鍮の丸棒にいきなりドリルで穴を空けるわけにはいかない。ドリルの先端が滑ってしまうからな!

なので、まずは大雑把に削って面を出してから、ドリルで穴を空ける。この時まっすぐにドリルを入れないと、ドリルを折る羽目になる。俺は一本降りました。

削る際には当然、ディスクグラインダーを。

…まぁいつものごとく、穴の位置がずれてしまったが…!

こればかりはどうしようもないな!

糸鋸で真鍮を切る

 そしてある程度まで削れたら、糸鋸で切る。

真鍮は切れる!

ただ、これは削る際もそうなんだけど、あんまり激しくやると摩擦熱が伝わって削ってる部分からかなり離れた持ち手もめちゃくちゃ熱くなることがあるので、そこは注意が必要。特に銅なんかはすごいよ。ドリルで穴を空けてただけなのに、いきなり熱くなったからね!

グラインダーでざっくりと形を大きめにとって、やすりの番手を上げていく。

36番のグラインダーで削り、100番で形を取り、400番で凹凸をならして…という感じ。

 しかしこれ、鉄粉が相当出るので、気づかぬうちに来ている服が真っ黒ということになるので、注意が必要。

特に眼鏡をかけている俺は、うっかりすると眼鏡に鉄粉がくっついて、拭くときにめちゃくちゃ傷がついてしまうので、作業中はゴーグルと皮手袋は必須だね。

金属加工は楽しいけど、やっぱり怖いよねー。

破片が飛び散ると、デニムパンツ越しでもめちゃくちゃ痛いし。

あまり…やりたいものではないな!

ある程度仕上がってきたら、あとは前回と同じく…ミニルーターコンパウンドで鏡面仕上げをする!

金属の場合、削れた鉄粉でば府が真っ黒になる。びっくりするかもしれないけど、黒くなるということは削れている証。研磨のためなら、俺は喜んで黒くなる覚悟さ…!

しかし研磨は楽しい。

やればやるだけ確実に成果になる。

そんなものがこの世の中にどれほどあるだろうか…?

俺も…報われぬ努力に身を沈めてきた男。

やればやるだけ光っていく真鍮に涙しつつ、ひたすら研磨していく。

ちなみにミニルーターのバフは、意外にもダイソーの100円バフがコストパフォーマンスが高い。おすすめ!

 

真鍮製ノールビンドニング針

 そして、真鍮のノールビンドニング針が完成!

写真ではわかりにくいけれど、すごく光っているよ!

…まぁ、若干、こう、細かな傷は消せていないのだけれども!

長さはおよそ15cm、幅は6mm、一番厚い部分で3mm。俺としては標準的な形になったと思う。

…ただこれ、重いな結構!当たり前だが!

金属だしな!

だからたぶん、あまり長時間使うと意外と疲れるかもしれない。特に女性の場合。

金属針の場合はもっと薄くしていくのがいいのかなぁ。

まぁ、使わなかったら、これはかんざしとしても使えそうだし。いや俺はかんざしt使わないけど。誰かに。

とりあえずこれで何か作ってみようと思うよ!

さ、最近全然縫ってないからな!

羊角クラフト - 研磨という魔力 -

前回、羊の角でノールビンドニング用の針を作り、800番の紙やすりをかけるところまでいったんだけど。

通常の木工であれば800で十分すぎるくらいなので、これまでは800番以上のやすりをかけることはなかった。

もちろん、1000、2000までやすりをかける人もいるんだけど、まぁDIYの領域でそこまでやる人はまれと思う。とにかく、俺はやっていない!

しかしねんがんの羊の角を手にしたからには、可能な限り美しく仕上げたい。

そこで…およそ20年ぶりくらい*1に、鏡面仕上げの世界に再入門することにした…!

鏡面仕上げというのは主に金属研磨の世界で使われる言葉だけど、研磨に研磨を重ねて鏡のようにすること。上で書いた800番とか2000番という「やすりの番手」は、やすりの目の粗さを示す数字で、数字が小さいほど荒く、大きいほど細かい。一般的な紙やすりのイメージは大体120番くらいではなかろうか。だいたい、600番くらいまでが普通レベルで、700以上が仕上げレベル、3000以上はこだわりと趣味の世界みたいな感じ。

研磨、というと多くの人は「そんなのやったことないしー」と思うかもしれないんだけど、実は研磨をやったことがない人はまずいない。むしろいない。この世に生きる人は研磨をしながら毎日を生きている。や、切磋琢磨的な比喩ではなく、物理的な。

例えば歯磨きも立派な研磨だし、お風呂掃除も、皿洗いも、床掃除も、体を洗うのさえ研磨といえる。何かをゴシゴシこすって綺麗にするという意味ではどれも同じ。研磨の最終工程で「バフをかける」なんていうんだけど、ようにするにこれは「布でゴシゴシこするよ!」ということだ。何か研磨が身近になってきたでしょ?

