木工 - ノールビンドニングのセーターを作るために避けて通れないあのお方 -

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タールハルパを作ったよ!

「3弦だからヨウヒッコじゃない?」と思われるかもしれないけれど。

いろいろ調べると、3弦でもタールハルパと表記しているところがおおくって、両者の違いがちょっと判らなくなってきている。詳しい人は解説をしてほしい!

とりあえず、この記事ではこれはタールハルパであるということにしてご覧ください。

さて、タールハルパ。

「タール」というのは英語のtallで、大きいという意味。

「ハルパ」は英語で言えばharpで、楽器のハープのこと。

でかいハープ。

ひねりなし!

綴りはtalharpaとか、taglharpaとか、tagelharpaとか、揺れはあるけど。

バイオリンのご先祖様で、ハープからバイオリンに至る進化の途中で現れた楽器といえると思う。音色はまさにケルト。聞けばすぐに思い当たる人も多いと思う。あの響きはいいよね。

 

それでなぜこんなマイナーな楽器を作ろうとしたのかというと…。

原因はやはりノールビンドニングにある。

恐るべきはノールビンドニングだな!

完全に人生が変わった感があるね…!

この半年、ノールビンドニングでセーターを作り続ける中で、どうしても避けて通れないものがあった。

ノールビンドニングでセーターを作ろうと志すすべての人の前に現れるあの男性が。

俺の脳の中に常にいたわけだよ。

この人。

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(画像はこちらより)

 

これは…

 

勝てない!

 

タールハルパ奏者のPer Runbergさん。この方、割とルックスが劇的に変わるんだけど、大体ノールビンドニングのセーターを着てタールハルパを構えているのですぐにわかる。

少ない情報を求めて「nalbinding sweater」とかで検索すると必ずキミの前に現れる。ノールビンドニングのお姉さんと並んで俺の心の師匠とも言えるかもしれない。すごい。このセーターの編み方をこないだ先生に教えてもらったけど、作り方はともかくとしてここまでキマる自信がない。すごい。

 

そういうわけで…

「このお方が持っている楽器はどういうものなんだろう…?」という疑問が沸き上がるのは自然なことだと思う!

…だよな?

で、楽器について調べてみると…

「木工なら俺にもいけるかもしれないな…?」と創作意欲が湧き上がるのもまた自然なことと思う!

…だよね?

 

作りたい。作れそう。材料もある。道具もそろってる場所がある。セーターも作った。目標となるあのお方の姿もネット上に燦然と輝いている。

 

…やるしかないな!

 

しかも今は平成も終わりゆく21世紀。

21世紀人の俺たちは…新たなる神・ゴッゴルの恩寵により、Youtubeという現代のアレキサンドリア大図書館をその手の中にしている。

…要するに、「多分誰かがタールハルパの作り方を動画にしてるだろう!」

っていうすっごい怠惰なアレである。

すまない。

でやっぱりあるんだよ!

凄いな!


How To Build a DIY 2-String Tagelharpa / Talharpe / Jouhikko

21世紀人で良かった…!

「とりあえずざっくり作る」というDIY精神はやはり海外こそ本場。

本当にざっくり作っていて、しかもちゃんと鳴っている。

というかこの作者さんの演奏好きすぎて困る!

もっと聞かせてくれ!

 

作り方としては、

切って、穴あけて、重ねて接着して、蓋閉めて、弦張って、おしまい!

見事なDIY精神。

別にそんなきれいに作る必要はない!とにかくやってみろ!やってみればいいよ!

という熱い何かを感じる。

 

そういうわけで、やってきた。

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寸法をざっくり決めて、材料を切る。

一番長い部材で70cm、膨らんでるところは40cm、幅は16cmで作ってるよ。

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一番苦労したのが、中空を作るために、板の中身を削った時。

動画みたいに、くりぬいて蓋をする方式にすればよかったー!と後悔してもすでに遅し。

俺は…やるしかないのだ…!

横挽き盤の回転ノコの上に板をかぶせて削るという荒業を敢行した。

危ないから一人でやっちゃだめだよ!

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削った表板、中抜きした中板、裏蓋。

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重ね合わせると、こうなる。

ここまででおよそ5時間。

…結構かかってるな!

この段階で芸術の森の木工房の使用時間が過ぎてしまったので、ひとまず撤収!

ここまでできれば、あとは自宅で何とかできるかなーと。

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弦を張るためのペグをつける場所を、ノミで削っていく。

地味…ッ!

しかし木工やってる感はある。

しかし、下手…ッ!

これでは…あのお方に届かない…!

というか週末で完成しねぇ!

ヤバいぜ!

というわけで、木工の師匠に連絡。

 

俺 「師匠…力をお貸しください…!」

師匠「うちに来ればいいよ」

俺 「今すぐ行きます!」

午前6時である。

 

午前6時30分、師匠の工房にスズメとともに到着。

師匠、工房の掃除中。

大体師匠は朝5時には工房にいる。

なぜそんな朝早いのかというと、師匠曰く「午後になるともうやる気ないから」ということらしい。

いやこれは俺もそうだな!

午後になるともう、なんか、エネルギーなくなるじゃない?13時くらいから夕食をどう素晴らしいものにするか考え始めるよね?

