ついに金属に手を出してしまった
ノールビンドニングをやっているのか、ノールビンドニング用の針を作っているのかわからないくらい両者を並行してやっている気がする。
そしてこの度、ついに、金属に手を出してしまったよ…!
このままあらゆる材質に手を出してしまいそうな勢いでは、あるな…!
次は石材…鉱石を使って針を作りたいとか思い始めている!
もともと、金属で作るつもりはなかった…というか、木材石材はともかく、金属はさすがに俺の手には余るだろうと完全な及び腰を見せつけていたのだけども、最初のニットカフェで北村先生に針を見せた時に先生が何気なく言った一言
「金属では作らないんですか?」
という言葉が、俺の心に、抜けない針となって残ったというわけだよ!
呪縛…!
まさに…!
おそるべき制約が…!
しかし呪縛の有無にかかわらず、いつかはここにたどり着くような気はしていた。研磨の魅力に目覚めたその時からな…!
そういうわけで、今回は加工しやすい真鍮の丸棒を削り、ノールビンドニングの針に仕立て上げていこうと思う。
どうでもいいけど、真鍮って英語で「brass」っていうんだね。
ブラスバンドはつまり金管楽器のバンドだということだったんだな。
まずは穴を空けるわけだけど、真鍮の丸棒にいきなりドリルで穴を空けるわけにはいかない。ドリルの先端が滑ってしまうからな!
なので、まずは大雑把に削って面を出してから、ドリルで穴を空ける。この時まっすぐにドリルを入れないと、ドリルを折る羽目になる。俺は一本降りました。
削る際には当然、ディスクグラインダーを。
…まぁいつものごとく、穴の位置がずれてしまったが…!
こればかりはどうしようもないな!
そしてある程度まで削れたら、糸鋸で切る。
真鍮は切れる!
ただ、これは削る際もそうなんだけど、あんまり激しくやると摩擦熱が伝わって削ってる部分からかなり離れた持ち手もめちゃくちゃ熱くなることがあるので、そこは注意が必要。特に銅なんかはすごいよ。ドリルで穴を空けてただけなのに、いきなり熱くなったからね!
このままでもういいかな、という気がしないでもない。 pic.twitter.com/7qrHfmKByu
— yajul (@yajul) 2017年11月23日
グラインダーでざっくりと形を大きめにとって、やすりの番手を上げていく。
36番のグラインダーで削り、100番で形を取り、400番で凹凸をならして…という感じ。
しかしこれ、鉄粉が相当出るので、気づかぬうちに来ている服が真っ黒ということになるので、注意が必要。
特に眼鏡をかけている俺は、うっかりすると眼鏡に鉄粉がくっついて、拭くときにめちゃくちゃ傷がついてしまうので、作業中はゴーグルと皮手袋は必須だね。
金属加工は楽しいけど、やっぱり怖いよねー。
破片が飛び散ると、デニムパンツ越しでもめちゃくちゃ痛いし。
あまり…やりたいものではないな!
ヘアライン加工風 pic.twitter.com/pjfA2P6K4f
— yajul (@yajul) 2017年11月23日
ある程度仕上がってきたら、あとは前回と同じく…ミニルーターとコンパウンドで鏡面仕上げをする!
金属の場合、削れた鉄粉でば府が真っ黒になる。びっくりするかもしれないけど、黒くなるということは削れている証。研磨のためなら、俺は喜んで黒くなる覚悟さ…!
しかし研磨は楽しい。
やればやるだけ確実に成果になる。
そんなものがこの世の中にどれほどあるだろうか…?
俺も…報われぬ努力に身を沈めてきた男。
やればやるだけ光っていく真鍮に涙しつつ、ひたすら研磨していく。
ちなみにミニルーターのバフは、意外にもダイソーの100円バフがコストパフォーマンスが高い。おすすめ!
そして、真鍮のノールビンドニング針が完成!
写真ではわかりにくいけれど、すごく光っているよ!
…まぁ、若干、こう、細かな傷は消せていないのだけれども!
長さはおよそ15cm、幅は6mm、一番厚い部分で3mm。俺としては標準的な形になったと思う。
…ただこれ、重いな結構!当たり前だが!
金属だしな!
だからたぶん、あまり長時間使うと意外と疲れるかもしれない。特に女性の場合。
金属針の場合はもっと薄くしていくのがいいのかなぁ。
まぁ、使わなかったら、これはかんざしとしても使えそうだし。いや俺はかんざしt使わないけど。誰かに。
とりあえずこれで何か作ってみようと思うよ!
さ、最近全然縫ってないからな!
羊角クラフト - 研磨という魔力 -
前回、羊の角でノールビンドニング用の針を作り、800番の紙やすりをかけるところまでいったんだけど。
通常の木工であれば800で十分すぎるくらいなので、これまでは800番以上のやすりをかけることはなかった。
もちろん、1000、2000までやすりをかける人もいるんだけど、まぁDIYの領域でそこまでやる人はまれと思う。とにかく、俺はやっていない!
しかしねんがんの羊の角を手にしたからには、可能な限り美しく仕上げたい。
そこで…およそ20年ぶりくらい*1に、鏡面仕上げの世界に再入門することにした…!
