時を旅する木簡ノートを作る。 -木簡風トラベラーズノート 激光篇-

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トラベラーズノート…。

それは…人生を旅する者の傍らにあり、その旅路を見守るノートである…。

旅人はその記憶をこの一冊のノートに託し、次なる旅へと思いを馳せるのである…。

 

と、いう感じに…黄昏れたくなるのがトラベラーズノートだ!

 

手帳界隈ではなかなかに有名だ!大きめの文具店にはだいたい置いてあるな!

厚めの皮を二つに折り、そこにリフィルを挟むだけのシンプルな手帳。ステッカーをペタペタ貼った旅行鞄のように、どんどん自分流にカスタマイズしていくことを推奨しているノートだ。使い方は自分次第。

「カスタマイズ」とか「経年変化」とか「こなれ感」というキーワードにグッとくる人にはたまらないノート。それがトラベラーズノートである。

とにかくシンプルなので、リフィルを自作することもできるし、アイディア次第でいかようにも使えるのがこのノート。

 

yajul.hatenablog.com

とはいえ、そんなに大幅にカスタマイズをせずに数年使ってきたのだけれど…

もういい加減、大幅に改造してみたくなってきた!

 

しかし…一体どうすればいいのか。

絵心があるわけでもデザイン的センスがあるわけでもない俺に、何ができるというのか?

 

 

閃光の彫刻機

 

ロダンのごとく悩み続けて数か月。ついに俺の脳に閃光が奔る。

これだ!これを使えば…行けるはずだ!

 

 

それは…

 

 

 激 光 彫 刻 机 !

 

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もう一度言いたい。

 

 激 光 彫 刻 机 !

 

…伝わらないだろうか?

 

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 激 光 彫 刻 机 !

 

簡単に言えばレーザー彫刻である。

中国語では…レーザーは「激光」なのだな…!

全く伝わらないけど、使いたくて仕方がない単語だ! 激光彫刻机!

 

レーザー彫刻機というのは、文字通りレーザーを使って木材や革の表面を焼いて模様を彫れるという物だ。業務用となると銀行の絶大な融資が必要なほどに高くゴツくデカく重いものになるけれど、3Dプリンタ同様に個人で気軽に使える物が売られている。

それを今回、ゲットしたというわけ。

木材の徒たる俺にとっては、この激光はまさに完璧。完全な相性だ。

とはいえ、1万円~2万円で買える範囲のレーザー彫刻機はどれも中国製となる。

まぁ、日本のメーカーだってその内実は中国製だったりするわけだし、別にもう今更中国製だからどうのこうのということはないのだけど…。すこしばかりは「大丈夫だろうか?」と不安に思うもの。

しかし思い切って買ってみることにしたわけだよ!

届いた激光彫刻机を見て、いい意味で驚いた。割としっかりしている!

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マニュアルも中国語だけでなく日本語もあるし、内容も詳しい。ちょっと変だな、と思う日本語はあるけど、問題ないレベル。コンセントも日本対応。

特に設定やインストールが難しいこともなく、届いてから30分後には初めての激光を体験することができた。

 

というわけで、さっそくサンプル画像をサンプル木片に彫刻してみよう!

…しかし…サンプル画像が逆にすがすがしい感じだ…。

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アバーーーーーッ!

 

…付属のシールドを取り付けないと目が死ぬ。

これがポケモンショックか…!これは危険だ!みんなはちゃんとシールドを付けような!

彫刻してる間は覗き込んじゃだめだぞ!

 

3時間くらい激光を楽しみ、このレーザー彫刻機はイケるという確信を持った!

ただ、いつレーザー部分の寿命が来るのかわからないので、業務的には使えないような感じ。どのくらいぶん回せば壊れるのか、それはまだ未知数だからね。

 

さて、ではこのレーザー彫刻機で何をしよう!

 

トラベラーズノートに直接刻印をしようか?

うん、やはりそれだ!

いい感じの模様を考えて…理想のトラベラーズノートを手に入れようじゃないか!

こう…妖しげかつテンションの上がる…何かを!

 

…いや待てッ!

 

本当にそれでいいのか…?

レーザー彫刻機で革を彫って、それで完成にして、お前はそれで満足するのか…?

わずか数分でインスタントに手に入る手帳…それにお前は人生の旅を預けるというのか…?

それはせっかく手に入れた新たな武器・激光の魅力を引き出しているといえるのか…?

 

いや…別にインスタントで構わないが!?

そう自分を納得させようとした時、脳の中でマリーがささやく。

 

「激光で木簡彫ればいいじゃない!木簡!木簡よ!生涯の夢であった木簡を今!手に入れるのよ!木簡よ!手帳?そんなものより木簡!ハイ木簡!決定!木簡!木簡!!」

 

そういうわけで、俺は木簡を作ることになった。

 

悠久の木簡

木簡。

そう、木簡。

もっかん。

紙が発明されるまで、アジアの人々はこの木簡にすべてを記してきた。時には文書、時には墓、あるいは名刺、また政治の場では聖徳太子が持ってるアレのように、木簡の影響は幅広い。

木の板を細かく割って紐でつないだ巻物のようなアレだ。

小学校で三国志にハマって以来、俺は木簡にあこがれ続けてきた。

今こそ木簡を手にするとき…!

 

とはいえ、木簡自体を作るのはとても簡単だ。

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適当な長さに木を切り、表面を処理して穴をあけるだけ。

今まで木簡に手が出せなかったのは、「木簡に字を書けるほど俺は字が上手くない」からだ!

せっかくの木簡にヘロヘロな字は書くことはできない…!

そこで救世主たる激光が俺の代わりに美しい文字を彫ってくれるというわけだよ!

簡単!便利!

…でも実はこのレーザー彫刻の段階でものすごい苦労をしたんだけど(字が曲がったり詰まったりしているのがわかると思う)…それはそれとして!

 

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できました!

 

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木簡!!

 

木簡に彫ったのは、俺が愛する四書五経の筆頭・易経の有名な一説。それを唐の時代の篆書体で彫ってみた。

本当は先秦時代の篆書体が良かったんだけど、それでは文字が欠けてしまうので。

 

表面がギラギラしてるのはカメラの具合ではなく、そういう木材を使ったから!北海道産のカバノキだよ!すごい光るよ!一般には出回らない銘木だよ!ちょっと自慢!

 

ただ、カバノキは含有油分が多いので…彫刻した後しばらくはベタベタしちゃったけどね。

 

木簡のサイズは、

幅1.6cm×長さ22cm×厚み0.3 これを16枚繋いだもの。

所要時間は…結構長かった。木簡本体を作るのは2時間くらいだったけど、なんせ彫刻に苦労したので…トータルで12時間くらいかかってるかもしれない。でもその分、とても良い仕上がりになりました!

 

というか、木簡これ自体がとても触り心地が良いので…いつかちゃんとした木簡を作って手元に置いておきたいと思ってる。

 

トラベラーズノートに木簡を合わせる

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出来上がった木簡をトラベラーズノートにかぶせてみる。

…控えめに言って最高じゃないかこれ!?

ここまでしっくりくるとは思わなかった!分厚くなりすぎるかな、と思ったけど、むしろこの厚さがいい!木簡っぽい!わーすごい!これだよこれ!

あとは木簡をトラベラーズノートに括りつけるだけだ!

ヴァイキング精神で!テキトーに!

やるぞ!

 

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しかしトラベラーズノートを木簡に合わせるにあたって、ネックになるのがこのパーツ。

これはトラベラーズノートの上下の識別に大切なパーツなんだけど、今回はこれが邪魔になってしまう。

というわけで、さっそく切除。

どうしても後から欲しくなったら、このパーツだけでも買えるからね!

雑に扱ってもよいのがトラベラーズノートであるので、大丈夫だ!

 

切った後に気が付いたんだけど、実はこのパーツ、リフィルを安定させる役割を持っていたらしい。このパーツがないと、ノートの背の革がくたっとなってしまう。

んー。

何かで代用ができないかな。ノートの背でなく、内側から支えるような…。穴の開いた木片とか?

