ルーン文字のセミナーに行ってきた① - 何よりも重いもの -

ルーン文字

これほどオトコノコのココロをくすぐる言葉があるだろうか?

いや男の子ででなくとも、心にときめくものはあるはずだ。

魔術とか神話とか星座とか鉱石とか天使とか悪魔とか、そういう妖しげなモノに心を躍らせていたかつての少年少女になら、この感覚はわかっていただけると思う。

 

俺もかつての少年として…ルーン文字ははずせないな!

しかし、この現代の人生の舞台にルーン文字が登場することはあまりない。

というかほぼない。

絶無だぞ!

中学生のころ、ラテン語などに興味をもってそれらしい本を読み漁った(理解できる範囲でだけど)時にルーン文字に触れた後、現代社会の若者として生きていった俺の脳の中にルーン文字は存在しなかった。

いやまぁ、ゲームとか、ファンタジー小説とかにはあったけど!

具体的にはDiabloIIとか。あれはハマったよな…!

 

そんな俺の人生にも、ついにルーン文字が再登場するときがやってきた。

つまるところノールビンドニングを始めたからだ。北欧の文化に触れるということは、すなわちルーン文字との再会に他ならない。

懐かしい友に出会う気持ちで…とか、あんまり書くとアレだけれども。

 

とにかく!

ノールビンドニングを始めるにつれ、「これはやはりルーン文字をきちんと知らなければならないぞ!」という思いが強くなっていた。先日作ったタールハルパにも何かしらルーン文字を刻みたくなってきたしな!

そんな矢先のこと。 

いつもニットカフェでお世話になっているpresseさんにルーン文字セミナーが開催されるという情報を教えていただいた…!

 

 

 

 

というわけで、若干光には及ばなかったものの、その場で電話をかけて予約をすることに成功した!

というか、電話口では講師の先生(スウェーデンの人だ!)に俺の正確な名前を伝えられず、改めてメールをしたのだけれども。

やぁ、実際、異なる文化圏の人の名前を聞いただけで正確に覚えるって無理だしな!そんなところからすでに「これは異文化だぜ…!」とワクワクし始めた。これだよ!文化を学ぶということは!

そうだろう!?

 

 

そして8月25日。

俺は車で当別町に向かう。

北海道の当別町と言えば、ロイズのチョコレート工場があるところで有名。すべてのロイズのチョコレートはここで生産されている。

そして地味だけれども、明治維新の後に、仙台藩が初めて入植した地でもある。生粋の札幌市民の多くは会津藩仙台藩の子孫なことが多いね。札幌の「白石区」の「白石」は、仙台藩片倉家の居城・白石城からとられているよ。

北海道に歴史無しとか言う人がいるけれど、そこに住む人にはきちんと歴史があるものなのだ。

 

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そんな歴史ある当別町だけれども…。

スウェーデンヒルズに入った瞬間からもうそこは日本ではなかった!

見てみろよこの景色を…!

台風が通った後なので、著しく天気が悪いけれども。

いやもう、本当に全部こんな感じでね!街路樹はすべてカエデ。建物も統一されているし。

本気でここに住みたくなるよ…!

もう空きはないけどさ!

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しかもほら!

交流センターには…木工房がある!

ガラス工芸館もあるよ…!実際にここで作業もできるみたいだよ…!

俺…ここに住みたいよ!?

なんなら、家をイチから自力で建てるところからでも…!

 

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織り機とか、

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超ナイスなベンチとか!

何かもう、俺の好むすべてがここにありそうな気がしてくるな!

あとは木工房やガラス工芸館で作られたと思しき作品もあったし。

全く素晴らしいね!

 

そんな魅惑の交流センターに後ろ髪をひかれつつも、今回の目的であるルーン文字セミナーの会場へ向かう。

参加費はまさかの500円!

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たった500円でこの陣容だぜ…?

講師を務めてくれるのは、職員のペールさん。

スウェーデンの人が直々に北欧神話ルーン文字について教えてくれるなんて、インドで日本神話の講座があるようなものだな!こんな機会はほかにあるまい…!

 

講座のプログラムは

北欧神話の話

ルーン文字

ヴァイキングボードゲーム、「フネヴァタヴル」への挑戦

の3つからなっている。

セミナー開講直後の「世界にはニフルヘイムとムスペルヘイムがあり、その間にはギンヌンガガプが…」と聞いた時点で北欧神話野郎のテンションは青天井になるわけだけれども、ここでその講座のすべてを書き記すと大変なことになるので、「いたく感動した部分」に焦点を絞って書いてみようと思う。

じゃないと書き終わらないしな!

