ボビーって…誰なんだ…?謎の「ボビーカスタム アーキテクトニブ」を体験した

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万年筆の話である。

そして、今から俺が語るのは、ボビーの話だ。

ボビーというのはつまり、ボブであり、時にはバーティーであり、バートであったりロブであったりする英語の名前のことだ。そしてそれらはすなわち「ロバート」の愛称である。

「ロバート」と聞けばなんかちょっと知的な長身男性が思い浮かぶのは俺だけだろうか。

そして「ボビー」となると屈強なタフガイしか思い浮かばない。

これは危険だ。

名前のイメージに惑わされてレッテルを貼りそうになってしまう。

ボビーについて語るには、まずこの先入観から捨て去らねばならない。

 

ボビーとの出会い

正確に言えば、俺はボビーとは出会っていない。

…当たり前だが!

まずは経緯を話そう。いきなりボビーとか言われても全く分からないからな…!

先日…この恐るべきコロナ禍の中で、俺はついに海外通販に手を出してしまった。

Aliexpressである。説明は省くけれども、「中国の楽天」と思ってもらえればそれで大丈夫だ。大きなオンラインモールがあって、そこにいろんなお店が出店している。

で、何せ安い。

凄まじい安さだぞ!

Tシャツが234円とかで売っている…。

まぁ、「ペラッペラだぞ!」とかレビューに書いてあるので「だろうな…」という感はあるが、それでもこの膨大な商品の山から宝を探すのは楽しいものだ。

で、とりあえず何を探そうか?お決まりの中華スマホなどでも巡ってみようか?と思ったのだが、別にスマホに困っていないのでさほどモチベーションもわかない。

もっとこう…妖しくてなおかつテンションが上がる商品はないか…?

と思った時に、やはりこれは万年筆ではないか、と思ったわけだよ。

中華万年筆。

危険な香りである。

いや、まぁ俺はすでに何本か所有しているし、最近はamazonへの進出も著しく、意外と名の通った存在になりつつあるのだが。

そういうわけで中華万年筆の本場では一体何があるのかと考え、日夜検索していた。

ぶっちゃけて言えば中華万年筆はだいたい何かのパクリだったりするのだが…中華万年筆界隈においては、わけのわからんニセモノがひたすら跋扈しているというわけではなく、「出自のはっきりしているちゃんとしたパクリ商品がある」というような感じだ。

なんだよそれ…と思われるかもしれないが…。

デザインはものすごいパクリではあるけれど、ちゃんと独自のブランド名を名乗っているというか…。

ロゴを「ROREX」みたいにするのではなく、あくまで独自のブランドを名乗りつつ、製品は大いにパクっている、みたいな。

罪の重さは変わらないかもしれないが、なんというか、こう、うーん、「そのブランドを見ればすぐにコピーとわかる」という点では一抹の擁護の点が見つかるのでは…というか…

まぁ、この辺の是非についてはここでは語らないでおこう。

もちろん、ごく少数だけどパクリではなくオリジナルを作っているところもある。

それにまぁ、日本の国産万年筆だってドイツのモンブランのパクリでしょみたいな話にもなりそうでちょっと、こう、大変な話になっちゃうからね!

 

ボビーの話に戻ろう。

そう、俺はボビーの話をしたいんだ。

これは長い話になる。

そのうえ、たいして実りのある情報はない。

すまない…。

 

で、Aliexpressで「ちゃんとしたパクリ製品」の海の中をかき分けていると、なんだかところどころに「ボビー」という名前がある。

最初は、Aliexpress特有の訳しきれていない怪しげな日本語なのかと思ってスルーしていた。

しかし、何か気になる。

ボビーはボビーのはずだ。英語でBobbyだ。何かを誤訳してボビーになることはないだろう。

ということは、製品名に「Bobby」と書かれているということだ。

 

ボビーって誰なんだよ…。

 

俺もそこそこ中華万年筆に詳しい男だが、「ボビー」は知らねぇ!