作ろうか?

と思った時。

目に留まったのはノールビンドニングの針!

 

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これでいける!

なんか…よくない!?

ノールビンドニングがこのノートの背骨を支えている感じが!

 

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あとはゴムと糸と力技で各パーツをくっつけていく!

 

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雑だが!

 

むしろ雑でもわかりやすく作ることで、のちのメンテナンス性が上がる気がする。

接着剤や特殊な工具は使わず、ひたすら糸で縛る。

木簡である以上は必ずいつか破損するので、そのときに簡単に修理できるようにしたい。

 

そして出来上がった!

 

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悠久の時を旅するトラベラーズノートが…!

 

少年の頃の夢が叶った…!

感無量だね…!

しかもこれ、持った感じがすごくいい!抱いて寝たいくらいだね…!

木で作られた木簡だけど、机にポンと置くときに「ガチャ!」という音はしない。

木簡を繋いでいる紐と、巻いた革ひもによって木の部分は直接机に触れないのだ。

木と革とカバノキの油の香りがする。

長かった手帳難民の終着点がここに現れた感じだ。

しかもこれ、分厚いのでそのまま立てておくことも可能。

無駄に立てておくことで圧倒的なドヤ顔力も備えているというわけだ…!

 

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木簡部分がめちゃくちゃしっかりしているので、机に広げたときも違和感がない。

 

孔丘先生はこの易経の書かれた木簡を、3度紐が擦り切れるまで熟読したらしい。

韋編三絶、俺もそのくらいまでこのノートを使っていきたいと思う!

アメリカは自由なキャンバスである、という幻想が燃えている。 バンクシーの新作を観る。

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www3.nhk.or.jp

バンクシーの絵が燃えている。

単純に旗が燃えている絵ということでもあるし、「今までのバンクシーとは違う」と感じた人たちが拒否反応を示しているということでもあるし、おそらくバンクシー自身の心も大きく燃え上がっている。

そういうわけで、前の絵と同様に、今回のバンクシーの絵の解釈も試みていきたい!

 

前回の絵の解釈はこちら!

yajul.hatenablog.com

 「ゲームチェンジャー」の絵を解釈してみたことで、すっかり「絵画の解釈」が楽しくなってしまった。

新たな視点を授けてくれたバンクシーに感謝!

しかし、解釈するということは「己の心の中に強固な固定観念を醸成する」ということに他ならないので、高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変に多角的な解釈を取り入れる心の準備体操は怠ってはいけないな、とも思う。

 

今回のこのバンクシーの絵については、従来の「一歩引いた視点からの風刺」を思わせる作風から、一歩踏み込んだ形の作品になっていると感じる。それは単純に「絵の物理的な暗さ」からくるものかもしれない。

いずれにせよ、バンクシー自身がこの絵に添えて発しているメッセージ

「最初は、この問題について黒人の人々の声に耳を傾けようと思った」

「しかし、これは彼らの問題じゃない。自分の問題なんだ」

と書いているように(全文は彼のインスタで読んでくれ!)、これまでとは異なる姿勢でこの問題に立ち向かわねばならない、と決意していることからも、「バンクシーが変わった」と感じるのは普遍的な感想だと思う。

そしてその変化が、人によってはガッカリするポイントだったりする。

あるいは、「旗を燃やす」ということそのものに強烈な反感を抱く人もいる。

この絵はテーマも描き方も穏やかならぬものだ。当然反応は激しいだろうと思う。

 

とはいえ、臆することはない。

自由に楽しくこの絵を鑑賞していきたいと思う!

さぁやるぞ!

 

目に飛び込んでくる要素

この絵を見て、まず目に飛び込んでくる要素、そして思いついたことを列挙してみよう。

  • 燃えるアメリカの国旗
  • 国旗は鋲で壁に直接貼り付けられている まるで磔刑のようだ
  • 壁は塗りつぶされている 何を塗りつぶした?
  • もともとの壁の色は白か?黒か?
  • 白く塗り潰そうとしたが、失敗したようにも見える
  • 星条旗の星がTwitterのアイコン的なものに見える
  • 人物の写真 黒い影 目が吊り上がっている
  • この人物は黒人なのか?それとも黒幕という意味なのか?
  • 写真の前には燃え尽きたキャンドルが複数
  • 左の花は写真の奥に置かれている 死者を悼むなら写真の前では?
  • 右の花は百合だろうか?純真、無垢という意味か
  • しかし百合はフランス王家の紋章でもあり、傲慢や高慢、身分制度、革命による打破という暗示もありそうだ
  • 大きなろうそくが星条旗を燃やしている 燃やしたのか?偶然により燃え上がったのか?
  • 溶けた蝋がひとすじ、百合の花に向かっている
  • 星条旗は裏返されている? 普通に飾るとしたら、星のある部分が右に来るはずだ
  • 壁を塗ったと思しき白い塗料の飛沫が、写真にもすこしかかっている
  • 写真の前に置いてある俵型の物体はいったい何だろう?

 

じっくりと見て、以上のようなものが思い浮かんだ。

これらの要素から…俺の解釈を構築していきたいと思う!

 

もちろん、これらは「俺が見出した要素」なので、実際のバンクシーの想いは汲み取りようもないし、他の人に「これが正しい!」ということはできない。

そこを念頭に置いていただいた上で、それぞれ自身の解釈を見出してほしい!

 

覆いきれなかったアメリカというシステム

上記のような要素を総合して、自分の解釈を考えるに…

多層の文化や階層を内包したアメリカというシステムが通用しなくなったという意味ではないかな、と思う。

壁にアートを描く、というのはストリート文化であり、黒人的な文化(バスキアのような)であり、またバンクシー的でもある。

この壁には、何かしらのアートか、主張か、あるいは汚点があって、それを何とかして塗りつぶそうとしたように見える。

しかも、その塗りつぶし方がとても雑だ。

 

「写真に、壁を塗った塗料のしぶきがかかっている」点に着目した場合、各要素の順番を考えなくてはいけなくなる。

最初に、塗りつぶされていない壁があった。

次に、写真が置かれた。

そのあと、壁が塗りつぶされた。

最後に、星条旗が貼り付けられた。

そして、その星条旗が今燃えている。

こういう順番になるはずだ。

 

となれば、この写真の人物は、遺影なのだろうか?

 

壁に何か、塗りつぶしたい不都合なことが描かれていたとする。

そこにこの写真が置かれる。

白い塗料が乱雑に塗られる。写真にかかるのも気にしない。

その上に、これまた乱雑に星条旗が貼り付けられる。

とにかく体裁だけを整えたような、とても雑におこなわれた形跡が見える。

写真の人物が黒人であれ、黒幕であれ、無関心という悪意の表出であれ、KKK的な差別主義者であれ、乱雑に糊塗された有様は間違いなく描かれている。

 

「多層的な文化こそがアメリカである」というパッケージ化の失敗が見えているような気がしてならない。

もちろんこれは「アメリカはひどい、ダメだ」と短絡的に言えるものではなくて、良い面も多分にあったはずなんだけど、それでも、これまで雑に扱ってきた部分や、糊塗しなければならなかった部分が、表出し始めているということではないか。

 

アメリカ」というパッケージで覆えるほど、壁は小さくなかった

アメリカの良い面では覆い隠しきれなかった問題があった、と言うこともできるかもしれない。

壁一面にあった「何か」を覆いつくせるほどの大きさは、国旗にはなかった。

そして、今、「死者を悼む行為」から偶然あるいは必然として火が点いたということにように思う。

俺はこの絵を「国旗を燃やした」とは思わない。

放置しておけばいつか必ず燃え移るものに、今回、ついに火が点いた。

そう解釈している。

写真の前に火が消えた複数のキャンドルがある。

これは今までに立ち消えてしまった運動のことのように思う。今までも同様の事件があった。しかしそれは大きな問題にはなってこなかった。それぞれのキャンドルは、一度きりで燃え尽きてしまった。