というわけで、朝7時。

遅くなったけれど、師匠と木工開始。

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俺 「ざっくり作ったんですよ、ざっくり!とりあえず鳴ればいいなと思って!」

あははと笑いながら差し出すと、師匠、おもむろにカンナを手に小端を削っていく。

蘇る木材。

仕上げ不足の端とともに、「ざっくり感」すらも削り取られていく。

あれ、これ…俺…もっと荒々しい感じのだったのに…凄いプロっぽくなってるよ…?

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すでにプロの楽器職人の趣が漂う。

木彫とか…入れたほうがいいのかな…。

ここまでくると、「俺が作った!」とかあんまり言えない感じになってきたぞ!

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乾くのを待っている間に、ほかの部材を作る。

右のはゼブラウッド。師匠のゴミ箱から発掘。俺が形を作り、師匠が仕上げる。

なんかちょっと、いやだいぶ申し訳ない感じになってきてないか!?

仕上がりは目をみはるばかりだけれども!

これで無塗装なんだぜ…?

この艶よ…!実物はもっとすごいんだよ。

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もう9割完成というところで、師匠が家族の買い物に出かけたので(いやもうほんとすんません)、あとの仕上げと塗装は俺がやることに。

 

…ほぼ、俺は何もしてないな!?

企画・俺

ほかだいたい全部・師匠

というくらいになっているが!

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完成の喜びは変わらないな…!

 

弦は手芸用のナイロン糸。

ナイロン糸は強い。鋼鉄よりも強い恐るべき繊維。だからナイロン糸でもOK。

慣れたらちゃんとした弦に代えるけど!とりあえずはね!

 

それで…弾いてみたら!

 

しずかちゃんのギターの音がする…!

 

ギリギリギリ…!

 

おぉ、これは…外国の人が虫の声を聴くとこんな感じに聞こえるのだろうか?

不快ッ!

ちゃんとチューニング勉強せにゃ!

でも、何か、いけそうな、気がする!

 

単純に、楽器作りって楽しい。

もちろん難しいけれど、最初からうまくなんていかないけど。

出来上がったらどうなるだろう?そのためにどうすればいいだろう?

ワクワクしながら考えて、手を動かす時間は得難いものだね。

だいたい師匠の作だけどな!

はっはは!

サンキュー師匠!

 

それで、楽器製作を通じて学んだことがもう一つある。

これが、俺には最も衝撃的な知見だったかもしれん…。

それは…。

数多くの日本人の精神を破壊せしめて来た…あの恐るべき作品…

ドグラマグラじゃないぞ。

 

 

耳をすませば」の…天沢聖司くんの!

リアリティが上がってしまったということだよ…!

 

おぉ、俺はなんという地獄の蓋を…!

つまりね。

あのお方、天沢聖司くんの「非現実性」のうちの一つ、「バイオリン職人になるための修行をしている」という点が!

「わりと現実的かもね」

と思えるようになってしまったことだ!

つまり…!

 

天沢聖司は実在する!

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天沢聖司くんの非現実性は、

・「理想のおじいちゃん」を極めた人物を祖父に持つ

・「理想の初恋」を極めた出会いをする

・「理想のおっさん」が周りにいる(おじいちゃんの知り合いの音楽好きの人ら)

・バイオリン職人を夢見て実際に作っている

・自転車

・視聴者を殺しにかかってくる

・かっこいい

・お前…さすがに文学少女に先んじて本を読みまくりながらバイオリン作ってって…お前…

・完璧超人

・どうでもいいけどキン肉マンの続編が面白いからキン肉マン世代は読もうぜ

 

これらの恐ろしい属性のうち、結構大きなウェイトを占める

「楽器職人を目指してイタリア留学を目論む」というある種の人生の究極系である部分が、

「うん、できるよね」

 

ってなっちゃった!

じゃああれか!

他の部分も、割と実は現実的だったってことにならないか!?

なるなぁ!?

っていうか一つ一つの要素を見れば、割と当てはまる人結構いるな!?

おぉ、神よ…気づいてしまった俺を、いらぬ知恵を身に着けてしまった俺を、元に戻してくれ!

エデンに帰りたい!

天沢聖司くんをファンタジーの世界の住人だと、そう、信じていたあの頃に…。

 

それにしても、聖司くんばっかりが超人じゃないのがあれの恐ろしいところだよ。

雫もさ、すごいぜ?ネプチューンマンレベルだぞ。

みんな、雫の超人性を知らなさすぎるよ。

マグネットパワー全開だぞ。

雫の両親だよ。問題は。

お父さんは図書館の司書だろう?

この時点で危険な雰囲気が漂ってこないか…?

図書館の司書!

「できることなら就きたい職業ベスト3」の一角だぞ!俺調べだが。

理想!

究極!

図書館で働いて生きていきたい!

そんな全国8230万の叫びが聞こえてこないか…?

俺は聞こえるね!

そしてお母さん!

大学院生だぜ…?

43歳。めっちゃきれい。

その年齢で大学院にいけるって、これも、非常に危険な…理想と究極の人生だぞ!

俺も…学び直したい!

大学院行きたい!

学びたくなったときに学びたい!

そんな全国の俺が、全世界にいると思われる俺の叫びが、耳をすまさなくとも聞こえると思う。

 

恐るべきは雫の両親!

むしろ残虐超人。

 

俺はもう…立ち上がれないところまで来てしまったかもしれん…。

心にベアクローを受けてしまったよ…。

 

モンゴル行ってマスク作らないとダメだな。

木工で。