で、早速鏡面仕上げに入るので…

お風呂に入る!

いや、「物事をなす前に身を清める」っていう刀匠みたいなことではなくて、お風呂で削る。

風呂で!?と思われたかもしれないけど、今回の研磨作業の時はお風呂が一番いいと思った。水に濡らしながら研磨する「水研ぎ」を、特に何も準備せずに行えるし。羊の角はたんぱく質なので、パイプに引っかかっても髪の毛溶かすやつで一緒に溶けてくれるからね!

耐水紙やすりを持ち込み、半身浴をしながらひたすら削る。心と体と羊の角がきれいになるというシナジーがありつつも。30分くらい半身浴ついでに研磨する。

 

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そして仕上げは…車用の研磨剤(コンパウンド)!

おそらくどこのホームセンターにも売っている、カー用品店なら間違いなくある、この研磨剤。

車用じゃねーか!

とおもうかもしれないけど、研磨剤は研磨剤。何に使っても、いいのだ…!

今回はそんなに量を使うわけじゃないから、このくらいの量で3つセットになっている車用の研磨剤はとても便利。一晩細かいもので1ミクロンの研磨剤なので、番手にするとおよそ8000番。これだけやれば、相当な光が…差し込んでくるに違いない。

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風呂場での手研磨に体力的な限界を感じた俺は、早速文明の利器に頼ることにした。ミニルーターである。ちなにみ「ルーター」というのは5kgくらいのものすごいゴツイやつなので、ちゃんと「ミニルーター」と分けて呼んでおきたい。いや本当にごついからね!ルーターは!

ミニルーターは削り、穴開け、研磨、ガラスや金属切断、彫刻(ガラス彫刻も)とマルチに使える大変素晴らしい道具で、これがあるとDIYライフが飛躍的にパワーアップするので、余裕と今後の野心が十分にあるのなら、一個手元に置いておいてもいいと思う。研磨に限れば3000円くらいのやつでも大丈夫。ミニルーターで穴開けは正直きついおで、穴開けメインの人は素直にドリルドライバーにしよう。

で、この車用のコンパウンドを、ミニルーター用のバフ(100円ショップで売ってるやつで十分)につけるんだけど…たくさんつけすぎると飛び散って大変なことになるので、ほんの少し指に取って、バフにこすりつけて浸透させる。これで飛び散らない。

あとはひたすら研磨!これがめっちゃ楽しい。ミニルーターはいいぞ。

研磨のコツとして、右利きの場合は向こう側からこちら側にスプーンですくうようにかけて行くといい。あまり一か所に強く押しつけると、バフが焦げたり、今回は羊の角も焦げるので十分注意して。金属部品の場合は熱が半端なくなるぞ!

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穴の部分は…綿棒で対応する!

…いいんだよ!

綿棒の太さがちょうどミニルーターの軸受けに入ったので、お高いミニルーター用のビットを買わずに済ませることができたぜ…!

意外にも綿棒は軸ブレが少ないことが分かった。綿棒になぜそこまでの技術を…!

さすがに綿棒だけあって、研磨の際のヘリがすごいことになっているけど、交換の手間を惜しまなければ全部綿棒で行けるのかもしれない…!

さて、これでおよそ8000番のやすりをかけたことになり、なかなかのツヤが出てきた!

このまま完成、ということでもよかったんだけど…ホームセンターでこんなものを見つけてしまった。

f:id:yajul_q:20171123150802j:plain驚異の15000番。

もはや普通のフィルムにも思える滑らかさ。

でも確かにちょっとだけキュッとする…。

ここまで来たからにはやるしかないな、とばかりに削って?いくんだけれども…

削れてるかどうかわからない!

わ、わからない!

削りかすなんてでないし、これは…綺麗になっている、のか…!?

わ、わからない!

試しにそこにあった真鍮の棒を削って?みたら、確かに黒い鉄粉がついたので、削れてはいるのだろうけれども…

わからない!