だが今回は大きく燃え広がろうとしている。

星条旗が覆い隠せないほどの壁があったこと、そしてそれは塗りつぶされてしまっていたことが、暴かれようとしている。

星条旗が燃え尽きた後(運動が広がり切った後)、壁がどのように塗りつぶされていたのか、それを直視して愕然とするかもしれない。

 

今、日本では「黒人であるとはどういうことか」が知られつつある。

そのすべてが正しいということではないかもしれないが、少なくとも今まで知られなかったことが表出している。

映画の中の黒人は「ワル」と「クリーン」に過剰に二分化しているようにも見受けられる。その理由が徐々にわかってきている。

確実に、見えなかったものは見えてきている。

 

大道廃れて仁義あり

2500年前の老子の言葉に「大道廃れて仁義あり」という物がある。

これは、「仁義というものが重視されるということは、裏を返せばその社会には仁義がないと言っているのだ」というような意味だ。

この言葉は真理のひとつだ。

例えば、「空気を吸おう!息をしよう!」という標語はない。みんな当然息をして空気を吸い込んでいるからだ。

 

つまり、表面上うまくいっているように見えることそのものが、実は大いなる欠落の証明になってしまっているということだ。

しかも多くの人はその欠落に気づかない。

それこそが大きな問題だ。

良さげな標語、良さげな現状、良さげな目標を掲げたことで満足してしまって、実は大きな問題があることが覆い隠されてしまう。

 

「仁義を大切にしよう」という標語は、多くの人が賛同するだろう。

そこで「それって仁義がないことと同義じゃないか」と批判しても、「なんだこいつ」としか思われない。「良い目標に向かっているんだから水を差すな」と一蹴されてしまう。

大切なのは実際に行動することなのだが、標語や旗に惑わされて実像を見るのが難しくなってしまう。

 

このバンクシーの絵を見て、アメリカの現状を見て、今自分の周りを見て、俺自身を見て、そして老子のこの言葉を見たとき、何か一致するものを感じ取った。

それを全部言葉にするのは難しいけれども、この絵を見るとそれがおぼろげにつかめるような気がしてくる。

 

勇ましく記事を書き始めたけれども、どんどん混迷に入ってきてしまったので、いったんここで書き終わることにするけれども…。

 

大道廃れて仁義あり、という東洋の奥義が、この絵につながっているような気がする。

この、妙な感覚の推移を味わえたことを、この絵の解釈の醍醐味としたい。

 

なにか、静かな気持ちになってきたな…。

パイロットの万年筆・カスタムシリーズのキャップを分解する

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果たしてどれほどの需要があるかは不明だけれど、いつか誰かの役に立つかもしれないと思い、パイロット(Pilot)社の万年筆、カスタムシリーズのキャップの分解方法を書き残していこう。

 

今回はカスタムヘリテイジ912を例に使ったが、他の74とか823も同様の構造をしているらしい。

 

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キャップを分解するには、まずキャップの中に入っている内蓋、インナーキャップを取らなければならない。

インナーキャップはキャップの中にただ入っているだけだから(固定されていない)、強引に引き抜くことが可能。

まず、引き抜きたい万年筆の首軸よりも細い棒、あるいはペンを用意する。

それにテープをぐるぐる巻いて、首軸よりほんの少し細いくらいにする。

テープはなんでもOK。セロハンテープでもいい。

今回はマステを使用。

 

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ぐっと突っ込む。

突っ込んだら、グイっとねじりながら、インナーキャップを引き抜く。

 

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上手くいくと、このようにインナーキャップがくっついてくる。

インナーキャップは柔らかい素材でできているので、そうそう割れない。

とはいえこれは自己責任になってしまうので、絶対大丈夫というわけではないけれど。

テープを巻きすぎると上手くいかない。

国産万年筆が乾きにくいのはこのインナーキャップがキャップの中で首軸にぴったり合うから。中華万年筆だと精度が甘かったり、そもそもインナーキャップが無かったりする。

 

 

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インナーキャップを抜くと、キャップの中はこのようになっている。

中の金具が見えるだろうか?円形を平行に削った形をしている。

 

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そこに、ピンセットを突っ込み、金具をはさむ。

今回は眉毛を整えるための毛抜きを使用。

先が尖っているものより、マイナスドライバーのようになっている方が力をこめやすい。

ちなみに写真ではクリップが歪んでしまっているように見えるが、これは外し終わった後に写真を撮ったので、クリップが外れているため。

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ピンセットをしっかりと保持しながら、クリップの上の部分をねじって外すのだが、これがなかなか力が必要。

素手では太刀打ちできないので、革の切れ端や、ゴム板などを用意するといい。

ピンセット側とキャップトップ側に一つずつあると案外あっさり回せる。

 

以上!

構造がわかってしまえば簡単に分解できるので、パイロット特有の雨だれクリップをヘリテイジ系列のに代えたいとか、蒔絵シールをクリップの裏側にかかるように貼りたいという場合に便利。

 

ただもちろん自己責任になってしまうし、分解すると保証は受けられなくなるはずなので、そこは慎重に。

決して安くない万年筆なので、大事に扱っていこう。

 

 

素材のパワー99%のホッケの味噌煮で数億年前の恋人に思いをはせる

 

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先日…在宅待機する俺に、突如として木工の師匠から連絡が入った。

 

「yajulくん、ウドはどうだい」

「UDO!いいですね!あの苦みは…人類を救う救世主となるものですね…!」

「じゃ、持っていくから」

「マジですか!?」

 

そういうわけで、巨大なウドが15本以上…うちに届いた。

やり過ぎだろ師匠…。独り身の男の元にこんなにウドを…。

 

しかしもらったからには食べるしかない。というかむしろ俺はウドが好きだ。

師匠がウドを置いて去ったその時から、俺とウドとの戦いが始まった。

 

ウドの葉の天ぷら、皮のきんぴら、酢味噌あえ…

あらゆるウドスタンダードな料理を作ってもまだウドはそこに大木のごとく鎮座している。

このままではまずい。

ウドの葉の刻々と萎れていく様が俺を焦らせる。

これはどうする、どうすればいい…?

そんな俺の脳の中で、マリーがささやく。

 

「ぶっちゃけ余しても仕方ないし、あらゆるものにウドをぶち込んでみるしかないんじゃないの?」

 

やたら逞しいマリーの助言に従い、ここ数日の食事はウドにまみれている。

 

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ウドピザとか。

あとは味噌汁、麻婆豆腐、果ては刻んで納豆に加え、親子丼に忍ばせ、刻むのも面倒になってきたのでミキサーで砕いて料理にとりあえず入れ…

 

ついにウドを残り2本分まで減らすことに成功した。

…まぁそんなに焦って食べなくてもよかったけど。

あ、一応この上記のピザのレシピも載せておくね。

 ・小麦粉を適当に練れ

 ・練ったら適当に円形に広げろ

 ・片面にオリーブオイルを塗れ

 ・塗った面にアルミホイルをかぶせ、ひっくり返せ

 ・トマトソースを適当に塗れ

 ・チーズをばらまけ

 ・UDOッ!入れずにいられないッ!

 ・調味料としてベーコンを散らせ

 ・思うままにハーブをかけろ

 ・オーブンの予熱とか面倒だし、いきなりオーブンに入れて30分くらいやればいいよ!

という、世の料理研究家さんに申し訳ないような感じで作っていた。

しかしこれは手軽でいいよ!

 

なんかすまん!

 

そうしてウドとの戦いに光明が見え始めたところ…

 

再び師匠からの電話が入る。

 

「yajulくん、魚は?」

SAKANA!いいですね!魚のDHAが我々のDNAを強烈にブーストしてくれるというものですよ…!」

「じゃ、持っていくから」

「マジですか!?」

 

そうして到着した魚。

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これはホッケ!

…と、後、何だろう、一番下の。

わ、わからない!師匠もわからない!

とりあえず、ホッケを5尾、謎の魚を2尾、いただいた。

師匠の知り合いの漁師さんが今朝持ってきたということで、モノは確かだ。

 

しかもこの目!

完全にカメラ目線!

「あ?お前にやれんのか?」

みたいなオーラが出ている!

まな板に載せられてまでこの不敵な態度!許せん!