ボビーってブランドなのか!?

そ、そのブランド名でイケると思ったのか!?

誰だよボビー!

 

気が付けば、寝ても覚めても「ボビーって誰だよ…」と考えてしまっていた。

俺は脳の中をボビーに支配されてしまったのだ。

 

ボビーの扱う製品は

何となく、今更「君の名は」に寄せてボビーを語りたくなったけれども、ボビーはすでに明確にボビーなので、名を尋ねる必要はない。ボビーって最初から名乗ってるだろ!と言われて終わりだ。

ボビーであることはよくわかっている。

その中身が知りたいのだ。

だから「ボビーの名は」とか、そういうバカなことを考えても結局は「ボビーって誰だよ」にしかならない。

すまん。

 

で、ボビー製品をつぶさに見ていくと….

どうやらボビーは会社名やブランド名ではなく、「ボビーなる人物がカスタムした万年筆」であることは分かった。

万年筆は古い製品なので、さほど技術力は要しない…というと怒られてしまいそうだが、ボールペンよりは加工が簡単なのは間違いない。

だから、万年筆をハンドメイドする人とか、改造する人とかは結構たくさんいる。

どうやらボビーは万年筆をカスタムしている職人の名であるということまでは分かった。

 

ボビー捜索

ボビーがカスタムした万年筆のことはいくつかのフォーラムで語られていたが、何者なのかという情報はなかなかつかめなかった。

そもそも、Aliexpressにボビーカスタムを出品している人がボビー本人なのかわからない。Etsyにもボビーカスタムは出品されているのだが、出店している店舗の名前が違うのだ。

となれば、ボビーなる人物は表に出ず、闇の万年筆業界に潜んでいて、そこからボビーカスタムが細々と出荷されているのかもしれない。

あるいは、万年筆をカスタムせしめんとする謎の秘密結社が存在して、彼らがカスタムしたものが総じて「ボビー」という名を冠しているのかもしれない。

謎が謎を呼び、ついに俺の精神が月刊ムーの境地にまで達したとき、ふとしたきっかけからボビーの足跡を見つけることに…

というか、ボビー本人が「私がボビーです」って言ってるのをダイレクトに見た!

…すごいあっさり解決しちゃった…。

謎ってのは…そういうもんだよな…。

 

ボビー、その真実

真実も何もない。

ボビーはボビーで、ボビーと名乗って万年筆をカスタムしていた気のいい青年ボビーだった。

それだけだ。

しかし俺にとっては逸れこそが求めていたもの!

 

ついにボビーとの邂逅である。

一体どういう経緯で俺はボビーを見つけ出したのか…!

 

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普通にYoutubeで検索したら、思いっきりいたじゃねーか!

BOBBY PEN!!!

なんか想像以上に好青年だった!

屈強なタフガイを想像していて申し訳なかった…!

 

…でもこれは本当にボビー本人なのか?

全然別人だったら?

まだ完全に喜ぶには早い…!

と当然の疑問がわいたので、しばらくYoutubeでボビー周りの情報を探ることに。

 

youtu.be

で、この動画のコメント欄で、ついにこの青年がボビーその人であることが明らかとなった!

そのコメント欄でのやり取りがこちら。

あ、俺は一切登場しないです。当たり前だけど。

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これで、この青年がボビー本人であることとインスタのIDがわかり、インスタからEtsyに出している店舗名、Aliexpressに出している店舗名がわかった。なんで店舗名を一貫させないんだボビー…。

そのボビーがYoutubeに挙げている動画がこちら。

www.youtube.com

確かにニブのカスタムをしている。

終わってみれば何のことはないが、ボビーはボビーであり、ボビーとして活動し、ボビーがボビーカスタムを作り、ボビーが売っているということまでわかった。

何か満ち溢れたものを心に感じながら、俺はAkiexpressでボビーカスタム建築家ニブを注文したのである。

 

