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脳の中のマリー

アントワネット的なことを脳の中で

戦闘中にその場でリスポーンする不死者の戦い マンガ「亜人」を読んで

マンガ「亜人」をコミックス8巻まで読んだ。

以前4巻まで読んでいたのだが、この度一気に読んできた。闇を包帯で巻き包んだような「黒い幽霊(ゴースト)」が印象的な表紙に「これは期待できそうだ!」と惹かれたのが発端。期待通り、とても面白い作品だった。

このマンガの魅力は大きく分けて3つあると思う。

  • 不死者という異物に対して社会がどう反応するか
  • 亜人となったキャラクターたちの葛藤やドラマ
  • 不死という能力を活かした戦いの魅力

社会に入り込んだ異物/異種モノは大変に俺の好物で、この作品も表紙とタイトルからして異物モノの匂いを漂わせていて楽しみだった。そして物語は実験材料とされる不死者の描写から始まる。俺はこの時点でグッとガッツポーズをしたものだが。この冒頭からの信頼感は「彼岸島」並だぜ。…「彼岸島」はいろいろと、こう、期待を超越する作品ではあるが!

社会の異物を受容するか、排除するかという序盤のつかみから、亜人(不死者)たちそれぞれの思想、事情を掘り起こし、各キャラクターを魅力的に描きつつ「異物の中の異物」である、暴走する悪役との対決を描いた作品。悪役の性格やその行動原理から、「パトレイバー」の内海さんを思い出したりもした。内海さんを知っている人なら、この悪役がどれほど邪悪かはよくわかると思う。ああいうのが一番たちが悪いんだよな。現実には絶対にいてほしくないタイプの悪だ。つまり、作品内においては大変な魅力を持ったキャラクターと言える。

そしてこの作品の白眉はやはり、「不死者が行う戦闘はどういうものになるか」につきる。

作中で亜人(人間未満、という意味か?)と呼ばれる不死者たちの特徴として、「死ぬと再生する(餓死でも飢えない状態で復活する)」「死ぬまでのダメージは普通に受ける(痛みも感じる)」「亜人黒い霧のスタンドのようなゴーストを出せる」「しかしゴーストは万能でなく、器用でもない。戦いの主体には(8巻時点で)なっていない」という、いろいろな制限がある。なので、ジョジョにおけるスタンドのようにオラァ!とかララァとかチュミミィィイン!とかこれがモハメド・アブドゥルのイメージッ!といったようなド派手なことは出来ない。ジョジョにもままある戦闘描写だけど、あくまでも「どう使うか」が主体で、ゴーストありきの戦闘は起きていないのが面白いところだ。

あくまでも亜人たちは「不死者であること」を最大の能力として戦闘を行う。

この戦闘描写が楽しいのなんの。不死という能力を最大限に駆使して戦ってくれるのが悪役のキャラクターなんだけど、この戦い方がものすごい。

前述のように、亜人の不死はあくまで「死んだら生き返る」なので、傷が即座に再生されるわけではない。だから、「戦闘において無茶をする」にも限度があり、工夫が求められる。例えば、麻酔弾を打ち込まれると昏倒して捕縛されるし、殺し続けられたら戦闘不能になってしまう。なので、亜人たちは、

「重いダメージを食らったらその場で即自殺をして傷をリセットする」

という戦闘方法を取る。この描写がとても新鮮だった。

亜人にはゴーストがあるが、それは戦闘にはなかなか使えない(うまい使い方も多々あるけど)。あくまでもメインの火力は自身の持つ銃火器が主だ。つまり戦闘方法としては現代の兵士たちとなんら変わらないのだが、「戦闘中に自殺をして怪我を治す」という一つの行動が戦闘を劇的に面白くしている。いやコレ本当、面白いよ。タイトルにも書いたように、その場でリスポンして暴れまわるという、ゲームでもやらないようなことをやっている。ダメージ→自殺→反撃のバリエーションに唸らされることうけ合いだ。

作中最も戦闘能力と不死を使う発想力が高いのが悪役なので、この悪役…もう佐藤さんでいいな!佐藤さんの変幻自在の戦闘がとにかく楽しい。口に銃をくわえる→衝撃で後方にぶっ飛ぶ→とんでる最中に再生→空中で銃撃という素晴らしい自殺コンボを見せてくれた時は思わず本を閉じて「やるよねぇ…!」と漏らしてしまった。

つまり不死者の戦闘であるにもかかわらず、いや、だからこそ「敵を殺さないように倒さなければならない」という戦闘が行われることになる。正しく無力化しなければ、相手は全快して再び襲ってくるのだ。このような戦闘が行われる作品において、主人公が頭脳明晰というキャラクター性を与えられたのは必然だろう。主人公の予想を上回るセンスで迫る佐藤さんにどう対処するのか、楽しみでならない。

そして圧倒的なヒロイン力を見せる田中さん。

田中さんがヒロイン。

田中さんは佐藤さんに助けられ、その恩義と人間への復讐心から行動をともにしているんだけど、この田中さんの魅力がとんでもないことになっている。

初登場時では典型的悪人面だったのに、巻を追うごとにワイルドなイケメン化が顕著になり、かつては優しい男性だったことが明らかになり、ついには仄かな迷いを感じつつも佐藤さんへの尊敬は変わらないという絶妙な憂いを帯びた瞳が魅力的なキャラクターとなっている…!ほら、唇をつまんでべろんとする癖もなくなったし!「わけのわからないキャラ」からの脱却が明確になったサインだぜコレは!俺は、田中さんを支持する!不死故に人格破綻者が多い作中にあって貴重な人格者枠になっているしな!素晴らしいぞ田中さん!なんか田中さん仲間になった後に死んじゃう感じはするけど!

 

もちろん、作品の好き好きはあろうけれど、この作品における「不死者の戦闘描写」は一度体験しておいて損はないと思う。たしかにそうなるし、こうやるだろうし、でもああまでやるとは思わなかった戦闘が目白押しだ。佐藤さんかっこいいよ。

 

そして、バジリスク」の天膳様は佐藤さんを見習うべきだと思う。マジで。