鏡面仕上げというのは主に金属研磨の世界で使われる言葉だけど、研磨に研磨を重ねて鏡のようにすること。上で書いた800番とか2000番という「やすりの番手」は、やすりの目の粗さを示す数字で、数字が小さいほど荒く、大きいほど細かい。一般的な紙やすりのイメージは大体120番くらいではなかろうか。だいたい、600番くらいまでが普通レベルで、700以上が仕上げレベル、3000以上はこだわりと趣味の世界みたいな感じ。
研磨、というと多くの人は「そんなのやったことないしー」と思うかもしれないんだけど、実は研磨をやったことがない人はまずいない。むしろいない。この世に生きる人は研磨をしながら毎日を生きている。や、切磋琢磨的な比喩ではなく、物理的な。
例えば歯磨きも立派な研磨だし、お風呂掃除も、皿洗いも、床掃除も、体を洗うのさえ研磨といえる。何かをゴシゴシこすって綺麗にするという意味ではどれも同じ。研磨の最終工程で「バフをかける」なんていうんだけど、ようにするにこれは「布でゴシゴシこするよ!」ということだ。何か研磨が身近になってきたでしょ?
で、早速鏡面仕上げに入るので…
お風呂に入る!
いや、「物事をなす前に身を清める」っていう刀匠みたいなことではなくて、お風呂で削る。
風呂で!?と思われたかもしれないけど、今回の研磨作業の時はお風呂が一番いいと思った。水に濡らしながら研磨する「水研ぎ」を、特に何も準備せずに行えるし。羊の角はたんぱく質なので、パイプに引っかかっても髪の毛溶かすやつで一緒に溶けてくれるからね!
耐水紙やすりを持ち込み、半身浴をしながらひたすら削る。心と体と羊の角がきれいになるというシナジーがありつつも。30分くらい半身浴ついでに研磨する。
そして仕上げは…車用の研磨剤(コンパウンド)!
おそらくどこのホームセンターにも売っている、カー用品店なら間違いなくある、この研磨剤。
車用じゃねーか!
とおもうかもしれないけど、研磨剤は研磨剤。何に使っても、いいのだ…!
今回はそんなに量を使うわけじゃないから、このくらいの量で3つセットになっている車用の研磨剤はとても便利。一晩細かいもので1ミクロンの研磨剤なので、番手にするとおよそ8000番。これだけやれば、相当な光が…差し込んでくるに違いない。
風呂場での手研磨に体力的な限界を感じた俺は、早速文明の利器に頼ることにした。ミニルーターである。ちなにみ「ルーター」というのは5kgくらいのものすごいゴツイやつなので、ちゃんと「ミニルーター」と分けて呼んでおきたい。いや本当にごついからね!ルーターは!
ミニルーターは削り、穴開け、研磨、ガラスや金属切断、彫刻(ガラス彫刻も)とマルチに使える大変素晴らしい道具で、これがあるとDIYライフが飛躍的にパワーアップするので、余裕と今後の野心が十分にあるのなら、一個手元に置いておいてもいいと思う。研磨に限れば3000円くらいのやつでも大丈夫。ミニルーターで穴開けは正直きついおで、穴開けメインの人は素直にドリルドライバーにしよう。
で、この車用のコンパウンドを、ミニルーター用のバフ(100円ショップで売ってるやつで十分)につけるんだけど…たくさんつけすぎると飛び散って大変なことになるので、ほんの少し指に取って、バフにこすりつけて浸透させる。これで飛び散らない。
あとはひたすら研磨!これがめっちゃ楽しい。ミニルーターはいいぞ。
研磨のコツとして、右利きの場合は向こう側からこちら側にスプーンですくうようにかけて行くといい。あまり一か所に強く押しつけると、バフが焦げたり、今回は羊の角も焦げるので十分注意して。金属部品の場合は熱が半端なくなるぞ!
穴の部分は…綿棒で対応する!
…いいんだよ!
綿棒の太さがちょうどミニルーターの軸受けに入ったので、お高いミニルーター用のビットを買わずに済ませることができたぜ…!
意外にも綿棒は軸ブレが少ないことが分かった。綿棒になぜそこまでの技術を…!
さすがに綿棒だけあって、研磨の際のヘリがすごいことになっているけど、交換の手間を惜しまなければ全部綿棒で行けるのかもしれない…!
さて、これでおよそ8000番のやすりをかけたことになり、なかなかのツヤが出てきた!
このまま完成、ということでもよかったんだけど…ホームセンターでこんなものを見つけてしまった。
驚異の15000番。
もはや普通のフィルムにも思える滑らかさ。
でも確かにちょっとだけキュッとする…。
ここまで来たからにはやるしかないな、とばかりに削って?いくんだけれども…
削れてるかどうかわからない!
わ、わからない!
削りかすなんてでないし、これは…綺麗になっている、のか…!?
わ、わからない!
試しにそこにあった真鍮の棒を削って?みたら、確かに黒い鉄粉がついたので、削れてはいるのだろうけれども…
わからない!
俺の目は…節穴だったというのか…!
でもなんとなく…心の目で見ればそれなりに…より美しくなっているような…
気がしなくも…
ないということにする!
