ノールビンドニングの作り目のための練習
ノールビンドニングで一番難しいのは、編み始め縫い始めの「作り目」。
この最初のステップがとにかくわかりにくいのが大きなハードルになっている。
俺もそうだったし、先生たちもそうだったらしいし、今まさに躓いている人がいるし、きっとこれは全世界的にそうなのだと思う。
でも、この作り目さえ乗り越えればもう脱初心者。
とにかくこのハードルを何とかして越えていこう。
そこで、作り目を作る方法を解説する…その前に!
「ノールビンドニングの理屈」を説明してみようと思う。
きっと、この理屈がわかれば作り目も、縫い方も、よくわかってくると思うから。
もし作り目で苦労していたり、ノールビンドニングは何がどうなっているのかよくわからないという人が居たら、針と糸を用意して一緒にやってみて欲しい。
これをやっておくと作り目がスムーズに理解できると思うので、ちょっとした遊びと思ってやってみてね。
ノールビンドニング用の針がない人は、大きめのとじ針で代用可能。100均の手芸コーナーにも売っているよ。
1.針に糸を通し、親指を通すループを作る
すべてはここから。
まず、毛糸を大体腕の長さくらいに切って(今回は理屈の説明だから無理にちぎらなくても大丈夫)、針に糸を通してみよう。
次に、針と逆の方の毛糸の端を、写真のように緩く結ぶ。
結ぶ時、どっちの糸を上にするかは気にしなくて大丈夫。とにかく、くるっと結んでみる。
写真に妙なフィルターがかかっているのは、俺の指が非常に見苦しいから。
鹿の角を加工するときにドリルで怪我をしてしまってね…!
なのでそのあたりはご容赦を。手袋すればよかった。
2.結んだ毛糸を、親指にはめる
(見苦しい指で失礼…)
さっき作った輪の中に、左手の親指を入れる。
結び目は親指の腹に、糸の先端を向こう側に、針に続く糸を手前側に。
ノールビンドニングの基本形がこれで出来たと言っても過言じゃない。
- 右手に針を持つ
- 左親指にループをはめる
- 左親指から針にかけて手前側に糸が通っている
- 左親指の腹に結び目が出来ている
ノールビンドニングは、常にこの状態を維持して縫っていく。
何か、できそうな気がしてこないかな?
3.何も考えずに、針を輪の中に入れる
右手に針を持って、左手の親指の腹にある結び目の下に糸を通す。
とりあえず今回は、何もせずにただ糸を通すだけ。
人差し指(見苦しい人差し指で失礼…)で結び目を抑えて、ゆっくりと糸を引き抜こう。
左親指の付け根の方向に糸を抜いていくといいよ。ゆっくりと、糸が絡まないように。
4.親指に二本のループを巻き付ける
そのまま糸を引き抜いていくと、親指に
- 最初から巻き付いていたループ
- 糸を通したことで新たにできたループ
の二つのループが生まれたはず。
ここがノールビンドニングで重要なんだけど、針を通し糸を引き抜くと、親指に新しいループができる。
これがとっても大事。
ノールビンドニングというのは、このように常に親指にループを作り続けて行く縫い物(編み物)。
そして大雑把に言えば、「たとえ何がどうなろうと、親指にあたらしいループが生まれていれば、それで成功している」ということ。縫い目がぐちゃぐちゃになったって、別にいい(極論すると)。
だから、今後もしも「なんだかよくわからなくなっちゃった」という事態に陥ったとしても、親指にループが生まれている限り、大丈夫。そのうちちゃんと元に戻る。その部分の縫い目がちょっとおかしくなるだけ。おかしな部分は裏にするとか、見えない部分にしちゃうとか、上に何かアクセントつけてごまかすとか、いくらでもやりようがある。だから失敗じゃない。
親指のループが大事。
5.このままだと親指にまきついていくだけなので
そのまま親指のループ(サムループ)を作り続けて行くと、左親指が肥大してゆくばかりで縫い物にはならない。
だから、今二本まきついている左親指のループのうち、古いほう(一番最初に結んだやつ)を、すっと外してあげる。
外す作業は右手を使って。
左手は結び目を抑えたまま。
上の写真のようになるはず。
ノールビンドニングは、「親指にできて行くループを、一回ごとに外して、新しいループを作っていく」作業。これはすごく重要。
どっちが古いループかわからなかったら、針についてる毛糸をちょっと引っ張るといい。きつく締まる感じがする方が、新しいループ。
どれが外すべきループなのか、残すべきループなのか迷ったら、とりあえず親指にはめて毛糸を引っ張ってみる。これは多分、今後ずっとやるしぐさになるはず。
ちなみにこの状態が、「サムループとワーキングループがそろった状態」ということになる。今あなたは、ノールビンドニングをやっている!
