それでも除雪機は走る

あけましておめでとう!

いやぁ、去年は…いろいろ…あったよね!

婚約したり、婚約解消したり…とかね!

人生というのは面白いよね…!

そう思わないとやっていけない部分はあるけど!

 

この激動の人生を…楽しんでいきたいよな…!

 

とりあえず、去年後半全然やれてなかったクラフト活動を再開していこうと思うよ!やるべきことがたくさんある。素晴らしいことだな!エポキシレジンとか買いこんだのに封をあけてないからね。

 

で、さっそくそれらに手を出そうと思ったとたんに体調を崩して寝込んでしまったので、「それならば仕方ない。映画を見よう」とした俺の目に飛び込んできたのが…

 

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

 

そう、

 

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

 

もう一度言おう!

 

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

 

 

怒りの除雪車

 

いわゆる…

「ブチ切れたオッサンがマフィアをボコボコにする」系の映画である。

この時点で「…詳しい話を聞こう」となる人もいると思うけれども、そういう人はいますぐにAmazon Primeへ行って視聴を始めてほしい。後悔はさせない。今度熱く語り合おうぜ。

本編開始直後に除雪車が走り出し、確かな信頼を感じることができるはずだ。

なにせこの映画はノルウェー産。雪に関してはガチ中のガチだ。

北海道民も知らない強力な除雪車が登場するから楽しみにしておくといいぞ!

 

 

近年、この手の「マフィアをボッコボコにする」系の映画は割と侮れない俳優陣なことが多いのだが(デンゼル・ワシントンとかキアヌ・リーブスとかジャッキー・チェンとかね)、このノルウェーの映画ではいったい誰がブチ切れるのか。誰がマフィアを始末するのか。誰が除雪車に乗るのか。そこが気になって夜も眠れないと思う。

 

それは、ステラン・スカルスガルドである。

このお方が登場した瞬間、脳の中にエンヤの「オリノコ・フロウ」が流れ出した人は多いはずだ。

「え?聞こえないけど」という人には、ぜひとも「ドラゴンタトゥーの女」を見てほしい。忘れえぬ体験を保証する!リスベットかわいいし。俺たちのダニエル・クレイグが主演だしな…!オリノコ・フロウが一気に恐ろしい音楽に変貌するぞ!

 


Enya - Orinoco Flow

 

ほかに、「ヒトラー最後の十二日間」でヒトラーを見事に演じたブルーノ・ガンツと、

北欧映画で俺が一番におすすめするシリーズ「特捜部Q」の3作目「特捜部Q Pからのメッセージ」でこれまた強烈な演技で(俺が勝手に)注目しているポール・スヴェーレ・ハーゲンが出演している。

要するに…

素晴らしい役者がそろっているわけだな!

特にポール・スヴェーレ・ハーゲン。

添加物に厳しい麻薬王を大変コミカルに演じていて、終始俺たちを温かい気持ちにさせてくれる。部下にふるまう飲み物は当然100%オーガニックのニンジンジュースだ。ボス自らジューサーにかけてくれるぞ!

しかも後半、このボスの表向きの仕事がさらっと明かされるのだが…その衝撃は大変なものである。

この人、なんで麻薬密売なんてやってるんだろう…。

この人がそんなことをしなければ終始温かい映画で終わったというのに…!(始まりもしないが)

 

この手の映画のフォーマットのように、物語は

 ・事件が起こり、主人公の身内が殺される

 ・主人公が復讐を決意する

 ・マフィアの構成員を一人ずつ始末していく

 ・マフィアが焦り始める

 ・最終決戦

というように進んでいくのだけれど…

この映画の素晴らしさは、この一連の流れの底にある、謎のリズム感にあると思う。

そして特筆すべき演出は…作中に死者が出たとき、その死者の名前と、あだ名と、信仰している宗教のシンボルが画面にでる!

…い、意味が分からないかもしれないが!

そのテロップ挿入のタイミングが、謎のリズム感を生み出しており、何かちょっと楽しくなってくるのである。

ちなみに、会話の中で「あいつは死んだ」という話題が出たらその時にテロップが出る。

このテロップ自体はふざけている感じではないのだけど、出るタイミングや演出の積み重ねが秀逸で

「いまさらかよ!」

「えっ…死んじゃったの!?」

ユダヤ教徒だったのかよ!」

ムスリム一人もいないじゃないか!」

「た、タケシーーーーーーーーーー!」

とか、都度都度盛り上がれること請け合いだ。

これはぜひ実況しながらみんなと見てみたい。凄い。楽しい。この楽しさを共有したい。

こういった演出は、「みんなに話したい」という欲求を抱かせるSNS時代特有の演出かもしれないね。

 