 

そういうわけで、このホッケを味噌煮にすることにした。

というのも、以前すごい渋い漁師さんが「ホッケは…味噌煮にするという手もある…」とハードボイルドに聞かせてくれたのを思い出したからだ。

すなわちそのホッケのハード味噌ボイルドというのは…

 ・ホッケ・・・2尾

 ・酒・・・大量に入れろ 

 ・水・・・酒より少ないくらいだな

 ・味噌・・・大さじ2くらい

 ・砂糖・・・適当にやれ

 ・生姜・・・思うままに入れろ

 ・みりん・・・適当だな

という、全く何も参考にならないヴァイキング的な単なる男料理だが、このレシピを何とか解読して今回作ってみた。

 

 ・ホッケ・・・2尾

 ・酒・・・200ml

 ・水・・・200ml

 ・味噌・・・大さじ2

 ・みりん・・・大さじ2

 ・生姜・・・薄くスライスしたものを5枚くらい

 ・UDO・・・とりあえずぶち込めばいいのよ!

 

…うん、たぶん、レシピサイトとかのほうがおいしいレシピ載ってると思う…。

でも、お酒をたくさん入れるというのは特徴かもしれないね!

 

そういわけで、準備はできた。

やるしかないようだな…!

 

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魚をさばく。

BGMはもちろん、谷山浩子SAKANA-GIRLである。

www.nicovideo.jpこの動画の20:40からがSAKANA-GIRLだ!

魚を調理するとき、脳の中は完全に谷山浩子である。危険な曲なので心してくれ。

名古屋は魔境。

 

ちなみになぜこのニコニコの動画を紹介したかというと…

この動画は、谷山浩子さん公認…とまではいかないけど、黙認よりはちょっと好意的な「楽しい遊び場」の動画なので、ぜひ他の曲も聴いてみてほしい。

その辺の話についてはこちらの記事を参照してくれ!

nlab.itmedia.co.jp

大幅に話は脱線したが!

…いやむしろSAKANA-GIRLがこの記事の本題だったんじゃないか!?

そう思うほどに俺の脳内はSAKANAだ。

 

気を取り直して、SAKANAに向き合おう。

 

俺は実はSAKANAをさばいた経験がほとんどないので…大変粗雑な仕上がりだが、ワタは抜くことができた。

1尾目はつぶらな瞳が俺の罪悪感を刺激したが、

2,3,4尾と進むにつれて完全にSAKANA-GIRLテンションに。もう大丈夫だ。

数億年前の恋人を手にかける背徳の快楽に身を任せ、SAKANAを捌いて…いや、裁いていく!

浮気ダメ!絶対!

そう、たとえ数億年の時が二人を隔てようともな…!

 

恋人は裁いた。

あとはもう、煮付けるだけだ。これはもはや何の語ることもない。

 

SAKANAをお湯にくぐらし、ヌメりをとって…

 

などと言う面倒なことはしないッ!

すまんな!

 

酒とみりんとお水と生姜、これをひと煮立ちさせ、SAKANAを投入していく。

味噌を加え、UDOをぶち込んで落し蓋をし、適度な沸騰状態を維持してかつての恋人に思いをはせながら谷山浩子を聞いて20分ほど待つ。

 

するとどうだろう。

そこには電撃的に出来上がったSAKANAの味噌煮が出現している。

20分ほどたっているはずだが、谷山浩子の魔力により体感時間は57秒にまで短縮される。これはライフハック…いや、ソウルハックである。

 

そういうわけで、味噌煮は出来上がった。

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あとは何も言うことはない…。

ホッケの旨さをウドの苦みが引き立てる、控えめに言って最強の煮物ができあがった!

 

これは…なまらうまい…!

 

ホッケと言えば開きだけれども、開くほどに実力のない俺のような人にも簡単に作ることができるホッケの味噌煮、おすすめしたい!

 

SAKANA-GIRLも、おすすめしたい!

バンクシーの絵は、「スーパーマン」を描いた絵である(と、自分の中で決着がついた)

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バンクシーが新型コロナウィルスと戦う医療従事者への応援メッセージとともに、病院に寄贈した「ゲームチェンジャー」と題されたこちらの絵が話題になっている。

 

www.bbc.com

アーティストが、奮闘する「ヒーロー」に作品を贈る…というのは特に不思議なことはない熱い話だけれども、ことバンクシーの場合、「何やら意味深長なモノが隠されているのでは…?」と身構えてしまう。

実際、あちこちで「この絵をどう解釈するか」と盛り上がっている。

主流な解釈としては、

「素直に医療従事者をヒーローと称えた絵だ」というものと、

「ゴミ箱にうち捨てられたヒーローたちと同じように、おもちゃとして祭り上げている大衆の姿だ」というものの二通りになるだろうか。

 

まぁ、実際、この子供の顔は渋すぎるからな…!

見ようによってはニタニタと笑っているようにも見えなくもない。

風刺的な絵を描いてきたバンクシーだし、「これを病院に飾っても大丈夫なものなのか…?」と思うのも自然な反応だろう。

 

しかし、ストレートな風刺画をいきなり病院に送りつけるとか、それは単なる普通の嫌な奴ではないのか?という疑問も起こる。風刺というのは皮肉を直接投げつけることとイコールではないはずだ。

もしかすると、もっとさらに裏の意味があるのではないか…?

 

そういうわけで、俺もこの絵を深読みしてみようと思う。

時流に乗って!

解釈は楽しんだもの勝ちだ!

よし、やるぞ!

 

描かれているもの、描かれていないもの

さて、もう一度絵を見よう。

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子供の顔が渋すぎる…。

しかし渋すぎる子供の顔にくぎ付けになっていてはいけない。俺は解釈をするのだ。

…しかし、渋いな…。

 

で、渋い顔から眼を離すと目に入ってくるのは、やはり「ヒーロー」だろうか。

子供が手に取っている、新時代のヒーローたるナースさん。

そして対照的に、うち捨てられたバットマンスパイダーマン

旧時代のヒーローはもういらない、これからはナースさんだ!

という気がしてくる。

 

だが待て!

ここで非常に重要な疑問が沸き起こる。

この疑問に決着を付けなければ、この絵の解釈はその第一歩も進まないんじゃあないのか…?

 

そう…

この絵には…描かれるべきなのに描かれていないモノがあるッ!

 

それはスーパーマンだ。

 

ここには絶対にスーパーマンが描かれていなければならない。

なぜなら、バットマンスパイダーマンがいるのにスーパーマンがいないのはおかしい」から!

 

そんな下らん理由かよ!と思われるかもしれないが…。

俺は本気だ!

 

例えば、「一般的に、漫画界のレジェンドと言えば?」と聞かれて「藤子不二雄横山光輝鳥山明」と答えたとしよう。当然突っ込みが入るはずだ。

「いや、とりあえず手塚治虫を挙げようよ!」と。

無論、「いや、赤塚不二夫だ」とか「永井豪が入ってないとか…」「水木しげる最強説」とか、様々な意見は噴出するだろうけれども、まずは手塚治虫は入れないとおかしい話だ。手塚治虫を個人的に認める認めないではなく、一般的に手塚治虫はレジェンドであるから。

 

その意味で、ここにスーパーマンが描かれていないのはおかしいのである。

とてもアンバランスで、見る者に疑問を持たせる。

「どうしてスーパーマンが描かれていないのか?」

 

しかし大丈夫だ。

きちんとスーパーマンは描かれている。

まぁ説明するのも野暮だけれども。

ナースさんは明らかにスーパーマンとして描かれているからだ。

空を飛ぶ、マントをなびかせている、そして胸に赤いシンボルマーク。

これは紛れもなくスーパーマンの意匠だ。

 

なにより、この絵で唯一色が使われているのが、赤いシンボルマーク。

 

つまり、この絵は、「スーパーマンを描いた絵」と俺は解釈することにする

 

スーパーマンは「スーパーマン」である(指をチョキチョキ

さて、この絵を「スーパーマンの絵」としたからには、スーパーマンについて考えなければならない。

スーパーマンは言うまでもなく世界最初のスーパーヒーローであり、「スーパー」に「スーパーマン的な」という意味を与えたキャラクターであり、古今様々な創作キャラクターの元ネタにもなっている偉大な人物だ。

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(敵に回すとむっちゃくちゃ怖い…)

 

スーパーマンをスーパーマンたらしめている要素は何だろう?