6.出来上がったループはとりあえず無視して
親指の腹にできた新しいループはとりあえずそのままにしておいて、もう一度、何も小細工なしに針を結び目の下をくぐらせてみよう。やることはさっきと全く一緒。
親指の腹と、結び目の間に、針を通す。
親指の付け根の方向に糸を引いて、親指に新しいループを作る。
親指にループが二つできるから、もともとあった方のループを、外す。
7.ループが二つになることを確認する
きちんと古いほうのループを親指から外せたら、この写真のような状態になるはず。
(なってなくても大丈夫。最初は誰でもそう。一度毛糸を切って、またやり直せばいいよ)
この親指にまきついてるループを「サムループ」、サムループを外してできる、親指の腹にできてるループを「ワーキングループ」っていう。
ノールビンドニングは、サムループを外してワーキングループにしていく縫い物。
次ももう一度、同じことをやろう。
8.親指の腹にループが3つできた
3回針を通して、3回親指からループを外したので、親指の腹にできるループは3つ。
ノールビンドニングが全く初めての人は、まずこの一連の流れで遊んでみるといいと思う。
親指の腹にループが3つたまったら、毛糸を切ってもう一度。
一連の流れを手早くこなせるようになったら、もう作り目なんかこわくない。
これが苦もなくできるようになったら、改めてテキストの44ページ、「伝統的な作り目」に挑んでみてほしい。ここでやったこととの違いは、針を通すときに針をねじって入れる、ただそれだけ!
作り目ができれば初心者は終わり!あとは出来上がったものを輪につなぐ方法を覚えたら中級者。リストバンドが作れたら一人前、だと思う!
ここから先は上達はすっごく早くなるから、楽しみにしているといいよ!
9.作り目がぐちゃぐちゃになってしまっても
大丈夫!
サムループと、ワーキングループさえ作れていれば、作り目なんて気にしない!
そのままどんどん縫おう!
拾うワーキングループを間違えても、気にしない!
どんどん縫おう!
縫っていくうちに、「これは違う」「こっちが正解のワーキングループ」とわかるようになってくるから。
そして、作品が完成するとき、どうしても作り目がぐちゃぐちゃになっているのが気になったなら…
「作り目が気にいらないなら、切ってしまえばいいじゃない」
脳内のマリーのささやきに耳を傾け、潔く切っても大丈夫!ノールビンドニングはほつれないので、作り目なんてバッサリ切り捨てて、綺麗な縫い目から残せば大丈夫。あとは適当に切った部分の毛糸を処理すれば、見た目に美しい。
とにかく、ノールビンドニングのコツは、縫っていくこと。
途中で「あれ、これ間違ってるんじゃ…」と思っても、大丈夫!間違ってない!ちょっと見た目が悪くなるだけで!そこを気にするより、縫い続けて体にリズムとステッチを覚えさせる方が上達は早いと思うよ。
まぁ、始めて60時間くらいのお前がいうなという話ではあるけれど。
とにかく、最初は大変だったり迷ったり不安になったりするけど、どんどん続けて行けばそれが解決方法だったりするよ。
頑張ろう!
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
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X.実はもう、作り目はほとんどできている
この記事かいてて発見したんだけど、これ、実はもうほぼ作り目ができてるんだよね。
さっきのこの状態。
何もせずに3回針を通しただけの状態から、実はあと一歩でブロディエンステッチの作り目ができる。
こうやって、3つのループに針を入れて。
針のお尻を向こう側に動かして、きゅっとねじる。3本のループが外れないように。
テキスト44ページの04と05を参照。
そして、結び目の下に針を通す。今までと同じに。
人差し指で結び目を抑えて、ゆっくり引き抜いて、もともとあった親指のループを外す。
新しいループを親指に作るときに、毛糸が外れてしまわないように注意して。
じゃん。
ブロディエンステッチの作り目、完成!
おめでとう!
上に連なってる3つのループが、今糸を通した3つのループ。
その下の横になってる大きなループが、親指から外したループ。
そして新しく親指にループが巻き付いた。
ブロディエンステッチは、この構成がひたすら続く。
もっと言えば、これができたということは、マメンステッチも、オスロステッチも、習得したのと同じ!
でもブロディエンステッチはとても美しいステッチなので、下手にほかのステッチに手を出さなくてもいいと思う。ブロディエンステッチに十分慣れたら、ほかのステッチもすぐに理解できるようになるよ!
作り目を裏からみた写真。
次は、この3本のループを拾う。
親指の腹に4本あるループのうち、新しいほうから3本選び、針を通す。
そうして1目ずつ進んでいくのがノールビンドニング。
そうして、同じく、ねじって通して、ねじって通して…と繰り返すのはテキストにある通り。
拾うワーキングループを間違っても大丈夫。とにかく、どんどん縫っていくといいよ。
そしてこんな感じのものができていく。ブロディエンステッチはもうキミのものだ!
ちなみに今回、この記事でできた作り目は、テキストにある作り目と違ってちょっと脆い。
毛糸の端を引っ張ると縫い目が崩壊するので、あまり見た目はよくならない。
だからこの作り目のやり方に慣れたら、改めてテキストの「伝統的な作り目」に挑戦してみてほしい。きっとすぐにできると思う。違いは最初からねじるかどうかだから。
作り目ができたら、あとは作品を作るだけ!
(もっとも、「脆くたっていいじゃない。切ればいいのだから」というマリー様的ノールビンドニングをやるというなら、この記事の作り目でも問題はないんだけど!)
あ、テキストにある「ハートのモチーフ」は実は結構難しいから、最初はリストバンドから作るといいと思う!
これからの時期実用的だし。
何よりも、実際に作品を仕上げることができた悦びほど、上達を促進するものはないからね!