そしてこの映画は

 スカルスガルドが除雪する

 マフィア構成員を始末する

 テロップがでる

 遺体処理

 荘厳なコーラス

前半はこの流れが繰り返される。

そう。

荘厳なコーラスは欠かせない。

アーーーーーアーーーアーーーアアアーーーーー

というコーラスに乗せて、マフィアの遺体が川に打ち捨てられていくのである。

これが何とも言えない味わいを醸し出している。

無常を感じる。

 

そして、あまりにも濃すぎる登場人物たち。

格の違い(?)を見せつけるロス帰りの警官、冬のノルウェーを思いっきり楽しむセルビアンマフィア、許されぬ愛に準じる者、車内で気持ちよく歌うマフィア、隙あらば中央党に勧誘する近所の男…

すべての登場人物が魅力的に描かれており、「あぁ、もうずっとこいつらを見ていたい!」と思えるほどだ。お気に入りはセルビアンマフィア。かわいい。

また、すべてを描くのでなく、におわせる演出が駆使されているのも個人的に好きだ。いろんなことを人に話したくなる。本当に好きな映画だ。

 

しかし…そんなキャラクターたちの中でも、主人公であるスカルスガルドだけは別だ。

彼だけは、そのような楽しげな雰囲気とは無縁の存在だ。

そう、この作品はどうあがいても復讐譚なのである。

彼は除雪をし、ターゲットを探し出し、復讐を果たしていく。

最終的な結末は、結局のところ人の死でなければ終わらないのである。

しかしそれでも、彼は除雪をする。

息子が殺されても、除雪をする。

彼が除雪をしなければ車は走れないからだ。

 

作中で、彼が除雪について何かをいうことはない。ただ淡々と除雪をしていく。除雪とは何かを語るのは、意外にもマフィアの構成員たちである。

そして、俺たちが期待するような、除雪車を使った派手な復讐というのは実はあんまりない。いや見てみたかったけどな!

 

この映画において、除雪というのは「それでも生活は続く」ことを示していると思っている。

人が死んでも、銃撃戦が起きても、何がおきたって、除雪車は走る。

強力な除雪車が雪をかき分けて走るように、俺たちも日々の戦いをしなければならないのかもしれない。途中でどんな辛いイベントがあっても。

 

それでも、除雪車は走り、俺たちの生活は続いていくのだろう。毎日を生きるために。

 

 

 

 

 

…と、生意気にもキレイにまとめたところで…!

ここからが大事なところですよ!

やはり、ノルウェー、北欧の映画だからな…!

映画の中のインテリアとかがもう超絶に美しいわけだよ!

目を見張るほどに!

そして、除雪機…!

さらに、ラストで登場する…とある重機!

もう、たまらないな!

一時停止の雨あられだぜ!

そして!

これ!

 

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マフィアのボスの奥さんが持っている、手袋!

素敵だ…!

ほんの一瞬映るだけなんだけどね。

で、この素敵なミトンはいったいどのような編み物なのか…

気になったわけだよ!

これ系のミトンは、何かどこかで見たことがある!

しかし今の俺では、「見たことがある」というレベルでしかわからない。

というわけで、Twitterで呟いてみたところ…

 

 

 

フォロワーさんが知ってた!

すごいな!ありがとう!

セルブーミトンですって!

ノルウェー伝統のミトン!

これはあれか、オトコノコたちが一瞬映った銃器の名前をすぐに言い当てる見たいな能力なのだろうか。

俺も修行をせねばならないな…!

 

この画像のシーンは、Twitter出も書いた通り、マフィアのボスが元奥さんに対して

「流行りの手袋を付けていても無駄だ…!」

といわれたときに一瞬映ったもの。

つまり、「俺と結婚していた時は好き放題金を使えたのに、今はみじめな暮らしをしているな。流行りの手袋を付けて見せて取り繕っても無駄」みたいなことを言っているシーンなんだと思う。

そして、その時に「デンマーク人のくせに」とボスは元奥さんを罵倒する。

これは、「デンマーク人が嫌われている」という定番(なのかなぁ)のネタだけではなく、デンマーク人のお前がノルウェーの手袋をしても、ノルウェー人にはなれない」みたいなことを言っているのかもしれない。

もちろん差別的な表現だけど、ミトン一つで二人の関係をあらわしたのは凄いことなんじゃないだろうか。

実際、映画の冒頭で「あんたはいい意味での移民だよ」というな会話があって、人種差別、移民差別は明確に存在すると示されているしね。

こういう隠された意図、演出に気づく瞬間が、作品を鑑賞する醍醐味なのかもしれないな。

編み物は…確実に俺の人生を豊かにしているぜ…!

 

 

あ、ちなみに面白かった小ネタとして…

ノルウェーでも、太巻きは「フトマキ」と発音するみたいですよ!

太巻き恵方巻見たいなアレ!

なんでこの映画で太巻きなんていう単語が出たのかって?

見てみてのお楽しみだ!

 

タケシ…安らかに眠ってくれ…!