俺の目は…節穴だったというのか…!

でもなんとなく…心の目で見ればそれなりに…より美しくなっているような…

気がしなくも…

羊の角のノールビンドニング針

ないということにする!

写真ではわかりにくいけど、いやぁなかなか、綺麗になったよ。

ちょっとオレンジ色っぽいかんじかな。

羊の角の先端なので微妙にねじれているんだけど、それが以外に手にフィットするから、これは使いやすいかも。

うっすらと光が透過して綺麗だし、今回はきちんと毛糸が通る溝を作ったから、縫いやすいはず!

とりあえずこれで、中断していた帽子作りを再開せねばなるまいね!

 

 

とか言いながら…

研磨の魅力に目覚めてしまったので…

 

 

ついに金属に手を出してしまうという!

この金属針の顛末については、また次に書きたいと思う。

ぼ、帽子を完成させないと…!

 

*1:子供のころはガンプラ少年で、MAX塗りとかやってました。キュベレイを8体くらい作ってたよ。

羊角クラフト - アンドロイドならずとも羊の夢は -

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11月19日にpresseさんで行われたニットカフェに参加してきた!

参加はこれで二回目なんだけど、何せ俺は編み物の基本を全く知らない男。果たしてどういうスタンスで参加するべきなのか未だわかっていないという、圧倒的借りてきた猫感を醸し出しつつの参加だったけど、今回も楽しかった。

しかし大丈夫かな!?俺が参加していても!?

という一抹のモノはありつつも、今回は北村系子先生から羊の角を譲り受けることになっていたのでひるんでいる場合ではない。羊の角という魔性のアイテムが俺を突き動かすわけだよ。欲望というのは、果てしないからな…!*1

この羊の角は、北村先生がノールビンドニング用の針を作った残りの部分なんだけど(大変すばらしい針だった)、それを幸運にもいただくことができた。さすがに残りの部分だけあって加工しにくい先端部分だけど、何せレアアイテムだしな!細かい破片はボタンにすることもできるはず。

写真の右側にある太い奴は鹿の角。これももらうことができた。この部分は気合を入れてドリルで穴をあけることにより、指輪として利用することが可能。…相当な気合が必要なので、なかなかやる勇気は出ないのがつらいところだが!

この羊の角は長さは約12cm。俺が普段使っている針よりかなり短いけれど、その分曲がりが強いので、ロシアンステッチやターニングステッチなど針をひねる動作が多いステッチに向いた針を作ることができるはず。

そういうわけで、さっそく加工をしてみよう!

 

…と、意気込んでみたものの、ちょっとこれは想像以上に短い!

や、「短くなりすぎて使えないから」ということで譲り受けたので当然なんだが!

これをそのまま全部削って1本の針にするのはもったいなさすぎる。できることなら子の角を半分か4分割して、数本の針を作りたい。

しかしどうすれば、この短すぎて押さえつけることができない角を切り出すか?

当然、電動工具は使えない。

下手にやったら指が飛ぶからな…!それは避けたい。誰だって避けたいと思う。君が避けたいように。

なので必然、糸鋸で地道に切っていくことになるんだけど…。

角は硬い。

この当然の事実が俺に実感となって襲い掛かってくる。そうだ、角は硬いんだ。いやぁ、角は硬い。硬いんだよ。

だからこの圧倒的硬度を誇る角に、貧弱な糸鋸一本で立ち向かうには相当の時間と、肉体的な疲労を要する。それは避けたい。君が避けたいように。

かといって、糸鋸盤があるところまで行くのもちょっと大変。この雪だし。それは避けたい。…そのくらいの手間は惜しむなよという声は聞こえるけれども!

そこで、ちょっとした力業でやることにした。

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男の武器、ドリルを使ってな…!

切りたいところにあらかじめドリルで穴を空けまくり、糸鋸で切る距離を大幅に減らそうという計画…!まともにこの距離を糸鋸で切るとなると大変だけど、ドリルの間隔だけ切っていくのなら精神的にも、物理的にも楽だ。それに、切りやすくもなるからね。

途中でドリルが折れるというハプニングはあったものの、すべて穴を空けきることができた。

ドリルは偉大。

みんなもっとドリルのパワーに目を向けるべき。

あとひたすら切っていくだけなんだけど…俺には一つの懸念があった。

ニオイである。

 以前鹿の角を加工したときに…削ったときの硫黄の臭いに苦しめられた記憶が俺の手を止める。大丈夫なのかこれ…。鹿さんはあんなだったけど、羊さんはどうなんだ…。やっぱり同じなのか…。

恐る恐る鋸をひいていくと…

確かにニオイが、する!