写真ではわかりにくいけど、いやぁなかなか、綺麗になったよ。
ちょっとオレンジ色っぽいかんじかな。
羊の角の先端なので微妙にねじれているんだけど、それが以外に手にフィットするから、これは使いやすいかも。
うっすらと光が透過して綺麗だし、今回はきちんと毛糸が通る溝を作ったから、縫いやすいはず!
とりあえずこれで、中断していた帽子作りを再開せねばなるまいね!
とか言いながら…
研磨の魅力に目覚めてしまったので…
さて、どうなるかな。 pic.twitter.com/bLmYZzTijy
— yajul (@yajul) 2017年11月23日
ついに金属に手を出してしまうという!
この金属針の顛末については、また次に書きたいと思う。
ぼ、帽子を完成させないと…!
羊角クラフト - アンドロイドならずとも羊の夢は -
11月19日にpresseさんで行われたニットカフェに参加してきた!
参加はこれで二回目なんだけど、何せ俺は編み物の基本を全く知らない男。果たしてどういうスタンスで参加するべきなのか未だわかっていないという、圧倒的借りてきた猫感を醸し出しつつの参加だったけど、今回も楽しかった。
しかし大丈夫かな!?俺が参加していても!?
という一抹のモノはありつつも、今回は北村系子先生から羊の角を譲り受けることになっていたのでひるんでいる場合ではない。羊の角という魔性のアイテムが俺を突き動かすわけだよ。欲望というのは、果てしないからな…!*1
この羊の角は、北村先生がノールビンドニング用の針を作った残りの部分なんだけど(大変すばらしい針だった)、それを幸運にもいただくことができた。さすがに残りの部分だけあって加工しにくい先端部分だけど、何せレアアイテムだしな!細かい破片はボタンにすることもできるはず。
写真の右側にある太い奴は鹿の角。これももらうことができた。この部分は気合を入れてドリルで穴をあけることにより、指輪として利用することが可能。…相当な気合が必要なので、なかなかやる勇気は出ないのがつらいところだが!
この羊の角は長さは約12cm。俺が普段使っている針よりかなり短いけれど、その分曲がりが強いので、ロシアンステッチやターニングステッチなど針をひねる動作が多いステッチに向いた針を作ることができるはず。
そういうわけで、さっそく加工をしてみよう!
…と、意気込んでみたものの、ちょっとこれは想像以上に短い!
や、「短くなりすぎて使えないから」ということで譲り受けたので当然なんだが!
これをそのまま全部削って1本の針にするのはもったいなさすぎる。できることなら子の角を半分か4分割して、数本の針を作りたい。
しかしどうすれば、この短すぎて押さえつけることができない角を切り出すか?
当然、電動工具は使えない。
下手にやったら指が飛ぶからな…!それは避けたい。誰だって避けたいと思う。君が避けたいように。
なので必然、糸鋸で地道に切っていくことになるんだけど…。
角は硬い。
この当然の事実が俺に実感となって襲い掛かってくる。そうだ、角は硬いんだ。いやぁ、角は硬い。硬いんだよ。
だからこの圧倒的硬度を誇る角に、貧弱な糸鋸一本で立ち向かうには相当の時間と、肉体的な疲労を要する。それは避けたい。君が避けたいように。
かといって、糸鋸盤があるところまで行くのもちょっと大変。この雪だし。それは避けたい。…そのくらいの手間は惜しむなよという声は聞こえるけれども!
そこで、ちょっとした力業でやることにした。
男の武器、ドリルを使ってな…!
切りたいところにあらかじめドリルで穴を空けまくり、糸鋸で切る距離を大幅に減らそうという計画…!まともにこの距離を糸鋸で切るとなると大変だけど、ドリルの間隔だけ切っていくのなら精神的にも、物理的にも楽だ。それに、切りやすくもなるからね。
途中でドリルが折れるというハプニングはあったものの、すべて穴を空けきることができた。
ドリルは偉大。
みんなもっとドリルのパワーに目を向けるべき。
あとひたすら切っていくだけなんだけど…俺には一つの懸念があった。
ニオイである。
以前鹿の角を加工したときに…削ったときの硫黄の臭いに苦しめられた記憶が俺の手を止める。大丈夫なのかこれ…。鹿さんはあんなだったけど、羊さんはどうなんだ…。やっぱり同じなのか…。
恐る恐る鋸をひいていくと…
確かにニオイが、する!
…しかしこれは、鹿の角より臭くない!
確かに同系統のケラチンを燃焼させたニオイだけれども、何か香ばしい…どこかで嗅いだニオイが…!
これはスルメだ。
スルメの匂いが、する!
スルメイカを焼いた匂いが…!
マスクの上にスヌード(作ったやつ)をまいて完全に防御したが、スルメ臭ということなら話は別だ。俺はスルメを愛する男だからな…!
角クラフトをするうえで最大の難関をクリアした今、もうなにも止めるものはない。
よく見れば、羊の角の部分はどことなくホタテの貝柱っぽいアトモスフィアがあるしな…!
これはいける。
そんなこんなで、切れた!
時間的には20分かかってないように思う。大分楽をすることができた。
こちら断面図。
雪からの照り返しがキツいのでちょっと色がわかりにくいかもしれないんだけど…
なんか、美味しそうじゃないか!?
