縫うように編む北欧のプリミティブな編み物・ノールビンドニング
ノールビンドニング、聞きなれない発音の言葉ですが、これは「Nål=針」「bindning=結びつける」という北欧の言葉です。
棒針編みや鉤針編みや織りが発達する以前に世界中の地域で行われていた、プリミティブな編み物で、古いものではなんと紀元前6500年の遺跡や、エジプトやペルーの遺跡からも見つかっています。
棒針編みなどの普及で、針を使う編み物は衰退し製法が失われてきましたが、フィンランドやスウェーデンでは伝統的な編み物として伝えられてきました。そして1960年代に、北欧の各地・各家庭に伝わるノールビンドニングの技法が研究者によってまとめられ、世に知られるようになりました。
ノールビンドニングは古くて新しい編み物といえるかもしれませんね。
ここでは、初心者の方に向けてノールビンドニングとは何か、どう始めるかを書いていこうと思います。
ノールビンドニングの特徴
ノールビンドニングの特徴は、なんといっても針を使って縫うように編むことです。
縫い物をするように針に糸を通し、グルグルと糸を結んでいくように編んでいきます。
一般的な編み物との違いは、
- 大きな針を使うこと
- 毛糸をちぎって、つなぎながら編んでいくこと
- 毛糸が切れてもほつれないこと
- 非常に丈夫で実用的な物が編めること
- 編み図がないこと
ということでしょうか。
棒針編みなどが登場する以前にあった編み物なので、一般的な感覚での「編み物」とはかなり異なるかもしれませんね。
また、縫い方のバリエーションが非常に多く、現在見つかっているステッチ(編み方)は1000を超えるともいわれます。
太古のロマンに溢れた編み物と言えますね。
ノールビンドニングの始め方
ノールビンドニングは大きな針(10cmくらい)と毛糸を使って編んでいくのですが、一番の問題は「そんな大きな針はどこで手に入るのか?」ですね。
でも大丈夫。専用の針がなくても大きめの綴じ針で簡単に始められます。100均ショップで売っている一番大きな綴じ針を買えばすぐにでも始めることが出来ますよ。
とはいえ、何をどうやるのかをすべてここで説明することはできませんので、参考になる本やウェブサイトを紹介することにしましょう。
日本語で読めるテキスト
はじめてのノールビンドニング 縫うように編む、北欧伝統の手仕事
- 作者: 北村系子,マツバラヒロコ
- 出版社/メーカー: グラフィック社
- 発売日: 2017/09/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
とにかく、ノールビンドニングに興味を持ったら買っておくべき本!
というか実質的にほぼ唯一の日本語テキストなので、ノールビンドニングに興味を持ったらこの本と綴じ針とウール100%の毛糸を手にして始めるのが一番です。
ノールビンドニングで一番苦労するのが編み始めの「作り目」なのですが、この本は作り目を丁寧にカラー写真で一手順ずつ親切に説明してくれています。
ノールビンドニングには編み図は伝わっていないのですが、わかりやすい編み図を文字通り編みだしてくれていますので、どうやって進めていけばいいか迷うことなく進めていけます。これは革新的なことだと思います。ノールビンドニングは感覚や経験に頼るところが多いので。
Youtubeなどで「Nalbinding」(検索するときは英語表記で検索するとたくさん見つかります)で検索すると、いろんな人がやり方を解説してくれているのですが…
ノールビンドニングは、人によってやり方がかなり違う!
というのも、先述のようにノールビンドニングは1000を超える種類のステッチがあるので、人によって説明しているステッチがちがうのです。AさんとBさんでやり方が全然違うので、Aさんの動画で分からないところをBさんの動画で補完しようとしても全然意味が分からない、ということになりがちです。
理解してしまえば動画の内容がよくわかるのですが、初心者が躓きやすい原因にもなってしまっていますね。
なので、(宣伝というわけじゃないのですが…)まずは本を買うことをオススメします!
身近に教えてくれる人がいればいいのですが。なんといってもノールビンドニングは古くて新しい編み物。人口が少ないのです。もっとメジャーにしていきたいところですね…!
英語で読めるウェブサイト
Neulakintaat
ノールビンドニングとは何か、どうやるのか、どんなステッチがあるのか、どういうテクニックがあるのか…。
全てを説明してくれるノールビンドニングのお姉さんであり女神であるSanna-Mariさんのサイト。ノールビンダーおなじみの、Youtubeで検索すると出てくる青い糸を使った解説動画をあげてくれている方。ノールビンドニングを志すなら何度も足を踏み入れることになるはず。英語のサイトですが、とってもおすすめ。
ノールビンドニングに慣れてきたら、こちらのサイトを見てお気に入りのステッチを見つけるのも楽しいですよ。
何が作れるの?
なんでも作れます。
なんていうのは半分冗談、半分本当なのですが。
ノールビンドニングは基本的には輪を作って筒状にグルグルとらせん状に編んでいくので、手袋や帽子、靴下を作るのに向いています。
初心者の方はまずはリストウォーマーから始めると、「どういう編み物なのか」がよくわかると思います。
おすすめの制作順は、
- リストウォーマー(糸のつなぎ方、段つなぎを学ぶ)
- 指ぬきミトン(増し目と減らし目、親指部分の作り方を学ぶ)
- ミトン(袋の編み方を学ぶ)
- 帽子(大きな作品を作ってみる)
- 靴下(応用的な編み方を学ぶ)
でしょうか。もちろんこの順でないといけないわけではありませんが、個人的にこの順番だとあまり混乱せずに学んでいけると思います。
作品が出来上がるとより楽しくなってきますので、実用的な物から作り始めると飽きが来ない気がします。
これらの作品を作りながら、段ごとに糸を変えたり、別のステッチを試したり、平面編みをやってみたりを挟むといいかもしれませんね。
ノールビンドニングは一度編んでしまえば切っても穴をあけてもいい編み方なので、極論すると布のように扱うことが可能です。ですから、通常の編み物ではありえない「切った貼った」ができるので、やろうと思えばなんでも作れるというわけです。なので、「なんでも作れる」というわけですね!