建築家ニブってなんだよ…

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万年筆の各パーツには当然ながら名前があり、「ニブ」というのはペン先のことだ。いわば万年筆の心臓部であり、万年筆を万年筆たらしめているアレのことだ。

で、そのニブの形状によって、「太字ニブ」とか、「クロスエンペラーニブ」とか、そういう名前がついたりしている。万年筆マニアたちはだいたいこのニブにこだわる。そういうわけで、ニブをカスタムするボビーのような職人に需要が生まれるというわけなんだが…。

 

建築家ニブってなんだよ…。

 

え、なに、ステッドラーみたいな、製図用という感じの?とか思ってしまうよな。

でも本当に、建築家ニブってのがあったらしいぜ…!

 

つまりはアーキテクトニブ

Aliexpress一流の謎翻訳によって「Architect nib」が「建築家ニブ」とされてしまったようだ。

それならば検索に結構ヒットする。

様々な情報を統合すると、

アーキテクトニブというのは、万年筆の軸方向に長くペンポイントを調整することで、

・縦画は細く

・横画は太く

・左払いは太く

・右払いは細く

なる特徴を持っているとのことだ。

ラインマーカーを思い浮かべてほしい。

ラインマーカーのペン先は角ばっているから、ペンの持ち方によって極端に細くなったり太くなったりする。それの万年筆版みたいな感じだ。

万年筆の場合はペンの持ち方は変えられないから、常に固定されたラインマーカーのような書き味になるわけだ。

万年筆で言う「スタブニブ」の90度回転バージョンといおうか。

なんでこんなことをするのかというと、これは日本の万年筆メーカー「セーラー」の「長刀研ぎ(なぎなたとぎ)ニブ」のインスパイアという説もあるし、アラビア文字を書くためのペンから派生したものだという説もあった。どちらなのかは俺にはわからないけれども。

いずれにしても、これは面白そうだな!

 

そういうわけで、ボビーカスタム建築家ニブを体験した

ボビー捜索を通じ、完全にボビーファンになった俺は、ボビーカスタムの到着を心待ちにしていた。

人間は、長く追い求めたものに心を奪われるものである。

心を奪われたから長く追い求めるのか、

「長く追い求めたのだから、これは素晴らしいのだ」という認知バイアスが俺にそうさせるのかはわからない。

 

ともかく…俺はボビーを…ボビーカスタム建築家ニブを…求めているッ!

 

Aliexpressの恐るべき配達制度に翻弄されつつも、俺は到着を待った。

実に3週間。

割と早い方かもしれない。

 

 

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そういうわけで…手に入れたのがこれだ! 

実に貧相な文字でボビーに申し訳ないが、ボビー本人の字も割と…かなり…親しみの持てる字なので、そこは大丈夫だな!

見ただけだとあまりわからないかもしれないけど、これがかなりクセのある書き味でね!

慣れるまでは「かっこいい文字」を書くのが大変だ。

多分これ、行書を書くとかなりいい感じになるのではなかろうか。

 

俺はセーラー社の「長刀研ぎ」などはとても買えない(5万円くらいする!)ので、何とも言えないところだけれども…持っている人の情報をいろいろ見ていくと、このアーキテクトペンと似た要素がかなりあるんじゃないかと思われる。

長刀研ぎというか、これは同じくセーラー社の「クロスミュージック」に似ているのかな。(こちらは8万円だ!手ごわい!!)

もちろん、セーラー社のペンは金を使っているし、装飾も美しいのでその値段は妥当なところだけれどもね。

 

しかし俺は…この物語を通じて…ボビーのHuge Fanと化してしまったので…

俺はこのボビー建築家ニブを楽しく使っていくことにしようと思う!

 

多分、この話は全然意味のない話だと思うし、ここまで読んでくれる人はまずいないとは思うけれども…

ボビーの正体を知れたことがことのほか嬉しくてね…!

ついついこうして…書いてしまったというわけだよ…!