貝柱とクリームチーズみたいな…。
貝柱にクリームチーズは正直どうなのよと思わなくもないが、あらゆる食材にあうのがチーズの恐ろしいところだし、きっと美味しい。
…
誘惑に負けて、実はちょっとかじってみた。
…何か、こう、確認せねばならない気がして…!
味は当然ながら、なかった。感覚的には爪をかじるのに近い。いや羊の角も爪と同じ成分だから、その通りだともいえるんだけども!
や、でもこれ、美味しそうじゃない?本当に。
…俺の主張が受け入れられるかは別にして、この二つに割った角をさらに分割する。
またドリルで穴を開けて…
今度は縦割りする!
さっきと違って、今後は一直線で切れるからとても楽。
絶対に美味しいよこれ。
作業台の木切れがまな板に見えてきたよ。削りかすは塩に!
どうでもいいんだけど、強烈に硬いかぼちゃを切るときにはのこぎり使ってもいいと思う。電子レンジで温めても結構硬いぜ、あれ。もちろん、木を切った後のを使えとは言わないから。一つの可能性として。
で、ここまで来たら後はいつもの工程。
ドリルで穴を開け、ディスクグラインダーで大まかな形をとっていく。
だいたいの形になったら、180番くらいの紙やすりでディスクグラインダーのナイフマークを消す。そして後はやすりの番手を上げて 、美しく仕上げて行く。
こんな感じ。クリームチーズ部分は残したほうが綺麗だと思った。だが、残念ながらこの工程で美味しさは失われ、綺麗さだけが残った。個人的に、美味しそうな針になるかとちょっと期待をしていたのだが…!
とりあえず、800番までやすりをかけて今回は終了。というか俺、800番より上のやすり持ってないんだよ。木工だと大体800まで行けば十分だからね。
北村先生専属の羊角研ぎ師の方は、液体コンパウンドまで使用して研いだらしい。やすりも爪やすりでもOKだとか。確かに角と爪は同じだから、理にかなっている!
さらにその方の旦那さんはプラモデル好きだそうで、なるほど確かにこの工程はプラモデル感があってとても納得してしまった。プラモデルも、複雑な形のものを鏡面仕上げにしたりするもんなー。
俺もプラモ狂四郎で育った男として、一通りのプラモデル知識は持っている。当時は全く憧れなかったが、今の俺は模型秘伝帳・木ノ巻に大変なロマンを感じる。無敵球の茂合岩男先生に弟子入りしたい。なんで名前がモアイなのに見た目が油すましなんだ。
茂合岩男先生の雄姿についてはいつか熱く語るときが来るとして、羊角の仕上げはプラモデル方式でOKという勇気を得たので、今度の休みに出も材料を買いだしつつ、「ねんがんの羊の角の針」をこの手にしたいと思う!
*1:先日、国連で象牙取引に関して日本が名指しで批判された。なので象牙はたとえ手に入ってもちょっとやめておいたほうがいいと思われるね。ダメって言われたからやらないってわけじゃなく、こう、羊の角のように副産物としてとれるものと、それのために狩るというのではだいぶ状況は違うから。もちろん、問題になる前に流通している象牙についてはそこまで問題とはならないだろうけど、やっぱり心情的にね。鹿さんの場合は毎年生え変わるのでむしろ積極的に使っていきたいところだが!
ハロウィーン、クリスマス、お葬式…無節操に見えるけど、実は中身は儒教で一貫している
ハロウィーンが過ぎ、クリスマスに向けて加速していく2017年。
最近ではクリスマスの前の準備期間である「アドベント(待降節)」も徐々に商業イベントとして注目されるようになってきたね。そのうちアドベント期間中に食べるシュトーレンがコンビニで売られることになりそう。もうすでに売ってるかもしれないけど。
年末から年始にかけて、クリスマス-除夜の鐘-初詣とキリスト教、仏教、神道と3宗教にまたがるイベントをこなしていくのが俺たち日本人の習わしとなって久しい。これを「宗教に寛容」ととらえるか、「無節操」と感じるかはそれぞれだけど、いずれにしても表裏一体なものだろうと思う。
個人的には…日本人は寛容でもなく無節操というほどでもなく、ただ「無自覚」なのではないかと思う。
ここでひとつ考えてみてほしい。
「道徳やマナーを一言(短い言葉)で言いあらわすと?」
もちろん答えは無数にあると思うけど、「大多数が同意するような道徳」の中でトップに入るのは、
「自分がされて嫌なことは、他人にもしちゃだめ」
ではなないだろうか。
少なくとも間違ったことは言ってない。それにたぶん似たようなことは子供のころから聞かされてきているはず。
これの元ネタが何かというと…それはもちろん、あの偉大なる東洋の巨人。物理的な意味でも巨人(身長190cm)であるところの孔子、孔丘先生その人である。この人が何気なく放った一言が東アジアの道徳の基本になった。( 己の欲せざる所は人に施す勿れ)
そのほか、論語や大学には「当たり前すぎて今更感あふれる道徳の話」が満載で、おそらく俺たちが漢文の授業で眠りに落ちるのも、この圧倒的な「当たり前感」が原因の一つにはなっているはずだ。
当たり前すぎて新鮮味がない。
