羊角クラフト - アンドロイドならずとも羊の夢は -

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11月19日にpresseさんで行われたニットカフェに参加してきた!

参加はこれで二回目なんだけど、何せ俺は編み物の基本を全く知らない男。果たしてどういうスタンスで参加するべきなのか未だわかっていないという、圧倒的借りてきた猫感を醸し出しつつの参加だったけど、今回も楽しかった。

しかし大丈夫かな!?俺が参加していても!?

という一抹のモノはありつつも、今回は北村系子先生から羊の角を譲り受けることになっていたのでひるんでいる場合ではない。羊の角という魔性のアイテムが俺を突き動かすわけだよ。欲望というのは、果てしないからな…!*1

この羊の角は、北村先生がノールビンドニング用の針を作った残りの部分なんだけど(大変すばらしい針だった)、それを幸運にもいただくことができた。さすがに残りの部分だけあって加工しにくい先端部分だけど、何せレアアイテムだしな!細かい破片はボタンにすることもできるはず。

写真の右側にある太い奴は鹿の角。これももらうことができた。この部分は気合を入れてドリルで穴をあけることにより、指輪として利用することが可能。…相当な気合が必要なので、なかなかやる勇気は出ないのがつらいところだが!

この羊の角は長さは約12cm。俺が普段使っている針よりかなり短いけれど、その分曲がりが強いので、ロシアンステッチやターニングステッチなど針をひねる動作が多いステッチに向いた針を作ることができるはず。

そういうわけで、さっそく加工をしてみよう!

 

…と、意気込んでみたものの、ちょっとこれは想像以上に短い!

や、「短くなりすぎて使えないから」ということで譲り受けたので当然なんだが!

これをそのまま全部削って1本の針にするのはもったいなさすぎる。できることなら子の角を半分か4分割して、数本の針を作りたい。

しかしどうすれば、この短すぎて押さえつけることができない角を切り出すか?

当然、電動工具は使えない。

下手にやったら指が飛ぶからな…!それは避けたい。誰だって避けたいと思う。君が避けたいように。

なので必然、糸鋸で地道に切っていくことになるんだけど…。

角は硬い。

この当然の事実が俺に実感となって襲い掛かってくる。そうだ、角は硬いんだ。いやぁ、角は硬い。硬いんだよ。

だからこの圧倒的硬度を誇る角に、貧弱な糸鋸一本で立ち向かうには相当の時間と、肉体的な疲労を要する。それは避けたい。君が避けたいように。

かといって、糸鋸盤があるところまで行くのもちょっと大変。この雪だし。それは避けたい。…そのくらいの手間は惜しむなよという声は聞こえるけれども!

そこで、ちょっとした力業でやることにした。

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男の武器、ドリルを使ってな…!

切りたいところにあらかじめドリルで穴を空けまくり、糸鋸で切る距離を大幅に減らそうという計画…!まともにこの距離を糸鋸で切るとなると大変だけど、ドリルの間隔だけ切っていくのなら精神的にも、物理的にも楽だ。それに、切りやすくもなるからね。

途中でドリルが折れるというハプニングはあったものの、すべて穴を空けきることができた。

ドリルは偉大。

みんなもっとドリルのパワーに目を向けるべき。

あとひたすら切っていくだけなんだけど…俺には一つの懸念があった。

ニオイである。

 以前鹿の角を加工したときに…削ったときの硫黄の臭いに苦しめられた記憶が俺の手を止める。大丈夫なのかこれ…。鹿さんはあんなだったけど、羊さんはどうなんだ…。やっぱり同じなのか…。

恐る恐る鋸をひいていくと…

確かにニオイが、する!

…しかしこれは、鹿の角より臭くない!

確かに同系統のケラチンを燃焼させたニオイだけれども、何か香ばしい…どこかで嗅いだニオイが…!

 

これはスルメだ。

 

スルメの匂いが、する!

スルメイカを焼いた匂いが…!