・力が強い

・眼からビームを放つ

・エアコンの原理で凍り付く息も吐くぞ

・超強い肉体を持つぞ

・空も飛ぶぞ

・気合いを入れれば時間を戻すこともやぶさかではない

・超優しい

・優しすぎてバットマンを親友にできてしまうくらいだ

・異星人だぞ

・実は魔法に弱いぞ

・「顔隠してないから、変装しても即ばれない?」と思う人もいるけど、あれは周囲に催眠波を放ってるからばれないんだ

というのが挙げられるだろうか…。

…だいぶ関係ない設定も書いてしまったけれども…。

強く、正しく、非の打ちどころがない正義の人、というのが一般的なイメージだろうか。

 

しかし。

しかしである。

スーパーマンというキャラクターが内包する物は、それだけではない。

 

スーパーマンの物語は、常に「ヒーロー不要論」と共にあると言っても過言ではないのだ。

 

困ってもスーパーマンが何とかしてくれる。

そしてあまつさえ、助けが間に合わなかったときにスーパーマンに文句を言う。

むしろ助けられても文句を言う。

「あれもこれもスーパーマンが解決しなかったせい」にされてしまう。

スーパーマンが敵を倒す際の周辺への影響が問題になる。

お高くとまりやがって、という意見も出てくる。

スーパーマンがいるから、大衆はスーパーマンに頼りっきりで自分たちの問題を直視しない。

そしてついに、「スーパーマン不要論」が登場するわけである。

この不要論が恋人のロイス・レーンから出てきたりするのだからたまったものではない。

 

スーパーマンの物語はたくさんあるので、全ての物語がスーパーマン不要論に収束するということではないが、形を変えて幾度も「スーパーマン是か非か?」が描かれてきている。

ある時はスーパーマンの死という形で、

ある時は親友バットマンとの直接対決を通じて、

ある時は「スーパーマンスターリンの息子になったら」というifを通じて。

 

「強大な力を持った存在は、いつの日か軋轢を生む」というアメコミスタンダードは、その元祖であるスーパーマンから始まった物語なのである。もはやアメコミヒーローの根本とも言える。

 

ゆえに、「スーパーマン」とは、彼個人のことを指すだけでなく、スーパーマンの存在が起こす数々の問題提起をも内包しているといえるだろう。

指をこう、チョキチョキして「スーパーマン」って言ってる感じを思い浮かべてほしい!…伝わるだろうか…。

 

少年が渋い顔をしている理由は?

これを読んでいる人の中には、脳の中がスーパーマンモードになっている人もいるかもしれないので、バンクシーの絵をもう一度貼っておこう!

 

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だが…俺には見える…!

少年の手に握られた…屈強なタフガイの姿が!

 

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完全にこう見えている…!

というか、右手を挙げて空を飛ぶ、のもスーパーマンの特徴だね。

まさにこのナースさんも同じ格好をしている。

 

さて、次はバンクシーの絵の最大の問題点というべき、「なぜ子供は渋い顔をしているのか?」に視点を移していく。

絵を鑑賞するということは、エキサイティングだな!

 

先述のように、スーパーマンはただスーパーマンではない。

「スーパーマン」である。

スーパーマン個人だけではなく、その周辺の様々な問題を内包した、概念としての「スーパーマン」。

この少年が持っているのが、「スーパーマン」だと想定したら、何が見えてくるだろう。

 

スーパーマン個人を見て渋い顔をしているなら、確かにこの絵は皮肉な風刺画になるかもしれない。

しかし、俺はこの絵を「スーパーマン」の絵として見ることに決めたのだ。

ならば、この少年はなぜ渋い顔をしているのか。それを決めなくてはならない。

 

それは、ヒーローが注目されることに付随する様々な問題に対して向けられている渋い顔なのではないだろうか。

ヒーローに祭り上げること

祭り上げることで生まれるいろんな摩擦

ヒーローとされる人たち、その一人一人の顔を見えなくさせること

あるいはこうして俺のような輩があーだこーだと語ることそのもの

それら、「ヒーロー」というものに対するすべてに渋い顔をしているのではないか。

 

そして、カゴにぶちこまれているバットマンスパイダーマン

彼らは働いて働いて働きづめたその末に、壊れて動けなくなってしまったのではないか。

彼らが入っているのはカゴである。ゴミ箱ではないかもしれない。

もしかすると、これから修理されるのを待っているのかもしれない。

彼らが壊れてしまったから、最後の切り札としてナースさん(スーパーマン)が登場したのかもしれない。

 

そういう視点で見ると、少年は渋い顔というよりも、悲しんでいるようにも見えてくる。

ここまで来てしまったか…という憂いを秘めている表情にも見えてくる。

 

では、「ゲームチェンジャー」とは?

この絵の題名は「ゲームチェンジャー」だ。

では、これは誰のことだろう?

少年だろうか?

ナースさんだろうか?

壊れてしまったヒーローたちだろうか?

それぞれにそれぞれのゲームチェンジャー要素がありそうだ。

要素すべてがゲームチェンジャーなのかもしれない。

 

しかし、ただ一つ確実に言えることがある。

 

この絵を見ている人間は…

「ゲームチェンジャーってだれなんだろうな?」

と悩むことは許されないということだ。

 

なぜなら、どうあがいても、何をどうしても、

「お前だよ」

にしかならないから!

「この絵を見ている、あなたがゲームチェンジャーなんですよ」

というところにしか、たどり着かない!

だって、この少年も、このナースさんも、バットマンも、スパイダーマンも、スーパーマンさえも、絵のこっち側にいる人には何もできない!

変えうるのは、この絵を見た人だけ。

私、それと、あなた。それとあなた。あなたも。その隣のあなたも。

 

そういう場所にしか着地できない絵だと思うんだよ!

 

「えらく陳腐な場所に着地したやんけ」と思われるかもしれないけれども!

いやー、でもね!

「スーパーマンが描かれてないのはどう考えてもおかしいんだが!?」

というしょうもない疑問からこの絵を見始めて、いろいろ考えてから「ゲームチェンジャーはお前だ」に到達するというのは、相当な内的破壊力がある。

表層的なお説教よりも、「自分でそこに着地してしまった」時のほうが圧倒的に衝撃はデカい。

 

これは…すごい絵だ!

ものすごい絵だな!

 

いやぁ、これが!芸術を!鑑賞するという感動なのかもしれん!

深く熱いものがこみあげてくるな…!

 

 

というわけで。

バンクシーの真意は全くもってわからないし、

俺のこの解釈が正しいとは思わない。

万人向けだとも、他者を説得できうるものだとも思わないが…

ただ一人、俺は納得した!

 

いろんな人のいろんな解釈の中にまぎれて、俺の解釈を、ここにひっそりと書き残しておこうと思う。

ちょっと万年筆の話を。 - 万年筆・Moonman M8 のレビューも兼ねて -

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中華万年筆の話をしたい。

そう、中国で作られた万年筆のこと。

でもの前に、いくつか万年筆について話をしようと思う!