しかし逆に言えば、それほどまでに影響が強いともいえる。学校で習う以前からすでに知っているレベルで浸透している。
俺が思うところ、日本は相当な儒教国家だ。
儒教と聞くと、うぇーーーと思う人もいると思うのだけど、儒教を基準に日本の宗教観を見ると、かなりいろんな部分が納得できるものになると思う。
日本人は無節操でも特別に寛容でもない。儒教的なだけなのではないか。
例えば、祖先を大事にする考え方。
これは儒教的と言っていい。仏教も神道も、実はさほど祖先には気を配ってない。
仏教だとシッダールタ先生は「十無記」で「死後のことはわからない。わからないものは私は語らない。死後の世界があるかないか、それにかかわらず人間は現生で苦しんでいるだろう。私はその苦しみを取り除きたいのだよ」と、有名な毒矢のたとえで言っているし、神道では死は穢れなので、なるべく遠ざけたいものだ(イザナミねえさんのことを思い出すんだ!)。
「先祖を敬おうぜ!」というのは、実は儒教のメイン道徳だったりする。仏教じゃない。一周忌とかも、もとは儒教の葬儀形式だ。孔子の直弟子のレベルになると、孔子の葬儀の後6年間も喪に服したというツワモノが存在する。
また、儒教の形式主義的なところも批判されはするけど、「内心でどう思っていようとも、形式をガチっと決めてそれに従えば、とりあえず物事は前に進む」という、精神的には後ろ向きかもしれないが物理的には前に進むという効果もある。もちろん孔丘先生は「衷心からそれを行うのが大事だ」と言っているけどね。弊害は多いけど、それを補って余りある恩恵があるのも確かだ。2000年前に官僚制を確立させた儒教のパワーは半端ではない。
そしてこの儒教の「とりあえず形式を決める」「そういうことになってるなら、したほうがいい」「(他文化の)形式を尊重する」という部分が、まさに日本の各種宗教イベントに対する感覚なのではないかと思う。
クリスマスは、飾りつけをしてケーキを食べるらしいから、その形式を尊重する。
バレンタインは、意中の人にチョコレートを贈るらしいから、その形式を尊重する。
ハロウィーンは…
初詣は…
節分は…
葬式は…
それを企画した人が誰なのか、どういう意図があるかはさほど関係ない。
形式や様式を尊べば、「宗教に寛容な感じ」になってあんまり角が立たない!
いや、何かヤな感じに聞こえるかもしれないけど、俺はこの姿勢は悪くないと思っている!いきなり「どっちかに合わせろ!」とキビしい感じなるのでなく、「そういうものなんだね!」とポジティブに受け入れていく方式。これは別に悪くないでしょ?
結婚式はだいたいチャペル式、神前式、仏式(あんまり聞かないけど)からどれかを選択するけれど、そこに共通しているのは「何かしら儀式やったほうがおさまりがいいよね」という感覚で、これこそが儒教的感覚なのだと思っている。
(逆の「そんな儀式なんてくだらねぇ!俺は形式でなく、心から愛しているから儀式なんてものは必要ないんだよ!」という姿勢も「なんという仁義の士よ!」と儒教に回収されていくという恐ろしいスパイラルが待っている。儀式を基準に物事を考える点では、両者は同じだ。)
そして、その儒教的なものに無自覚だから「日本人は宗教に寛容」「日本人は無節操」と思ってしまう。でも実際は、儒教的な立場から他文化を尊重しているわけで、寛容というほど受け入れず、無節操というほど蔑ろにせず、ほどよい距離を保って尊重することができている。
儒教を悪く思う人は多いけど、この「ほどよく距離を保って尊重する」というのは儒教のおかげだろうと思う。
新しい文化が入ってきたとき、「なるほど、そういうものがあるのか、なら尊重しようね」となるのは儒教の利点かなと。
俺も近年までは、「なんと無節操な…」とか「節分に恵方巻とか正直どうよ…」と思っていたけれど、この「とりあえず儀式として取り込んで尊重する」という儒教的スタンスに気づいてからはあんまり嫌に思うこともなくなった。むしろ恵方ウェルカム!巻きずしは美味いからな…!
ボージョレヌーボーの解禁がまさに明日だけど…「そういうもの」として受け入れる準備は万全だぜ!
孔丘先生はとある儀式を行うとき、実際はその儀式について精通しているにもかかわらず、その儀式の専門家に一つひとつ「これはこの順番で正しいですか?」と確認しながら行い、専門家を尊重する姿勢を崩さなかったという。
…まぁちょっとこう、いやらしい感じがしなくもないが、その精神は素晴らしいものだろう。それにたぶん、孔丘先生なら本心から相手を尊重してたのだろうしな。
俺も、儒教のライトサイドを信奉する者として…他文化を尊重する精神を崩さないでいたいものだぜ。
儒教は悪い面がクローズアップされがちだけど、春秋戦国時代という暴力が支配するカオス極まる世紀末に、毅然として正論をもって立ち向かい、ついに勝利した男たちの物語でもあるので、悪い面ばかりでなく良い面にも目を向けてくれればな、と思う。
確かに腐敗もしたし、正直それはどうよ?な面は多々あるけれど、その根本にある精神は間違いなく熱いからね!
