脳の中のマリー

アントワネット的なことを脳の中で

自分の遺伝子を変化させて、理想の人生を手に入れる

・・・などという話は、センスオブワンダーにインセインをひとしずく加えたようなもので、「お前はいったい何を言っているんだ」と思われるかもしれない。

でも、「遺伝子は変わらない」というのは一面では正しいけど、完全にその通りというわけではなくなっている。。

まずはこのTEDを見てほしい。

見る暇が無いならこちらの翻訳を読んでみてほしい。

きっと常識がガラガラと崩れゆくと思う。

リッカルドサバティーニ: ゲノムを読んで人間を作る方法

www.ted.com

機械学習によって、遺伝子からその人の顔つき、身長、体重を逆算できる」

しかも現時点で、身長は5cmの精度、体重は8kgの精度で。

今後さらに技術が発展したら、犯行現場に残された犯人のDNAからかなり正確な犯人像を出力できるようになるだろう。驚くべき未来に、もうすでに俺たちは足を踏み入れているのだ。

身長と体重が遺伝子から逆算できるということはつまり、成長にともなって、自分の遺伝子が変化しているということになる。もし、受精した瞬間から遺伝子が全く変化しないのであれば、今現在の自分の身長体重を逆算できるはずがないから。

つまり、遺伝子は変えられる。俺たちは遺伝子の乗り物でも、奴隷でもなく、遺伝子に対してある程度、対抗し得る存在なのかもではないか。

と、ぼんやりと思っていたところでこの本を読んだ。

 

 …例のごとく、「やりたい邦題」なタイトルになっているのだが、原題はInheritance(継承)。俺たちは何を遺伝子によって継承するのかを、遺伝学者さんが非常に多くの例を挙げて説明してくれている。

その例示が圧巻で、遺伝学者にかかれば、ほんのちょっとした体の形質の違いから、「この人はこれこれの遺伝子障害があるな」とわかるのだという。まつげが二重の人はこう、親指が外側に90度曲がる人はこう、手相がこれこれの人はこう…。コレを読むときは、是非鏡を手元に置いて読んでほしい。もしかすると、様々な「遺伝子のエラー」に気がつくかもしれない。そして、それらエラーのいくつかは「見た目」でしかわからないというのも面白い。

この本を読んで様々な衝撃を受けたんだけど、一番はこの「見た目でしか判断できない、遺伝子のエラー」だったかもしれない。

というのも、つまりこれって、「人相見」や「手相占い」に通じるからだ。

「見た目」で判断する遺伝子のエラーがある。そしてそのエラーを持っている人(エラーのない人なんか居ないけどね)は、これこれの病気にかかりやすいとわかっている。ならば、「人相見」や「手相占い」は、遺伝学的にそんなおかしな事はしてないって言うことになる。手相と人相を見て、「あんたはこの病気になるから気をつけなさい」みたいに偉そうに言われたとして、それは単なる当てずっぽうでなく、それが数万、数十万の「見た目と病気の関係性」の蓄積の結果だとしたら、それはそれで信をおけるものなのかもしれない。(いんちきが9割にせよ)

中医学(漢方や鍼灸)は、「とりあえずひたすら試してみて良い結果を蓄積する」という、半ば力業で成り立っている医学だ。そもそも、始祖の神農その人(神だけど)からして、「あらゆる草を舐めてその効能を確かめた」力業の人(神)なのだから。

俺の中で、中医学と最新西洋医学がうっすらと重なった瞬間かもしれない。もちろん、全てを鵜呑みにすることは危険にせよ、人の人相、手相をひたすら観察し続けたデータというのはそうそう軽んじていい物ではない気がしてきた。

また、この本の中で、腸内細菌によって行動や思考が支配された例などもあって、これは先日出版された心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会までにも通ずる話かと思う。

中医学には『脳』の概念は最初はなかった。腸や内臓によって思考や性格が影響されると考えられていて、それももしかして一面の正しさはあるのかもしれない)

さて、ずいぶんと脱線したけど、遺伝子の変化を自分で起こせるかという話だが。

…残念ながら、遺伝子を自らの意思で書き換えることは出来ない。

お前…タイトル…と思われたかもしれないが、その、なんだ、最新科学の話って、案外こういう、夢を見させておいて結論は地味なところに落ち着くっていうパターンがあってな…。

しかし重要なのは、これこそがこの本の最も重要な点だが、「遺伝子ではなく、『遺伝子の発現度合い』が重要なんだ」ということ。

蜂の幼虫にロイヤルゼリーを与えれば、遺伝子の中の「女王バチスイッチ」がONになり、与えられた蜂の幼虫は全員女王バチになる。遺伝子は設計図だが、その設計通りにコトを運ぶかどうかは、まだ俺たちに選択肢が残されている。大いに。

遺伝子は変化しない。しかし変化したかのごとく見せるのは可能だし、今までの俺では発現させられなかった遺伝子、かっこよく言えば秘めたる力を解放することは出来る。

いじめられた記憶は遺伝子を覆い、戦う力を奮い立たせる能力を封印してしまう。遺伝子に変化はないが、そこにシールを貼ることは出来る。出来てしまう。無意識のうちに。

遺伝子の可能性は有限だが、その有限は極めて広い。有限の中に無限を見いだすのは可能なはずだ。