 

万年筆と言うと、どういうイメージがあるだろう。

高級だとか、面倒とか…。むしろそんなにイメージがわかないという人のほうが多いかもしれない。基本、万年筆なんて趣味以外で出番はないものだし。

万年筆というのは単純に言えば「ボールペン登場以前に主流だった筆記具」と言うことができると思う。高級というイメージは、とりあえずおいておこう。

ボールペンが実用的になったのは1950年代のことで、しかも当時は筆記具としてボールペンは信頼性が低かった。上手くかけなかったり、品質にばらつきがあったり、敵入れにくかったり。だからボールペンが登場してもしばらくは「ボールペンは公用書類に使っちゃいけません」と言われていた。

ボールペンが認められはじめたのは1965年ごろ。実に10年以上も「ボールペンなんてダメ。万年筆じゃないと」と言われてきたというわけ。

1960年代にアポロ計画があって、そこで「宇宙でも使えるボールペン」が登場したあたりから、ボールペンの信頼性にスポットライトが当たったのかなぁとちょっと思ってる。

だから、まぁ、昔は万年筆は「信頼できる筆記具」の代表だったわけだね。

履歴書とか公用書類とかで、「黒または青のインクで記入」と書いてあるのを見たことがある人は多いと思う。

あれはじつは万年筆を想定して書かれている文言。万年筆のインクは黒とブルーブラックが主流だった。で、このブルーブラックが「青」なんだけど、昔のブルーブラックは時間が経てば黒に変色するという特徴があった。だから公用書類にも使用が認められていたわけ。完全に乾けばそこそこ耐水性もあったし。だから「事務仕事をする=万年筆で書きものをする」ということだった。昭和の昔の「事務員さん」のイメージとして、ワイシャツの上にアームカバーをしているイメージがあったと思う。あれは万年筆を仕事で使っていたからだね。インクがワイシャツの袖についちゃうからね。

 

そういうわけで、「万年筆=信頼できる筆記具=公的書類に使える筆記具」という図式が成立していた。

だから昔は「大学合格/会社入社の記念に万年筆を贈った」というわけだね!大学生や会社員になれば公的書類を書かないといけなくなるので、公的書類を書くために万年筆が必要だった。

もともとは万年筆は実用のための筆記具の域を出なかったんだけど、

万年筆を持つ=公的書類を書く立場になる=一人前の人間になる

と意味がスライドしていって、イニシエーション的な意味が付加されたんだと思ってる。

 

 

だから万年筆それ自体に高級感があるわけじゃなくて、万年筆を取り巻くイメージが一人前感を醸し出していると言えるね。

 

ただまぁ、もうボールペンの信頼性が確たるものになったし、今やボールペンすら飛び越えて、パブリックブロックチェーンに認証システム乗っけるのが一番、みたいな話になっているわけだから、万年筆は完全な趣味のものになっているけれどもね。

 

で、中華万年筆の話に戻ろう。

万年筆はあくまでも実用であって、高級感は後から出てきたものという基本に立ち返れば、中国で万年筆が盛んに生産されるのも全く不思議はない。

むしろ、ボールペンを作るのには技術が必要だから(小さな金属球を同じサイズで作らないといけない)、万年筆のほうが圧倒的に作るのが簡単という話にもなるから。

それに今や中国は世界中の製品を作っているので、欧米の筆記具メーカーの製品を作っているということも普通にあるだろうしね。

そこにさらに中国の…圧倒的ともいえる露骨なパクリ上等精神が上乗せされて、中華万年筆は大変カオスに、そしてちょっと面白いことになっていると個人的には思っている。

 

…パクリのあたりを突っ込んでいくとキリがないんだけどね!

 

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というわけで、中華万年筆の雄・Moonmanが作った万年筆・Moonman M8をレビューしていこうと思う!

Moonmanは割と新興のメーカーなのかな。

Moonmanは上海末匠商貿有限公司のこと。

透明アイドロッパー式のきれいな万年筆、M2が有名だね。

Moonmanはいくつかシリーズがあって、どうやらそれぞれのシリーズで志向しているものが違うみたい。どういう分け方をしているのか、細かくはわからないんだけど…

ちょっとMoonmanの万年筆について、自分が知る限り列挙してみよう。

 

M2:たぶん一番有名な、透明アイドロッパー パクリ疑惑はあまり聞かない

C1:M2の大型版?かっこいい 何かを元にしたんじゃないかという話は聞いたことあるけど失念

C2:M2のバリエーション

T1:ピストン吸入式 デザインはkawecoとTWSBIから影響受けてる?

T2:スプリング機構吸入式 TWSBI GOに影響を受けたと思われる

S1:アクリル樹脂のバランス型万年筆 この類のデザインは各社から出ている フォルムはシャープ

S3:アクリル樹脂のバランス型万年筆 S1より太い helicoの樹脂を真似ている?

N1:手帳用のショート万年筆 すっきりしたデザイン 元になった製品は思い浮かばない

N3:アクリル樹脂? スリム軸 元になったものは思い浮かばない

M300:太めのアクリル軸 オーソドックスなデザイン?

M600S:言い逃れようがないほどにデュオフォールド。どうあがいてもデュオフォールド。これはアウトじゃないかと思うほどにデュオフォールド。

M800:かっこいい!欲しい!とおもったけど、LeonardoのMomento zeroだった。なんてことだ…。

M6:木製軸 元になった製品は思い浮かばない

M8:形はM6と同じ 金箔や銀箔、螺鈿をちりばめて樹脂で固めた軸 Benu Penから影響を受けているといえるかもしれない

 

2020年4月現在において、たぶんM800が最新の製品。

うわぁこれかっこいい、ほしい!と思って調べたらパクリが判明してちょっとがっくりきたけども…。

にしても、もとになったLeonardoのMomento zeroは2019年末に出た製品のはずで、それを数か月でコピーしてラインにのっけるのは何とも、すごいね。

 

T1とT2も新しいはず。少なくとも2019年の製品。

それとM6はちょっと前からあったけど、同型のM8は比較的新しいんじゃないか…と思う。

発売日を調べたわけじゃないから俺の主観だけれどね。

 

で、やっと本題になるけれども…

 

レビューを!

 

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字が汚いのは許してほしい!

MoonmanはM6からペン先が新デザインに変わったみたいだね。

「あ、Monteverdeのパクリっすね!」という感じではあるけれども…。

うん、まぁよ…!

で、こちらのM8。

基本的に付属するのは金色のメッキがされたニブなんだけど、自分が買ったM8は銀箔の軸だったからペン先もそろえようと思って別で注文したシルバーのニブに交換した。

 

ではまず基本情報から。

(長さはおよそ)

キャップ付き長さ:140mm

キャップ無し長さ:124mm

太さ:13mm

キャップの太さ:15mm

重さ:29g

キャップ無し重さ:18g

ニブ:ステンレスニブ サイズは#6 字幅はFだけど国産M相当(0.7mm相当)

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結構な太軸で存在感がすごい。

軸が太いと筆圧やペンを掴む力を抑えられる(と思う)ので、太軸は結構好き。

キャップは2回転で外れる。実用上では3回くるくるくる、と回せば外れるような感じ。金具周りがきれいで、テンション上がるね!

個人的に、キャップや首軸を外すときの音が大事だと思っていて、この音がしょぼいとテンション上がらなくて使うのやめちゃうのだけど、これの音はなかなかいいと思う。

キャップが大きいし重いし軸を傷つけちゃいそうなので、基本的にお尻に付けずに書く形になるかな。

あ、ニオイは気にならないよ!中華万年筆でたまにある、石油系のニオイがツンと来て辛い、ということはないよ。無臭だった。

 

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重心はど真ん中よりもほんの少し前。

 

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コンバーターは付属してる。

なんかAliexpressの商品画面には「コンバーターなし」って書いてあったけど、「いや、中華万年筆でコンバーターなしはないでしょ」と思ったらやはりついてた。なんだったんだろう、あれは。

コンバーターはオーソドックスなんだけど、最近の中華万年筆はインク攪拌用の小さい球や、バネのようなものが入ってるのが通例なので、ちょっと古いタイプと言えるかも。

軸にかなりしっかりと密着するので、インク漏れの心配はなさそう。

 

軸の銀箔はとても綺麗。

金より銀を選んで正解だったかな?これは個人の好みだけどね!

あと螺鈿をちりばめたものもあるんだけど、そちらは売り切れてた。残念。

 

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ただ、よく見ると傷がある。

このペンを買う前に海外レビューをいくつか見ていて、このM8にはしばしば傷や樹脂で埋め切れてない部分があると聞いてたので、それほど落胆はしてなかった。

まぁ、気泡とかね、あるよね。

注意深く爪を立てて確認しないとわからないくらいの傷だし、ぱっと見では探さないとわからないくらいのものだから、気にしない!指でなぞるだけではわからないレベルだ。

3000円だしね!