ノールビンドニング - 長い毛糸を折り返して短く使う方法 -
ノールビンドニングをやっていると、「可能な限り毛糸を長く使いたい」と思うのは多分、全世界共通の認識だと思う。
俺もそうだし、これを読んでいるあなたもそうだろう。そして当然ながら、1000年以上前の人もそうだっただろう。
長い毛糸を上手に折りたたんで短く使うために穴が二つ開いたノールビンドニング用の針を使うわけだけど、針に穴が一個しかない場合はどうするか。
その疑問に、いつものお姉さん、いわゆる女神がきちんと解決方法を紹介してくれていたので、感謝とともに紹介しようと思う。
流石としか言いようがないな!
Haahlaaminen - Handling long yarn - Neulakinnas, Nalbinding
このような方法が!
見た目に美しく実用的で、最後にほどけて行く様はちょっと感動するね。
これで、「お気に入りの針には穴が一つしかない」という問題も解決する!
と思う!
それにしてもありがたい時代だよね。
これでアクリルや綿、麻などのつなぎにくい糸も比較的楽に使えるようになるかもしれないね!
失われないものを求めて
コンビニのお手洗いで用を足したとき、俺は気がついた。
俺に残されている時間は、どうやら少ないことを。
もってあと一年か…あるいは…。
確実に髪の毛が減っている。
いや減っているというものではない!
明確に、「無さ」が!
「無」が!
増えてきている!
「減ったねぇ」じゃなく…
「よりいっそう無くなったね」
という恐ろしいパラダイムシフトが起きてしまった。
もはや阻止限界点は過ぎているらしい。
いつか、そのうち、近いうちに、もうすぐ…覚悟はしていたはずだが、いざ目の前に事実が迫ってくると、人間というのは脆い。
たしかに、俺の父も、母方の祖父も"そう"だったのだから、俺が"そう"ならない理由がない。そういうこともあって、「まぁいずれは絶対に"そう"なるからな」と"それ"のケアをしていなかったというものあるけれど。
いつも傍にいるものを、ある日突然失って始めてわかる大切さ。
全く…
失うことに慣れているはずの俺だけども…
…
……
しかし運命(さだめ)ならそれは仕方がない。
仕方ないものは仕方ないから、仕方ないところ以外の部分で頑張らないといけない。
つまり帽子を!
早急に作らなければならないな!
そういうことにしておく!
可能な限り前向きな姿勢で!
しかし、帽子は実はまだ作れていない。
いや、最初に作ったポットカバーは確かに帽子になるんだけど。あれはさすがに、こう、な?
それでベレー帽を作ろうと実は3回くらい挑戦していたんだけど、いずれも…「何かこれは違うんじゃないか」「柔らかすぎて多分これはひどいことになる」「なにかノらない」という理由で断念していた。
やっぱり、情熱が続かないものというのは、無理に続けると情熱の源泉そのものが枯れてしまう。だから「なんかなー」と思ったときはさっぱりとそこでやめたほうがいいと思う。いや、さすがに仕事とかはそうはいかないけど。趣味や楽しみなら情熱を最重視するべきと思う。という言い訳を。
そういうわけで、ベレー帽は今は無理。今後再挑戦の機運が高まるまで、手を付けないほうがいい気がした。
では、この俺の…問題はどうするのか。
普通のニット帽子は俺、似合わないんだよね。多分。
それでどうするかなぁとごそごそとクローゼットを探してみると、唯一、似合う帽子が出てきた。
サファリハット。
これならいける!今年の夏の間は基本的に被ってたし。
…この帽子が原因な気がしなくもないが…そこには目をつぶる方向で行くとして!
広いツバがある帽子のほうが多分、いい!
ならばそれでいこう!
サファリハット的な、形のものを!
ツバを維持できるくらい硬い毛糸を、ツバを維持できるくらい硬いステッチで!
そうすれば、何かしらの光が見えてくるはずだぜ…!
しかしそんな太くて硬い毛糸はそうそう売っているものではない。
今までいくつか手芸屋さんを見て回ったが、大体はふわっふわの…極めてガーリィな…いやそれはそれで大好きだけど…俺の"それ"にはいかんともしがたいゆるふわ感が前面に押し出されている感じなので…より男っぽい、バリカタ、いやハリガネ級の毛糸を俺は求めた。殆どゆでてないんじゃないかみたいな。そういう毛糸を、ヤーンを、探し求めたわけだよ…!
とはいえ、実は心当たりはあった。
前回、ニットカフェにお邪魔した時にpresseさんのところで男っぽい毛糸を見せてもらったので、要するにあれを使えばいいのだ。ちょうど男っぽい羊の人がラベルに描かれていたし。あれこそはわが光。
これは、やるしかないようだな…。
それで意を決して、11/3という休日を利用して俺は行ってみたんだが…。
…閉まってた!
たしかに!
11月の3日から東京行くって言ってたもんな!
お店は休みだった!
この失態。
俺は何かがはらりと落ちる音を聞いた。
季節外れの桜が。最後の一葉が。
これは危険!