…しかしこれは、鹿の角より臭くない!

確かに同系統のケラチンを燃焼させたニオイだけれども、何か香ばしい…どこかで嗅いだニオイが…!

 

これはスルメだ。

 

スルメの匂いが、する!

スルメイカを焼いた匂いが…!

マスクの上にスヌード(作ったやつ)をまいて完全に防御したが、スルメ臭ということなら話は別だ。俺はスルメを愛する男だからな…!

角クラフトをするうえで最大の難関をクリアした今、もうなにも止めるものはない。

よく見れば、羊の角の部分はどことなくホタテの貝柱っぽいアトモスフィアがあるしな…!

これはいける。

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そんなこんなで、切れた!

時間的には20分かかってないように思う。大分楽をすることができた。

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こちら断面図。

雪からの照り返しがキツいのでちょっと色がわかりにくいかもしれないんだけど…

なんか、美味しそうじゃないか!?

貝柱とクリームチーズみたいな…。

貝柱にクリームチーズは正直どうなのよと思わなくもないが、あらゆる食材にあうのがチーズの恐ろしいところだし、きっと美味しい。

誘惑に負けて、実はちょっとかじってみた。

 

…何か、こう、確認せねばならない気がして…!

 

味は当然ながら、なかった。感覚的には爪をかじるのに近い。いや羊の角も爪と同じ成分だから、その通りだともいえるんだけども!

や、でもこれ、美味しそうじゃない?本当に。

…俺の主張が受け入れられるかは別にして、この二つに割った角をさらに分割する。

またドリルで穴を開けて…

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 今度は縦割りする!

さっきと違って、今後は一直線で切れるからとても楽。

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絶対に美味しいよこれ。

作業台の木切れがまな板に見えてきたよ。削りかすは塩に!

どうでもいいんだけど、強烈に硬いかぼちゃを切るときにはのこぎり使ってもいいと思う。電子レンジで温めても結構硬いぜ、あれ。もちろん、木を切った後のを使えとは言わないから。一つの可能性として。

で、ここまで来たら後はいつもの工程。

ドリルで穴を開け、ディスクグラインダーで大まかな形をとっていく。

だいたいの形になったら、180番くらいの紙やすりでディスクグラインダーのナイフマークを消す。そして後はやすりの番手を上げて 、美しく仕上げて行く。

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 こんな感じ。クリームチーズ部分は残したほうが綺麗だと思った。だが、残念ながらこの工程で美味しさは失われ、綺麗さだけが残った。個人的に、美味しそうな針になるかとちょっと期待をしていたのだが…!

とりあえず、800番までやすりをかけて今回は終了。というか俺、800番より上のやすり持ってないんだよ。木工だと大体800まで行けば十分だからね。

北村先生専属の羊角研ぎ師の方は、液体コンパウンドまで使用して研いだらしい。やすりも爪やすりでもOKだとか。確かに角と爪は同じだから、理にかなっている!

さらにその方の旦那さんはプラモデル好きだそうで、なるほど確かにこの工程はプラモデル感があってとても納得してしまった。プラモデルも、複雑な形のものを鏡面仕上げにしたりするもんなー。

俺もプラモ狂四郎で育った男として、一通りのプラモデル知識は持っている。当時は全く憧れなかったが、今の俺は模型秘伝帳・木ノ巻に大変なロマンを感じる。無敵球の茂合岩男先生に弟子入りしたい。なんで名前がモアイなのに見た目が油すましなんだ。

茂合岩男先生の雄姿についてはいつか熱く語るときが来るとして、羊角の仕上げはプラモデル方式でOKという勇気を得たので、今度の休みに出も材料を買いだしつつ、「ねんがんの羊の角の針」をこの手にしたいと思う!

*1:先日、国連で象牙取引に関して日本が名指しで批判された。なので象牙はたとえ手に入ってもちょっとやめておいたほうがいいと思われるね。ダメって言われたからやらないってわけじゃなく、こう、羊の角のように副産物としてとれるものと、それのために狩るというのではだいぶ状況は違うから。もちろん、問題になる前に流通している象牙についてはそこまで問題とはならないだろうけど、やっぱり心情的にね。鹿さんの場合は毎年生え変わるのでむしろ積極的に使っていきたいところだが!