 

北欧神話は「毒」がある

北欧神話での世界の構成、成り立ち、事件のあらましを聞いていくと、いろんなところで「毒」の話が挿入されているのに気づいた。

北欧神話で「毒」といえば?

マニアな人たちはすでに回答をいくつか持っているかもしれないが。

まず、北欧神話は世界の成り立ちからして毒が関わっている。

霧の国ニフルヘイムと炎の国ムスペルヘイムの衝突で「エイトル」という恐るべき毒が誕生する。そしてその雫から、原初の巨人であるエミールが生まれる。

ちなみにペールさんはエミールのことを「イミル」に近い発音をされておりました。

生の発音が聞けるのが最高でね!

この、毒から生まれた巨人をオーディンらが倒して、俺たちの世界が生まれるという神話だ。日本神話で言うオオゲツヒメの話みたいなもので。ハイヌウェレ型神話かもね。

で、俺たち人間界は、この巨人のまつげから生まれた。

ま、まつげ!?

なぜまつげ…と思ったんだけど、これはつまり「囲い」ということらしい。

まつげが柵となり、柱となって人間界とそれ以外を分けたのだそうだ。

そう考えてみると、まつげは目の門番ともいえるかもしれない。まつげが開くことによって、目が生み出されるという考えもできようか。

…もうすでにだいぶ長くなってきたが、まだ序の口である。すまん。

 

それで、エイトルという毒はこの一回きりに出てくるものではなく、神話の何か所かに「神をも殺す必殺の毒」という設定で出てくる。

例えば、ロキが受ける罰も、「頭に絶え間なくエイトルを注ぎ続けられる」ものだし、

俺たちの雷神トールがラグナロクで大地の蛇ヨルムンガンドを倒したのち、このエイトルを受けて9歩後ろに下がった末に絶命している。

北欧神話ラグナロクという、神々の死で終わる神話なのは(あるいはだからこそ)、このエイトルという毒が根幹にあるからなのかもしれない。

 

アース神族ヴァン神族

北欧神話のといえば、この二つの神の系統。

アスガルズに住むアース神族と、ヴァナヘイムに住むヴァン神族の二つの系統の神が存在する。

アース神族で有名なのは、主神オーディン、雷神トール。

ヴァン神族で有名なのは、フレイとフレイヤの兄妹。フレイヤは金曜日の「Friday」の元ネタだ。金曜日はフレイヤの日である。

っていうか、曜日は土日月以外は北欧神話の神が元だ。

Tuesday : 軍神テュールの日

Wednesday : 戦士の神オーディンの日

Thursday : 雷神トールの日

Friday : 魔術の女神フレイヤの日

「なんで曜日のスペルってこんなに覚えにくいんだよ」と中学時代に思った人も多いと思う。俺もだ!

しかしそれは北欧神話が元なので、仕方ないところではある。

で、この二つの神の系統については興味ある人は調べてもらうとして…

 

やはり発音だよね!

ペールさんはアース神族のことを「アーサー」と呼び、ヴァン神族のことを「ワーン」のような発音で言っていた!

もうこれだけで満足だな!

なるほど現地の人はそう呼ぶのだな!

 

雷神トールの発音が凄かった

いやま、結局は発音だよ!

知識は本で補完できるが、発音、こればかりはライブで聞いてみなければわからない!

今回のセミナーで一番感動したのが、この「トール」の発音かも!

普通に「とーる」って発音するんじゃないんだよ!

「ト」をめっちゃ強く発音するの!

で、「ル」はちょっと巻き舌気味!

ちょっとやってみるといいよ!思いっきり「ト」を強く。気分が高揚するから!

これは完全に言霊だね。トールの名前聞いてるだけで勇ましい気分になってくるんだよ!

これは、現代でも人気ある神様なのは理解できる。言霊が半端では無いもの。

もうこのトールの発音聞けただけで俺は満足したね…!

ゲームの真・女神転生IIIの影響でトールが一番好きなんだけど、さらに好きな理由が増えたぜ…!

 

無機物にすら愛される至高のイケメン

バルドルとかいう世界神話史上最強の性格イケメン。

「この世のあらゆるものに愛された」とかさすがに無茶な設定じゃないか…?

とか書いている俺もきっとバルドルを愛することになるのだろうけれども!

あぁ、愛する自信はあるね!