次の機会まで待つという選択肢は、今の俺には、あんまりない!
そういうわけで、悩んだ末に…
以前母に教えてもらった「マリヤ手芸店」に行ってみることにした。時計台の向かいにある、大変素晴らしい手芸店だそうだ。俺の好みを熟知する母がそういうのだから、おそらく大丈夫なはずだ。
それで円山から歩くこと40分、「日本三大がっかり観光地」の一角をなす札幌時計台にやってきた。残りの二つは知らないけれども。
しかしどうなんだろう。時計台に何を求めているのだろうか。
大体のがっかり感は「意外と小さい」ということらしいんだけど、巨大であればそれでいいというわけじゃないだろう。
そもそも時計台はもともとは演武場であり集会場である要するに現代で言えば体育館だ。体育館として見れば、あれほどモダンな体育館もないだろう。時計と鐘がついているので集会場としての機能も万全。
そして特筆すべきは、あの時計台こそが(ほぼ)日本初のツーバイフォー建築だということだ。初じゃないかもしれないけど、最初期のツーバイフォー建築として今に残る貴重すぎる建物。つまり、太い柱を立ててそこから梁を渡していく建築でなく、全体を均一に木材で覆うことによって強度を出している。赤毛のアンの家もツーバイフォー建築だ。
そんなアメリカ中西部の趣を感じさせつつ、百葉箱のような真白い壁がかもしだす異国情緒。北国の清涼感。これはまさに北海道のイメージそのものだし、柱がないツーバイフォー建築でも、北海道の冬を十分に越すことができるという圧倒的な説得力を体現している。しかも北海道は他都府県に比べてツーバイフォー建築の割合が多い。それは時計台あってこそなのかもしれない。
このロマンよ。これは声を大にしていいたいし、おそらく「三大がっかり」の残り二つにも何か圧倒的な魅力があるに違いないのだ。
いいかい、今度から時計台を見るときは、心に赤毛のアンを住まわせてから見るんだぞ!
…
……時計台への情熱は理解していただいたとして!
その向かいにあるマリヤ手芸店である。
結論から言うと。
店頭においてあった毛糸に一目ぼれした!
俺が求めていたのは…このバリバリ感…!
チクチクする毛糸は苦手だったけど、それを超えるバリガリ感ならオーケーだ!
というか多分、自分で縫ったやつなら何でも大丈夫なんだろうな。
…愛する人からもらったものならなおさらだろう。多分な!
でもこれ、このバリバリの…ガリガリの毛糸は、何か名前がついているのだろうか?
今一つ分からない。毛糸歴2か月の俺に太刀打ちできる物ではないのだろうか。
しかし好みは好み。臆することはないはずだ。
せっかくだから俺はこの黒い毛糸を選ぶぜ!
そうして毛糸を持ち帰ったわけだけれども、いかんせん、「カセ」の状態の毛糸を扱うのは初めてだ。調べたところによると、「カセ」状態の毛糸は、まず玉の状態に巻き直してから使うのが一般的らしい。
玉にまくためには、カセ繰り機と玉巻機を使い、美しく仕上げて行く。
俺たちが普段見ている毛糸の玉は、そうやって作られているのだ。
なるほど。
しかしもうすでに俺は家に戻ってしまった。どうしよう?
カセ繰り機と、玉巻き機か…。
やはり今後のことも考えれば、必要になるものなのかな?
と、若干テンションが落ちかけた俺に、脳内でマリーがささやく。
「どうせ千切って使うんだから、適当にかけておけばそれでいいじゃない」
なるほどそうか!
俺がやるのはノールビンドニング。つまりはそういうことだ。あんま美しくなくても大丈夫。それに何度も千切ってつかうから、絡む心配はそもそもあんまりしなくていいのか。
マリーにあるまじき蛮族提案だったが、ありがたく思いつつとりあえず適当に吊るしておいて、必要な分だけちぎって使うことでこの問題は解決した!
俺はすっかり基本を見失っていたよ…!
これは北欧ヴァイキングの編み物…!
蛮族対応はいよろこんで!
いや、決してヴァイキングは蛮族ではないが!心持として!
そして今回、目数を数えるための目数リングを初めて導入したことによって(ハリガネ曲げただけの蛮族対応)、ヴァイキング的おおらかさの中にひとすじのマリー感がプラスされ、なんとなくシナジーが生まれてきたような気もしている。
これからツバの部分にとりかかるところ。
今週末には完成を見たいと思う!
果たして出来上がった帽子が、うまくできているか、そもそも似合うのかという問題は残されているものの…!
ノールビンドニング - クロトーのようにつないで -
ノールビンドニング、この素晴らしい技法を学んでいくうえで、俺には一つの懸念があった。
それは、「何度も何度も毛糸をちぎってつなぐ作業をする必要がある」ということ。
ノールビンドニングは縫い物に近い編み物なので、通常のニッティングのように毛糸が続く限り無限に編めるというものではない。かっこよく言えば、己の手で有限を選択せねばならない。
毛糸を短く切れば縫いやすいけど、すぐになくなってしまう。
かといって毛糸を長く長く切ると、途中で絡まるという大変なストレスを抱えることになる。
このディレンマ。
もっとも、これがあるからこそ一区切りがつきやすいということもあるけれど。
「このくらいの長さの毛糸なら5分だな…」みたいに感覚でわかってくるので、カップラーメンのタイマーとしても使うことが可能だし。煮込み料理のタイマーとしても使えるかもしれないな…!