そうそう。
先述のノールビンドニングのテキストですが…
大いなるワナがあります。
それは「ハートのモチーフを編んでみよう」という部分。
…これは危険!
「本格的な作品作りを始める前にやってみましょう」と書かれていますが…
これ、めっちゃ難しいのです。
最初にこれに挑戦すると挫折する可能性が高い!
なので、このハートのモチーフがうまくできなくても大丈夫。自分を卑下する必要はありません。誰だってこれは難しいはず。
挑戦してみると確実に腕は上がるので、作れなくても問題ない、という気持ちでやってみるのがおすすめです。
挑戦しなくても全く問題ないですが、編み図の説明などがありますので目を通しておくと良いですね。
どんな人に向いている?
適当な人です。
…いや真面目な話なのですが!
ノールビンドニングは太古の編み物なので、「こうしなきゃいけない」というものがないのです。人それぞれでやり方が違うし文化的な違いもあります。
最終目標は、「機能的に問題ないこと」の言ってんです。多少ミスしようが、ちょっと見た目は悪くなろうが、大丈夫です。先述のように切った貼ったができるので、ミスしても、多少強引にでもリカバーはできるのです。
ですから、「こうしなきゃいけない」と思い込みすぎる人よりも、「まぁ、多少は大丈夫!」と思える人に向いていると言えるかもしれません。
というか逆に、ノールビンドニングをやる際はおおらかな心でいたほうがいいですね!
なんといっても、ノールビンドニングはかつてヴァイキングの男たちが船の上でやっていた編み物でもありますから、ヴァイキング的な、荒々しく大会のごときおおらかさでやっていくのがノールビンドニングともいえるでしょう。
一目間違ったからといってうろたえず、悩まず、トライしてみてくださいね!
どんどん編んでいけば、確実にうまくなります。1か月後には慣れた手つきで素早く正確に編んでいくことが出来るでしょう!
ですから恐れることはありません。
むしろ男性に向いていると言えるかもしれません。
男性の私としては仲間が増えてほしいところですね!
作り目がよくわからない
ノールビンドニングで一番苦労するのが、編み初めの「作り目」です。
逆に言えば、ノールビンドニングで苦労するのは作り目だけ、といえるかもしれません。
作り目さえできれば中級者!と言ってしまえるかもしれません。
先述の本をにはかなり詳細に作り目の作り方が書いてあるのですが、それでもわからない人のために…
私が過去に書いた記事と、アップした動画を載せておきます…!
こちらは「作り目のための練習」なので作り目そのものの話ではないのですが、作り目の理屈を知るのには役に立つかもしれません。恥ずかしながら。
そして動画。
テキストに書いてある作り目を、動画で解説してみました。
どんな動きで作るのか、なんとなくわかると思います。
音が小さいのが申し訳ないですが!何せ初めての動画投稿でしたからね…!
そのほか、編み終わりや毛糸のつなぎ方などを開設した動画もあります。
針が欲しい
基本的には綴じ針でも全く問題ないのですが、大きな針があると編みやすいですし、何より「お気に入りの道具を使っている」という感慨は格別のものがありますね!
事実、「nalbinding needle」で画像検索すると、いろんな人の色んな針が見られます。見るだけでも楽しくなってきますね!
ちなみに私は針を作るのが好きで、しょっちゅう針を作っています。
この記事の冒頭の画像の針はお気に入りのもののひとつで、鹿の角を削り、ルーン文字を刻んだ(Rにみえますが、ちょっと違います)ものです。親指へのあたりが良いので、楽しく編めますね!
針は自分でも簡単に作れますが、ネットで針を売っている人やお店もありますので、検索してみるといろいろと出てきます。
札幌在住の方は、マルヤマクラスの近くにある北欧雑貨のお店presseさんで売っているので、足を運んでみるといいかもしれません
ノールビンドニングで作った帽子や手袋も見本としていてありますので、どういうものかイメージがわきやすいと思いますよ。
とはいえ、最終的には手作りを目指したいところですね!
やはり、微妙な自分のクセや指へのあたりを考慮して自分で道具を作るというのは…太古のロマン的にもいいじゃありませんか!
やり方を教えてほしい
日本のノールビンダーはまだまだ少ないので…なかなか実践で教わるのは難しいかもしれません。
しかし今は21世紀。時代はまさに令和。我々にはGoogle神がついています。そしてその眷属たるYoutubeも存在しています。ならば恐れることはありません。テキストを読んである程度作品が作れるようになれば、youtubeや英語のサイトでも何となく理解できるようになっているはず!
それに、ノールビンドニングの醍醐味は「適当でOK」なのですから、決まったやり方を模索するより、ダイナミックに自分だけのやり方を追求していったほうが楽しいかもしれませんよ!いや、きっとそれが楽しいはず!そしてそれをどんどん発表して、みんなで楽しめるようになるといいですね!
終わりに
と、なんとなくいい感じの空気を醸し出しつつ、この記事を終えたいと思います。
Twitterの私のアカウント(@yajul)に返信していただければ、及ばずながらお手伝いできることはあるかと思いますので、何かあればご連絡くださいね。
私ではダメな時はノールビンドニングの師匠に聞きに行きますので!
ノールビンドニングをたのしんでいきましょう!