なんせ、バルドルはそこらに落ちている石とか、水とか、多分空気にも愛された最強のイケメンだからな…。

勝てる気がしない。

いや勝つ気もないけど。

しかし、そんなイケメン設定を盛り込まれると、「どこかにバグはないか?」と探り始めるのがロキという男である。

「みんなに愛されているから誰もバルドルを傷つけない。だから彼は不死」

という設定に穴を見つけようと躍起になる男、それがロキである。

なんでそんなことするんだよ!やめろよ!

と思うかもしれないが、それをやるのがロキである。

どうしようもないやつだな!

しかしそれがロキである。

 

結果として、ロキは

まだ若かったので「バルドルを傷つけない」という約束をしなかった「ヤドリギ」でバルドルを殺すことに成功する。

世界最初のハッカーはロキかもしれない。

 

ここまでは、北欧神話を少し調べればわかることなのだが、

そのあとにペールさんがちょっと言った一言が、俺に衝撃を与えたわけだよ。

 

ヴァイキングにとっての約束の重さ

ヴァイキングは約束を大切にするので、若い人には『あんまり約束をしないほうがいい』と教えるんです」

つまり、ヤドリギが「若すぎたから約束をしなかった」というのは、そういうことだったらしいのである!

神話が先か、ヴァイキングの信条が先かはわからないけれど、

ヴァイキングにとって、約束をするというのは極めて重い契約であったから、至らなさから約束を破りがちな若者には『約束(契約)をするにはまだ早い』と教育していた。

ということになるわけだよ!

これは凄い気づきだと思うんだよ!

ヴァイキングたちは約束を果たすために文字通り命をかけていて、

嘘をつく、だます、忘れる、空約束をするというのを何よりも嫌ったということだ。

これは、契約や約束を軽く考えがちな現代の俺たちと相当に異なる価値観じゃなかろうか。

この価値観がひいてはの契約文化に引き継がれているような気がする。

「約束を守れ」

という極めて重たいルールがありに

「だから、守れない約束はするな」

という教訓があり

「若者はみだりに約束なんてするんじゃない」

と教育する。

これってものすごいことじゃないだろうか。

 

ちょっと話が飛躍するかもしれないけど、

現代の北欧の国々の教育が優れているのは、根底に上記のようなマインドがあるからじゃないかな?

まず達成すべき目標があって、

その目標の意味するところを伝えて、

最初は達成は出来ないものだと理解している。

根性論や精神論だと「とにかく達成しろ!」で終わる話を、かみ砕いて最初の一歩の話から始める。

こういう違いが、やがて巨大な差異になっていくのかもしれない。

…さすがに話を大きくしすぎたような気もするけど、俺の中で何か、大きな納得がいった瞬間だった。

 

ペールさんの何気ない一言で、何か俺の脳の中が開けた気がする。

本当に素晴らしい気づきだった。

 

そしてあまりにも長くなりすぎたので、ルーン文字についてやフネヴァタヴルについては次の日記で書こうと思う!

 

 

 

 

あ、契約といえば、チャペルウェディングなんかで神父さんに

「病めるときも健やかなるときも愛することを誓いますか?」

って聞かれるアレ。

アレは、神父さんに誓っているわけじゃないからね!

もちろん、新婦さんでもないよ!

あれは…天上におわす神様に誓っているのだよ…!

だからね。

ヴァイキング的な重さで考えると…

恐ろしく重い契約を交わしたことになるのだ…!

文字通りの、「死が二人を分かつまで」の契約なんである。

破ったら?

ヴァイキング的には…

死を持って償わねばならんな!!はっはは!

キリスト教の神様もめっちゃくちゃ怖い神様だからね!

嘘は許されないよ!

だから、カトリック教会では「離婚」は存在しない。

だって、「神に誓った」のだから。

「やっぱなし!」はない。

だから、カトリックでは離婚ではなく「契約は無効だった」「そもそも契約が成立していなかった」てことになる。

チャペルウェディングで「神に誓った」人は…

生涯をかけてその約定を果たすよう、よき夫婦になるよう、努力をしてほしい!

ヤハウェの神との契約だ…!

 

 

あと、イスラム教圏で「姦通をした人」が石打で処刑される話が時々あるけど…

姦通というのは「神に対して嘘をついた」「神を騙した」ことだと考えれば、「なぜそこまでするのか?」が理解できると思う。

もちろん、あんな残酷なことはやめてほしいけど、「神への誓約」というのはそこまで重いものだ、と理解する手掛かりにはなると思う。

いや本当に、やめてほしいけどね。

でも、約束というのは、契約というのは、そういう恐ろしく重いものだったんだよね。