マスクの上にスヌード(作ったやつ)をまいて完全に防御したが、スルメ臭ということなら話は別だ。俺はスルメを愛する男だからな…!

角クラフトをするうえで最大の難関をクリアした今、もうなにも止めるものはない。

よく見れば、羊の角の部分はどことなくホタテの貝柱っぽいアトモスフィアがあるしな…!

これはいける。

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そんなこんなで、切れた!

時間的には20分かかってないように思う。大分楽をすることができた。

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こちら断面図。

雪からの照り返しがキツいのでちょっと色がわかりにくいかもしれないんだけど…

なんか、美味しそうじゃないか!?

貝柱とクリームチーズみたいな…。

貝柱にクリームチーズは正直どうなのよと思わなくもないが、あらゆる食材にあうのがチーズの恐ろしいところだし、きっと美味しい。

誘惑に負けて、実はちょっとかじってみた。

 

…何か、こう、確認せねばならない気がして…!

 

味は当然ながら、なかった。感覚的には爪をかじるのに近い。いや羊の角も爪と同じ成分だから、その通りだともいえるんだけども!

や、でもこれ、美味しそうじゃない?本当に。

…俺の主張が受け入れられるかは別にして、この二つに割った角をさらに分割する。

またドリルで穴を開けて…

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 今度は縦割りする!

さっきと違って、今後は一直線で切れるからとても楽。

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絶対に美味しいよこれ。

作業台の木切れがまな板に見えてきたよ。削りかすは塩に!

どうでもいいんだけど、強烈に硬いかぼちゃを切るときにはのこぎり使ってもいいと思う。電子レンジで温めても結構硬いぜ、あれ。もちろん、木を切った後のを使えとは言わないから。一つの可能性として。

で、ここまで来たら後はいつもの工程。

ドリルで穴を開け、ディスクグラインダーで大まかな形をとっていく。

だいたいの形になったら、180番くらいの紙やすりでディスクグラインダーのナイフマークを消す。そして後はやすりの番手を上げて 、美しく仕上げて行く。

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 こんな感じ。クリームチーズ部分は残したほうが綺麗だと思った。だが、残念ながらこの工程で美味しさは失われ、綺麗さだけが残った。個人的に、美味しそうな針になるかとちょっと期待をしていたのだが…!

とりあえず、800番までやすりをかけて今回は終了。というか俺、800番より上のやすり持ってないんだよ。木工だと大体800まで行けば十分だからね。

北村先生専属の羊角研ぎ師の方は、液体コンパウンドまで使用して研いだらしい。やすりも爪やすりでもOKだとか。確かに角と爪は同じだから、理にかなっている!

さらにその方の旦那さんはプラモデル好きだそうで、なるほど確かにこの工程はプラモデル感があってとても納得してしまった。プラモデルも、複雑な形のものを鏡面仕上げにしたりするもんなー。

俺もプラモ狂四郎で育った男として、一通りのプラモデル知識は持っている。当時は全く憧れなかったが、今の俺は模型秘伝帳・木ノ巻に大変なロマンを感じる。無敵球の茂合岩男先生に弟子入りしたい。なんで名前がモアイなのに見た目が油すましなんだ。

茂合岩男先生の雄姿についてはいつか熱く語るときが来るとして、羊角の仕上げはプラモデル方式でOKという勇気を得たので、今度の休みに出も材料を買いだしつつ、「ねんがんの羊の角の針」をこの手にしたいと思う!

*1:先日、国連で象牙取引に関して日本が名指しで批判された。なので象牙はたとえ手に入ってもちょっとやめておいたほうがいいと思われるね。ダメって言われたからやらないってわけじゃなく、こう、羊の角のように副産物としてとれるものと、それのために狩るというのではだいぶ状況は違うから。もちろん、問題になる前に流通している象牙についてはそこまで問題とはならないだろうけど、やっぱり心情的にね。鹿さんの場合は毎年生え変わるのでむしろ積極的に使っていきたいところだが!