 

ただ…「3000円だしね!」ではなかなか済まないのが最初についてたニブ。

 

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…写真だと全く伝わらないけれども、肉眼で見て明らかにわかる勢いで、ニブが曲がっていた。画像で言えば上側の部分が、手前に大きく曲がっていた。

なので、書き味は最悪でガリガリギギギと…それはもうひどいものだった。ひー。

並行してもう一つニブ注文しておいてよかったと心底思ったね!

交換ニブは300円程度。

そちらの状態は最高!全くストレスなくスルスルと書くことができる。

 

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ダメな方のニブユニットをばらしてみた。

Moonmanのニブとペン芯は、外すときにまっすぐ引かないと抜けないので注意。ぐりぐりネジっちゃうとペン芯とニブユニット壊れるから注意してね。

 

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写真では金色か銀色かわからないけれども…これは銀色の、良い方のニブ。

絵画的に言えば、金と銀は無彩色だって知ってた?

 

MOON

MAN(F)

と書いてあるけど、たぶんこれ、右下の丸の中に書いてあるのがニブの字幅なんだと思う。

ついつい🄬だと思ってしまった。

 

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今回は箱入りを注文しなかったので(箱はすぐ捨てちゃうから)、こちらの素朴なフェルトのペンケースに入って送られてきた。この上に十重二十重に梱包シートにくるまれていたよ。

特に汚れていたりすることなく、無事に届きました。

 

…しいて言えば、ニブが曲がってたのがわーーって感じだけど、それを見越してスペアを買っておいたのが奏功したみたい。

曲がってるやつは何かしら改造でもしてみようかな!

 

とにかく!

中華万年筆としては珍しい、オリジナルな(要素の比重が高い)万年筆を手に入れることができて、うれしいね!

いろいろ使っていきたいと思う!

 

もしこのM8について聞きたいことがあったりしたら、Twitterのほうからお気軽にどうぞー。

(こちらのコメントはあまり見ない可能性があるし、Twitterならすぐ画像送れるので!)

 

 

 

 

集中できない人の生きる技術としてのバレットジャーナル

バレットジャーナル。

魅惑の響き。

我々はいつも「これがうまくいけば、全てがうまくいく」という幻想の中に生きています。

あと3kg痩せれば、転職すれば、瞑想すれば、壺を買えば、パワーストーンの力を借りれば、眉毛があと5mm位置が変われば、プチ整形すれば、勉強すれば、この資格を取れば、あのグループに入れば、この車を買えば、この情報を得れば、英語ができれば、留学すれば、毎日トイレ掃除をすれば、有名大学に合格すれば、大企業に入社すれば、起業すれば、筋トレすれば…

進研ゼミ的な「一つうまくいけば、良い方へ歯車は廻っていく」というファンタジーをなんとなく信じて生きています。

それは決して非難されるべきことではありません。その幻想を生きる力にして人生に立ち向かうのも、また人間の真の姿と言えましょう。

もちろん、やりすぎ信じすぎは良くありませんが、大いなるきっかけとしての有用性は確かです。

 

そこで今回は、「バレットジャーナルをやれば、これまで迷走していた手帳術ジプシーから脱却できるのではないか」という話をしていきましょう。

あるいは、「そう思ってバレットジャーナルについて調べているけれど、これは無理っぽい」と挫折してしまっている私のような人間に、「バレットジャーナルというのはこういう物ではないか?」ということを伝えたいのです。

 

バレットジャーナルはどういう人に向いているのか

バレットジャーナルは、ADHD傾向の人への治療法である。

…というと大げさかもしれません。

しかし少なくとも、バレットジャーナルはADHD傾向のある人が、自分の人生を何とかするために編み出した技術」であることは間違いありません。

ライダー・キャロルという人が、「どうすればADHDである自分をうまく操縦できるだろう」と考えた末に行き着いた技術。

バレットジャーナルを取り入れるとき、困ったことがあったら必ずここに立ち戻るといいでしょう。それこそ、バレットジャーナルの最初のページににこれを書いておいてもいいかもしれませんね。

 

そう、バレットジャーナルは「自分の本当の目標に向き合うための手帳術」では、ないのです。

もちろんそう言った方がキャッチ―なのでそういう宣伝をしているのでしょうが、本質的には「ADHDである自分をどう操縦するか」であり、その結果「目標を達成できた」ということになると思います。

「ダイエットをしたら彼氏ができました」という話を、「彼氏を作るためにはダイエットしないと」と読み替えてしまうとおかしなことになるように、まずバレットジャーナルは自分を操縦するための技術ということを念頭に置きましょう。

 

バレットジャーナルは「注意力、意志力があちこちに散乱してしまう人向け」の手帳術ということができます。

 

具体的には、こういう人に向けたものです。

  • 熱中できる趣味を見つけた!と、短期間ものすごく集中するけど、すぐに別のものに興味が移る人
  • 整理整頓がとにかく苦手な人
  • 毎週決まった時間にテレビやコンテンツを見に行けない人
  • 会社の机周りは整頓されているのに、自分の部屋はぐちゃぐちゃな人
  • 何か月かに一回、一気に徹底的に掃除をする人
  • 手順がきちっと決まっていることは上手くやれるけど、応用が苦手な人
  • 洗濯はするけど、洗濯物を畳んで棚にしまえない人
  • 正しいことを正しい手順でしたいと思っている人
  • 完璧じゃないと提出できなくてレポートの期限を過ぎてしまう人
  • 先延ばし癖がある人

もちろん、これらに当てはまる人がADHD傾向があるとか、注意力がないというわけではありません。

ADHD云々はひとまず忘れて、自分はどういうタイプなのかをまずは考えましょう。該当する人は多いはずです。

 

意外に感じるかもしれませんが、「会社や学校では整理整頓がすごくきっちりしているのに、自宅ではてんでダメ」な人は多いです。

それは何も不思議なことではなく、そういう人は(私もそうです)、「片づけるルールがあれば、難なく行える」のです。職場や学校ではルールが決まっていますから、すんなり適応できますが、自宅ではルール作りから行わないといけないため、ぐちゃぐちゃになります。

同じく、自宅のリビングは綺麗に使うのに、部屋がぐちゃぐちゃというタイプもそうですね。

 

こういった傾向のある人は、例えば市販の優れた手帳を使っても「機能が多すぎて使いきれない」「どうすればいいのか考え込んでしまって一歩も動けない」「使い始めたけど、理想の使い方ができない」となってしまいやすいです。

そしてまた、SNSなどでシェアされる「バレットジャーナル」を見て、尻込みしてしまうというわけです。残念なことに。

 

これらの特徴が多くあてはまる人は、「方向性を定めるのが苦手」といえるでしょう。逆に言えば、方向と手順とビジョンが定まれば、素晴らしい集中力を発揮することができるわけです。

いわば四方八方に光を放射している電球ではなく、鏡を使って光を一方向に揃えてこそ力を発揮するレーザー光のようなタイプです。細く、長く、強力に届く光です。

バレットジャーナルというのは、自分の注意力、集中力を一方向に揃える方法のこと。

まさにバレット(弾丸)のように、ですね。

目標が達成できるというのは、副次的な効果でしかありません。

最大の効果は、自分の集中力を操縦すること。

これを勘違いしてしまうと、「期待したものではなかった」「面倒なだけだった」「意味が分からない」というように、ミスマッチになってしまいます。

ですからまず、「バレットジャーナルは注意力をそろえるための技術である」ことを強く認識しておいてください。

 

バレットジャーナルの罠

「注意力を揃えるのが苦手な人」向けのはずのバレットジャーナルですが、SNSなどでバレットジャーナルを検索すると、目が回るような「作例」が洪水のように脳の中に流れ込んできます。

 

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(恐ろしい光景!)

