万年筆のフォルカン(FA)を使い続けて気づいたことを書いてみる。

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(文字に特に意味はないです)

 

「大学に合格した*1んだし、万年筆を買ってくれ!」

と、両親に謎のお願いをしてから20年、万年筆を使い続けてきたのだが。

その最初に買ってもらった万年筆はすごくよくて、10年くらいその万年筆を使い続けたあと、他の万年筆を少しづつ試すようになって今に至る。

それでここ1年くらいずっと使い続けているのがこの万年筆。

 

ただ万年筆、と一口に言っても、いろいろと種類がある。

 

俺たち人類の祖・アダム父さんのお仕事が「全てのものに名前を付けること」であったように、人類が認識するすべての物には名前が付けられている。

この万年筆もそう。ちゃんと個体に名前がついている。

そういうわけで、この万年筆の名前は…「カスタムヘリテイジ912」だ。

フォルカンじゃないのかよ!?と思われるかもしれないが、一つ説明をさせてくれ。

万年筆は基本的には、製造会社と、全体のフォルムを指す名前と、万年筆の命ともいえるペン先の種類、この3つの名前を総合して呼ばれる。

まぁ車みたいなもの。大まかな車体と、ターボ付きとかそういうオプションで名前に変化があるような感じだ。

アーマードコア」シリーズで、カラサワと呼ぶかWH04HL-KRSWと呼ぶか、みたいなものだな!…伝わらないな!

 

それで、この万年筆の名前は

Pilot カスタムヘリテイジ912 FA(フォルカン)

と言うことになる。Pilot社の、カスタムヘリテイジ912という本体に、FA(フォルカン)というペン先がくっついていますよ、と言うことがわかるわけだ。

さらに、Pilot社の製品についている3ケタの番号は、創業何周年かと価格帯も含んでいるのでわかりやすい。912の場合は「創業91周年に製造開始された、2万円台の万年筆ですよ」という感じだ。835なら83周年の5万円台の、という感じ。た、高いが!

 

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それでこのフォルカンというペン先(ニブとも呼ばれる)の最大の特徴は、左右に大きく切り欠きが入っていることだ。これによってペン先がガツンと軽量化され、文字を書くと見事にしなる。そのしなりが素晴らしい線の変化を生み、まるで毛筆のような筆記が可能となる。

まさしく漢字を書くのに最適な万年筆と言うわけだ。

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こちら、両方とも同じこの万年筆で書いた文字だけど、左は力を抜いて書いた文字で、右はしなりを活かして書いた文字。

上手い下手はともかくとして…なるほど毛筆の味わい、と言うことがよくわかると思う。

ペン先を大胆に削った結果、このような文字幅の変化を生み出せるようになったのだ。

このような万年筆を出している会社は数少ない。と言うかほぼない。俺の知る限り海外にもう一社あるのだが…そちらは俺は体験していないので何とも言えない。

とはいえ、Pilot社のようなメジャーな会社がこのような変なペン先を出しているのは凄いな!

…できれば、もっと軸を選ばせてほしいのだが…。

 

まぁ、万年筆の書き味、と言うことは置いておくとしても、

「切り欠き」「軽量化」「改造」「ほかの人とは違うモノを」みたいなものを求める、かつてのミニ四駆マニアならば、このフォルカンの魅力の一端は確実に理解してもらえるはずだ!

ピンバイスで穴あけまくったり…したよな!ハイパーダッシュモーターはうちの近所ではレギュレーション違反だった。

アバンテJrとかかっこよかったよね…!

俺はサンダードラゴンでした。

ダッシュ四駆郎世代。

 

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(文字に特に意味はない)

 

で、このフォルカン、

(特殊なペン先を使っている万年筆の場合は、単にそのペン先の名前で呼ばれることが多い)

しなりを活かして、大胆に文字幅を変化させてパワフルに書いていき…たいところなのだが。

先のミニ四駆の話のように、軽量化とか改造をしまくったら、必然的に耐久力は落ちるのだ。ミニヨンファイターとかそれでよく壊してたよね…。

ファイターは俺たちの心のヒーローであるので、その体を張った教えを無碍にしてはならない。

このフォルカンを手に入れたときはそれはもうテンションのままにグワっとペン先をひらいて使っていたんだけど…やはりそこでミニヨンファイターの姿が脳の中に浮かぶわけだよ…!

 

このままでは…壊れるな!

 

というわけで、それからは紙の表面をなでるように、そっと払うように書くようになった。

 

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…まぁそれで字が上手くなるわけじゃないのが人生の辛さだけども!

 

で、そこで気が付いたことがあった。

このフォルカンの「毛筆の書き味」というのは、もちろん文字幅の変化と言うこともあるだろうけど、紙の表面を払うように書くという点もあるんじゃないだろうか?

通常の万年筆のように、紙にインクをのせていくような書き方とはちょっと違う、ひっかくというか…。インクを残す、ではなく、跡をつける、みたいな感じがするね。

 

そういうわけで、フォルカンを使うときは無理にペン先を開く書き方をしなくても、十二分にフォルカンの面白さを体験することは可能だ!

それに、フォルカンを使い続けるなかで筆圧が劇的に下がったので、どうしても筆圧をかけてしまうという人への矯正用の一本としてもいいかもしれない。

 

いずれにしても…「変なモノ」「俺だけのモノ」を求める向きにはとても魅力的な万年筆であることは、確かだ。

 

人によっては強烈に合わないけれども。

 

ただそれはともかく、Pilot社にはぜひとも軸を…もっと軸を選ばせてくれ…と、お願いしたいところではある。

*1:昔は「大学合格祝いに万年筆」が定番だった。俺の世代ではもうそういうことはなかったけどね。なぜ万年筆が贈られたのかというと、昔はボールペンの質が悪かったので、「消えない文字を書けるのは万年筆だけ」だったからだ。公文書を書く年齢になったら、万年筆が必要になったというわけ。もちろん普通の水性インクでは水で流れてしまうので、鉄イオンの入った古典インクと言うものを使う必要があった。履歴書なんかで「黒または青のインクで書いてください」とあるけど、あれはこの古典インクが黒と青だったから。古典インクの青は時間とともに黒くなる。なので、現代で青インクで公文書を書く意味はほとんどない。ボールペンで充分。あと昔の事務員の人が腕カバーを付けているのも、万年筆のインクがワイシャツにうつらないようにするため。