羊角クラフト - 研磨という魔力 -
前回、羊の角でノールビンドニング用の針を作り、800番の紙やすりをかけるところまでいったんだけど。
通常の木工であれば800で十分すぎるくらいなので、これまでは800番以上のやすりをかけることはなかった。
もちろん、1000、2000までやすりをかける人もいるんだけど、まぁDIYの領域でそこまでやる人はまれと思う。とにかく、俺はやっていない!
しかしねんがんの羊の角を手にしたからには、可能な限り美しく仕上げたい。
そこで…およそ20年ぶりくらい*1に、鏡面仕上げの世界に再入門することにした…!
鏡面仕上げというのは主に金属研磨の世界で使われる言葉だけど、研磨に研磨を重ねて鏡のようにすること。上で書いた800番とか2000番という「やすりの番手」は、やすりの目の粗さを示す数字で、数字が小さいほど荒く、大きいほど細かい。一般的な紙やすりのイメージは大体120番くらいではなかろうか。だいたい、600番くらいまでが普通レベルで、700以上が仕上げレベル、3000以上はこだわりと趣味の世界みたいな感じ。
研磨、というと多くの人は「そんなのやったことないしー」と思うかもしれないんだけど、実は研磨をやったことがない人はまずいない。むしろいない。この世に生きる人は研磨をしながら毎日を生きている。や、切磋琢磨的な比喩ではなく、物理的な。
例えば歯磨きも立派な研磨だし、お風呂掃除も、皿洗いも、床掃除も、体を洗うのさえ研磨といえる。何かをゴシゴシこすって綺麗にするという意味ではどれも同じ。研磨の最終工程で「バフをかける」なんていうんだけど、ようにするにこれは「布でゴシゴシこするよ!」ということだ。何か研磨が身近になってきたでしょ?
で、早速鏡面仕上げに入るので…
お風呂に入る!
いや、「物事をなす前に身を清める」っていう刀匠みたいなことではなくて、お風呂で削る。
風呂で!?と思われたかもしれないけど、今回の研磨作業の時はお風呂が一番いいと思った。水に濡らしながら研磨する「水研ぎ」を、特に何も準備せずに行えるし。羊の角はたんぱく質なので、パイプに引っかかっても髪の毛溶かすやつで一緒に溶けてくれるからね!
耐水紙やすりを持ち込み、半身浴をしながらひたすら削る。心と体と羊の角がきれいになるというシナジーがありつつも。30分くらい半身浴ついでに研磨する。
そして仕上げは…車用の研磨剤(コンパウンド)!
おそらくどこのホームセンターにも売っている、カー用品店なら間違いなくある、この研磨剤。
車用じゃねーか!
とおもうかもしれないけど、研磨剤は研磨剤。何に使っても、いいのだ…!
今回はそんなに量を使うわけじゃないから、このくらいの量で3つセットになっている車用の研磨剤はとても便利。一晩細かいもので1ミクロンの研磨剤なので、番手にするとおよそ8000番。これだけやれば、相当な光が…差し込んでくるに違いない。
風呂場での手研磨に体力的な限界を感じた俺は、早速文明の利器に頼ることにした。ミニルーターである。ちなにみ「ルーター」というのは5kgくらいのものすごいゴツイやつなので、ちゃんと「ミニルーター」と分けて呼んでおきたい。いや本当にごついからね!ルーターは!
ミニルーターは削り、穴開け、研磨、ガラスや金属切断、彫刻(ガラス彫刻も)とマルチに使える大変素晴らしい道具で、これがあるとDIYライフが飛躍的にパワーアップするので、余裕と今後の野心が十分にあるのなら、一個手元に置いておいてもいいと思う。研磨に限れば3000円くらいのやつでも大丈夫。ミニルーターで穴開けは正直きついおで、穴開けメインの人は素直にドリルドライバーにしよう。
で、この車用のコンパウンドを、ミニルーター用のバフ(100円ショップで売ってるやつで十分)につけるんだけど…たくさんつけすぎると飛び散って大変なことになるので、ほんの少し指に取って、バフにこすりつけて浸透させる。これで飛び散らない。
あとはひたすら研磨!これがめっちゃ楽しい。ミニルーターはいいぞ。
研磨のコツとして、右利きの場合は向こう側からこちら側にスプーンですくうようにかけて行くといい。あまり一か所に強く押しつけると、バフが焦げたり、今回は羊の角も焦げるので十分注意して。金属部品の場合は熱が半端なくなるぞ!
穴の部分は…綿棒で対応する!
…いいんだよ!
綿棒の太さがちょうどミニルーターの軸受けに入ったので、お高いミニルーター用のビットを買わずに済ませることができたぜ…!
意外にも綿棒は軸ブレが少ないことが分かった。綿棒になぜそこまでの技術を…!
さすがに綿棒だけあって、研磨の際のヘリがすごいことになっているけど、交換の手間を惜しまなければ全部綿棒で行けるのかもしれない…!
さて、これでおよそ8000番のやすりをかけたことになり、なかなかのツヤが出てきた!
このまま完成、ということでもよかったんだけど…ホームセンターでこんなものを見つけてしまった。
驚異の15000番。
もはや普通のフィルムにも思える滑らかさ。
でも確かにちょっとだけキュッとする…。
ここまで来たからにはやるしかないな、とばかりに削って?いくんだけれども…
削れてるかどうかわからない!
わ、わからない!
削りかすなんてでないし、これは…綺麗になっている、のか…!?
わ、わからない!
試しにそこにあった真鍮の棒を削って?みたら、確かに黒い鉄粉がついたので、削れてはいるのだろうけれども…
わからない!
俺の目は…節穴だったというのか…!
でもなんとなく…心の目で見ればそれなりに…より美しくなっているような…
気がしなくも…
ないということにする!
写真ではわかりにくいけど、いやぁなかなか、綺麗になったよ。
ちょっとオレンジ色っぽいかんじかな。
羊の角の先端なので微妙にねじれているんだけど、それが以外に手にフィットするから、これは使いやすいかも。
うっすらと光が透過して綺麗だし、今回はきちんと毛糸が通る溝を作ったから、縫いやすいはず!
とりあえずこれで、中断していた帽子作りを再開せねばなるまいね!
とか言いながら…
研磨の魅力に目覚めてしまったので…
さて、どうなるかな。 pic.twitter.com/bLmYZzTijy
— yajul (@yajul) 2017年11月23日
ついに金属に手を出してしまうという!
この金属針の顛末については、また次に書きたいと思う。
ぼ、帽子を完成させないと…!