しかし、やはり毛糸問題は付きまとう。
それを解決すべく毛糸ちぎり機を作ってみたのだけど、彼は儚くも散ってしまった。
毛糸ちぎり機の悲劇は悲劇として受け止めるとして、問題はまだ、もう一つ存在する。
毛糸をつなぐとき、手が結構、痛いんだよね…!
北村先生の教えの一つ「毛糸をつなぐときは火が出るくらいに」を忠実に守り続けた結果、実は俺は、「手をこすり合わせるとき、右手の薬指が前に出る癖」があることが分かった!
つまり、両手をすりすりとこすりあわせるときに、右手の薬指が左手に強く当たる。
というか、よくよく見ると、俺は右薬指第二関節が、外側に大きく曲がるらしい。だから指を伸ばしきった時に第二関節が前に出て、それでその部分だけ痛くなるようだ。
自分の体の理解が深まったのは喜ばしいが!
いかんせん痛い!
どうでもいいんだけど、親指の第一関節が外側に大きく曲がる人と間がらない人がいて、これは遺伝の影響なので、両親のうちどちらかは同じ曲がり方をするので確かめてみるといい!俺と父は曲がるタイプで、母と兄は曲がないタイプ。
で、これがあるばっかりに、「薬指が痛くなってきたら本日のノールビンドニング終了の合図」となっていた。
大体5時間くらいが限界。
これは、だめだ。
このままではなんとなく、ダメな気がする!
そこで、この問題を解決するために…考える葦である俺は…やはり作ることにした!
毛糸つなぎ機を!
ギリシャ神話の運命の女神、クロトー、ラケシス、アトロポスのモイライ三姉妹が糸をつむぎ、編み、ちぎるように、俺も編むことを覚えたならば、つないだりちぎったりすることにも同様の情熱を注がねばならないと思う。いやまぁ、つむぐのとつなぐのではだいぶ違うとは思うけど。そこはほら、ロマン優先で。
それで、ノールビンドニングでは毛糸は一般的(なのか?)に、手のひらでこすり合わせ、摩擦によって毛糸の温度をあげてフェルト化し、しっかりと絡みつかせる。
この理屈を、道具によって再現すればいいわけだ。
なので必要なのは、毛糸をホールドしつつ適度な摩擦を与えられる何か、だ。
人間の手のひらは非常に良くできていて、細かなシワや指紋と汗が絶妙な摩擦を生みだし、あらゆるものをつかむことができるセンサー付きの最強のマニュピレーターだ。この圧倒的性能に迫るには、並大抵の素材ではうまくいかない。
粗い紙、コルク、布、いろいろ検討してみたけれど、なかなかいい素材がない。
何か…何かないか…?
仕事そっちのけで悩んでいたとき、ふと気づいた。
「皮の代わりがないなら皮を使えばいいじゃない」
それだ!
さすがに皮というわけにはいかないから、革を使おう!
革、革はどこかにないか。手ごろな革…本革を…。
手芸店に買いに走るか…?
いや待て!
革はここにある!
まさに今、俺が仕事に常用している、革手袋!
男の店・ワークマンで数百円で売っている、圧倒的コストパフォーマンスを誇る革。これを使えば、いけるんじゃないか?
こんな風に!
そういうわけで、革手袋の手首のあたりを切って、適当な木片にタッカーで留めて、その革つき木片ふたつで毛糸をはさみ、火が出るくらいにこする!
すると!
…もうすでに画像で結果は見えているけど!
できた!
毛糸が、つながったわけだよ!
毛糸ちぎり機の悲劇再びは、なかった…!
でもちょっと、やっぱり手でやるより緩い。
あと、革のくずがちょっとはいる。
さらに、革の匂いが結構移る。
…まぁそのあたりは!
目をつぶる方向で!
それにこれ、試作に使ったのは安い毛糸だから、それである程度つながるということは、きちんとした毛糸ならより繋がってくれると思われるので。
試作の成功を受けて、試作第二号を真剣に作ってみる。
木片を手に取りやすい大きさにカットして。
革は…とりあえず画鋲対応で!
…DIYだからこのくらいの感じで許してほしい!
使っている木材はチーク。チークはヨットのボディにも使われるように、水に対してとっても強い。毛糸つなぎには霧吹きが必要になるから、木材にかかっても平気なように。
革は定期的に取り換えないといけないと思うけどね。
そして、試作第二弾の完成!
ちゃんとつなげた!
…ちょっと緩いけど…!
そこは、慎重に縫うとかして何とか、やっていこうと、思う。
うーん。
まぁ、ずっとこれを使うんじゃなくて、手がちょっと痛くなってきたらこれにバトンタッチする、みたいな運用でいいかなぁと、ね!
すっごい雑な作りだけど(いつものことながら)、やはり完成してみると愛着は出てくるね!
これで、限界を突破して縫い続けることが可能になりそうだぜ…!