 

もちろん、頑張ってオシャレな見た目のバレットジャーナルを作るのは全く問題ありません。純粋に素晴らしいことです。

しかし、それらがあまりにも大量に目に入るがゆえに、「こうじゃないとバレットジャーナルではないのではないか」と思ってしまい、本来バレットジャーナルに最適であった人を遠ざけてしまっているのはとても残念なことです。

ですから、一度、それらのSNSは忘れ、基本に立ち戻りましょう。

バレットジャーナルは、私のための技術なのだ、と言い聞かせてください。

そしてやはり、見るべきなのはライダーさんが解説しているこの動画です。


How to Bullet Journal

 

本当にこれだけでいいのです。

落ち着いたライダーさんのテンションのように、静かに淡々とやっていいのです。

ですから、まずはオシャレなバレットジャーナルのことは忘れて、まずは基本をやるのだ、基本以外はやらなくていいのだ、と考えてください。

 

バレットジャーナルのそれぞれの項目の意味

先ほど動画でライダーさんが解説していましたが、私なりの理解を書いていきますね。

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様々な場所で、様々な形で得られる情報を、私たちはメモという形で残します。

しかし私たちは、それらのメモの断片を整理するのが苦手です。

ですから、まずシンプルなルールを決めて、情報を整理しやすくしましょう。

 

必要なものはノートとペンと定規だけです。

これは「選択肢を広げず、一転に集中するため」です。「あれもやっていいよ、これもいいよ、こんなやり方もあるよ」では、私たちは動けなくなってしまいます。

ですから、決めます。

方眼ドットの入ったノートと、書きやすいペンと、定規だけを用意しましょう。

 

まずは、ページ番号を書いていきます。表紙をめくり、最初の白いページを1とします。あとはひたすら書いていきます。案外楽しいものです。

 

書き終わったら、最初の見開きにインデックスページを作ります。インデックスが増えることを予想して、2ページくらいとっておきましょう。

なぜページ番号を書くのか、インデックスページなんか作るのかとお考えでしょう。これは、「どこに何を書いたのか覚えておく必要をなくすため」「書きっぱなしにせず、後から見直せるようにするため」です。

バレットジャーナルは、何度も見直すのが特徴です。いろんなページを前後するのがこの技術です。何度も直すことにより、脳に情報が刻み込まれていくわけです。

未知の英単語を一回で覚えられる人は少ないです。それと同じです。

 

次に、フューチャーログを作ります。

ページを3分割して、1ページにつき3か月分、全部で1年分作ります。

これは、その月の予定を書き入れる場所です。「来月、アレをやらなきゃ」とずっと覚えておくことはできません。だからここに書いて忘れるのです。月初になったらここを見直して、「そういえばアレがあったな」と思い出すのです。

バレットジャーナルを始めたときは、おそらくここに書くことは少ないと思います。

このフューチャーログを書いたページ番号を、インデックスページに書いておきましょう。

 

さて、次からが本番になります。

マンスリーページを作ります。

とはいえ、作るのは簡単です。縦に日付と曜日を入れるだけです。1ページに収まらなければ、次のページにまたがってもかまいません。空いた場所に「今月のタスク」を書きましょう。フューチャーログに書いたことを、ここに書くわけです。

書けたら、それで終わりです。あっさり終わりますね。

修飾したいなら、しましょう。個人的には、一切装飾せずに始めるのが脳の力を無駄にしなくてお勧めです。したくなったらするくらいで構いません。今月は装飾しても、来月はしないかもしれませんし。それでいいのです。

 

次に、少し考えましょう。

コレクションです。

フューチャーログとかマンスリーとかコレクションとか、直感的にわかりにくいものですが…。もっと簡単に言い換えていいもいいですね。予定とか、今月の予定とか。

コレクションというのは、「専用ページ」のことです。そのページには、特定のテーマのものしか書き込みません。

例えば「ダイエット」。

毎日の体重の増減はマンスリーに書けばいいのですが、それ以外のダイエット情報、例えば何を食べるといいとか、「この本のこの文章がためになる」とか。日記の中に埋もれてほしくないものは、全て専用ページを作ります。

数ページにわたって考えごとをしたいときも、sねにょうページ扱いです。

マインドマップもそうです。

そういったコレクション(専用ページ)は、作りたくなるタイミングがあらかじめわかるわけではありません。

ですから、あらかじめこのくらいの分量のページを確保しておく…という風にはできません。

日々の記録の中に突然専用ページが現れることになるのですが、その時にインデックスが役立つわけです。

「ダイエット 12~15、34~35、166~170」みたいにインデックスに書かれることになります。

最初に作りたい専用ページがあれば、ここで作っておきましょう。

特になければ、いよいよデイリーページに移ります。

 

デイリーページも、全く難しくはありません。

今日の日付を書いて、それで準備はおしまいです。

あとは、

  • 今日やること(ToDo)
  • 一行日記
  • 思いついたこと
  • 明日やること
  • 来月やること
  • うれしかったこと
  • ムカついたこと
  • 知り合った人の電話番号

など、その日に思いついたこと、得た情報を箇条書きにしていくだけです。

順番は関係ないです。その時に思ったことを、短く的確に書いていきます。

日記を書きたいときはここに長く書いてもいいでしょう。

どんどん書きます。

そして、一日の終わりに、明日やるタスクは明日(デイリー)に、来週の予定は来月のページ(マンスリー)に、来月の予定はフューチャーに、連絡先アドレスなど専用ページ向きのものは専用ページに、書き写すだけです。

こうやって書き写せば、記憶が定着しやすくなり、忘れにくくなります。

バレットジャーナルはそのための技術なのですから。

このデイリーログを管理する「キー」という考え方がバレットジャーナルの特徴なのですが…個人的にはキーにこだわり過ぎると動けなくなる印象があります。なので、キーを設定するのは慣れてきてからでもいいと思います。「キー」については、他に解説しているサイトがたくさんあるので、そちらを見てくださいね。

デイリーも、これだけです。

とても簡単で、構えることなどないでしょう?

 

 

以上、これだけです。

もし使っていくうえで慣れてきたり、別の機能が欲しくなってきたら、適宜付け加えていくとよいですね。

でもくれぐれも、バレットジャーナルの基本は忘れないで。

むしろバレットジャーナルは、「不要なもの、不要なストレスを削除していく」のが特徴です。手帳に「アドレスラン」があるとそれだけでなんかストレスになる、書かなきゃいけない気がしてしまう、という人向けのものです。

インデックスページが面倒なら、作らなくてもいいです。

フューチャーログはあったほうがいいと思うのですが、いらないと思うなら書かなくてもいいです。

 

来月の予定などはスマホのほうが楽なのは間違いないのですが…

「ツールが増える」ことは混乱の原因になります。

もちろん、並行して使える人は大いに使ってほしいのですが、注意力を収束させるのがとにかく大変な人は、バレットジャーナル一本にした方がストレスは減ります。

繰り返しますが、バレットジャーナルはそのための技術なので。

 

バレットジャーナルは、最低限のルールを提供します。そのルールは自分の注意力を一点に集めるためのものです。複雑なルールにしてはいけません。

最初のうちは、手帳を書くのに失敗することもあるでしょう。でも手帳は誰に見せるものでもないのです。

これはリハビリとも言えましょう。

リハビリ中は、多少みっともなくてもなんてことはありません。その姿を見ているのは、あなた自身と、優しく見守ってくれる訓練士さんだけです。馬鹿にする人はいません。応援する人だけがいるのです。

当然ながらライダーさんは応援してくれるはずです。どんな汚い手帳だって問題ありません。すべては注意力をまとめるためです。そのためなら多少の失敗もなんのそのです。

そしてもちろん、私も応援しています。

同志ですからね!

何を置いても一番重要なのは、注意力を操縦すること、その一点なのですから!

 

 

 

一応、公式本はでているのですが…

「手帳を始めるために勉強が必要」というような意識を植え付けるのは得策ではないので、上記のライダーさんの動画一本で始めたほうがいいと思います。

そのうえで、気になった人が読む、くらいの立ち位置でいいんじゃないかな、と。

5,4,3,2,1エクササイズとか、面白いなと思うこともありましたしね!

バレットジャーナル 人生を変えるノート術

バレットジャーナル 人生を変えるノート術